離婚した親が死んだら連絡はくる?こない場合の対処法と相続手続き

離婚した親が死んだら連絡はくる?こない場合の対処法と相続手続き

両親が離婚している場合、別れた親の顔も名前もわからない、一切連絡をとっていないのでどうしているかわからないという方も珍しくありません。しかし、親同士が離婚しても親子関係はなくならないため、親が亡くなれば子は相続人となります。

もし離婚した親が亡くなったら、知らせが自分に届くのか、相続や手続きで困ることはないのか心配な方もいるでしょう。

本記事では、連絡が来るケースと来ないケースの違い、連絡がなかったときのリスク、具体的な対処法について解説します。最後まで読むことで、離婚した親の相続の際にどのように対応したらよいかが理解できるでしょう。

目次

離婚した親が死んだら連絡はくる?

両親が離婚して長年疎遠になっていた親が亡くなった場合、あなたに必ず連絡が届くとは限りません。法律上、両親が離婚しても親子関係は消滅せず、子は親の相続人となります。

誰が相続人となるかは法律で定められており、長年会っていないことや不仲であることは考慮されず、子であるというだけで相続権をもちます。

しかし、あなたに死亡連絡が届くかどうかは、親の再婚相手や親族など周囲の人の行動次第な部分があり、「必ずくる」とも「絶対こない」とも断言できません。

以下では、連絡がくる可能性が高いケースと連絡がこない可能性が高いケースを紹介します。状況に応じてどのような対応をするべきかを確認しておくと、いざというときに安心です。

連絡がくる可能性が高いケース

離婚した親の死亡連絡があなたに届くかどうかは、親の親族や周囲の人があなたの存在と連絡先を把握しているかにかかっています。ここでは、連絡がくる可能性が高いケースを4つ紹介します。

親の再婚相手や家族が連絡先を知っている場合

親が再婚して新たな家庭をもっていた場合、死亡の連絡をするのは再婚相手や再婚相手との子である場合が多いでしょう。家族があなたの存在や連絡先を知っている場合は、すぐに連絡がくる可能性もあります。

亡くなった親のスマートフォンなどに連絡先が残っていれば、実子と知らなくても亡くなった旨の連絡をするかもしれません。

亡くなった時点ではあなたのことを全く知らなくても、相続手続きの中であなたの存在を知り、手紙などでコンタクトをとる場合もあります。相続の話し合いには相続人全員が参加する必要があるため、どうしても連絡をとる必要があるのです。

あなたの電話番号などがわからなくても、現住所は相続人が亡くなった方の戸籍をたどることで判明します。突然手紙が送られてきても、ほかの相続人に必要以上の不信感を抱くことはありません。

親が入院先などにあなたの連絡先を伝えていた場合

親が生前、病院や介護施設に入っており、緊急連絡先としてあなたの情報を伝えていた場合、病院や施設から直接連絡が入るでしょう。

親にほかに身寄りがない場合は、子であるあなたが遺体の引き取りや葬儀をどうするかの判断を迫られたり、相続手続きを担ったりする可能性があります。

親が作成した遺言書に名前が記されていた場合

親が生前に遺言書を作成しており、その中にあなたの名前が記されていた場合、遺言の内容を実現するためにあなたに連絡が入ることがあります。

特に、遺言書の中で遺言執行者が指定されている場合は、連絡がくる可能性が高いでしょう。遺言執行者とは、遺言書に書かれた内容を実現するために手続きをおこなう人を指し、相続人全員に遺言の内容を通知する義務があるためです。

親戚や共通の知人を通じて知る場合

親族や共通の知人から間接的に親の死亡を知らされることもあります。特に、同じ地域に住んでいる親戚や、以前から付き合いのあった友人を通じて訃報が伝わるケースは珍しくありません。

ただし、風の噂のような不確かな情報として親が亡くなったとを伝え聞いた場合は、戸籍や住民票などで事実確認することが大切です。

連絡がこない可能性が高いケース

離婚した親の死亡連絡がこないのは、そもそも存在が知られていないケースや感情的な理由であえて連絡を避けるケースなどさまざまです。

連絡がこなかったとしても、相続人としての権利や義務は消えません。知らないままでは借金を背負うなどのリスクにつながるため、連絡が来ない可能性を前提に備えることが大切です。

親の再婚相手や家族があなたの存在を知らない場合

親が再婚後に新しい家庭を築いた場合、再婚相手やその家族があなたの存在を知らない可能性があります。前の配偶者との子がいること自体が周囲に認識されていないため、当然ながら連絡がくることはありません。

相続手続きは相続人全員で進めるのが原則のため、手続きの最初の段階で戸籍を確認して相続人を洗い出すのが正しい進め方です。

しかし、再婚相手などが戸籍をきちんと確認せず、あなたの存在に気づかないまま遺産分割を進めてしまう可能性もゼロではありません。

親の親族や関係者があなたの連絡先を知らない場合

親の親族や関係者があなたの連絡先を把握していなければ、訃報を届ける手段がありません。長期間音信不通だった場合には、住所や電話番号が変わっているために連絡したくてもつながらないこともあります。

連絡がつかないからしかたがないと諦めて、不在者財産管理人を立てるなどして、あなた抜きで遺産分割協議を進めている可能性があります。

親の親族が意図的に連絡を避ける場合

家庭内の事情や感情的な対立から、親の親族があえてあなたに連絡をしないケースもあります。もちろん法的には子であるあなたには相続する権利がありますが、親の家族があなたに財産を渡したくないと考えて意図的に廃除する可能性も否定できません。

連絡がこなければ遺産分割協議に参加できず、財産を受け取れないなどの不利益を被る場合があります。

離婚した親の死亡連絡を無視するリスク

離婚した親の死亡連絡を受けたものの「疎遠だから関わりたくない」と放置してしまう人も少なくありません。しかし、生前の親との関係がどうあれ、子である以上は自動的に相続人としての責任を負わされるのです。ここでは、親の死亡連絡を無視するリスクを解説します。

離婚した親の相続は無関係ではいられない

両親が離婚した場合、親同士は他人になれますが、親子の縁は一生続きます。顔も名前も知らないほど関係が希薄でも、子は親の相続人となり、親が亡くなった時点で自動的に権利も義務も全て承継します。

相続は財産がもらえるイメージがあるかもしれませんが、借金などの負債も相続の対象です。死亡連絡を無視することで、知らぬ間に多額の借金を背負うリスクもあるのです。

相続放棄の期限を過ぎて借金を背負うリスク

相続に関わりたくない場合、親の死亡を知ってから3ヵ月以内であれば相続放棄が可能です。他の相続人や連絡をくれた人に「放棄する」と宣言するだけでは相続放棄したことにはならず、家庭裁判所での手続きが必要です。

もし死亡連絡を無視して何も対応しないまま期限を過ぎてしまうと、法律上は相続を承認したものとみなされます。親に借金があれば、漫然と相続することで多額の借金を背負うリスクがあります。死亡の連絡を受けたら財産の内容を調査し、早期に相続放棄するかどうかを検討しましょう。

遺産分割協議に参加できずに遺産がもらえないリスク

遺産の分け方を決める遺産分割協議は、相続人全員が参加する必要があります。しかし、あなたが死亡連絡を無視して協議に参加しなければ、ほかの相続人だけで話し合いが進んでしまうリスクがあります。

法的には相続人全員でおこなわない遺産分割協議は無効ですが、遺産分割を終えて時間が経ってからあなたが権利を主張しても、処分した財産を取り戻すのは困難なのが実情です。

金銭の支払いにより解決を図るとしても、家庭裁判所での調停や裁判が必要なため、あなたにとっても大きな負担となります。死亡の連絡を受けた時点で、相続人としてどのように関わるのかしっかり決めることが大切です。

離婚した親の死亡の連絡が来ない場合の対処法

離婚した親との関係が疎遠であれば、死亡の連絡が来ないまま時間が過ぎてしまう可能性があります。しかし、連絡がこなくても相続人であることは変わらないため、知らぬ間に不利益を被るリスクがあります。ここでは、連絡が来ない場合にあなたがとれる現実的な対処法を整理します。

死亡の事実を確認する

親が亡くなっているかどうかを公的な書類で確認する方法があります。おすすめしたいのは、親の戸籍謄本を取得する方法です。

2024年3月1日から戸籍謄本の広域交付制度が始まり、わざわざ親の本籍地の市区町村に請求する必要がなくなりました。もし親の氏名や現住所がわからなくても、あなた自身の戸籍をたどることで親の情報を得られます。

亡くなっている場合は、戸籍謄本には「除籍」と記され、死亡日時が載っています。ただし、亡くなったのが直近の場合は、戸籍に反映されるまでにタイムラグがあるため注意が必要です。

相続人を確定する

死亡の事実を確認できたら、次に誰が相続人になるのかを調べましょう。親の出生から死亡までの全ての戸籍を集めて、親族関係を確認します。

死亡時点で配偶者がいるのか、あなたのほかに子がいるのかが特に重要なポイントです。再婚相手との間の子、認知している子、養子など、思わぬ相続人が判明することもあります。

転籍や婚姻で本籍地が変わっている場合、戸籍収集は非常に手間がかかります。行政書士などの専門家に依頼するとスムーズに進められるため、自分でおこなうのが難しいと感じたら相談しましょう。

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他の相続人に連絡をとる

疎遠であっても、遺産分割協議には相続人全員の合意が必要です。他の相続人に自分が相続人であることを知らせ、協議の場に参加する意思を示しましょう。

自分以外の相続人の連絡先がわからない場合、戸籍の附表を取得して住所を確認するのが一般的な方法です。戸籍の附表は、戸籍に記載されている人物の住所の異動履歴が記録された公的な書類です。

もちろん誰でも自由に取得できるものではありませんが、共同相続人であることは取得の正当な理由となります。

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相続放棄を検討する

相続に一切かかわりたくない場合や、親に借金がある場合は、相続放棄を早めに検討しましょう。相続放棄は家庭裁判所に申述して初めて効力をもち、口頭で伝えるだけでは無効です。期限は親の死亡を知った日から3ヵ月以内です。

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相続放棄すると借金のリスクを回避できる一方、資産も一切受け取れなくなります。判断に迷う場合には、専門家に財産調査を依頼し、その結果を踏まえて判断するのが適切な対応です。

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もし遺産分割が終わってしまっていたら

自分に連絡がこないまま遺産分割が終わってしまった場合でも、相続人としての権利は残っています。ほかの相続人だけで合意しても、あなたが参加していなければ、遺産分割は無効です。

ただし、実際には財産が処分されてしまっていることも多く、当事者同士の話し合いによる解決は困難です。裁判所の調停や審判となると専門的な対応が必要なため、弁護士に依頼して権利回復を図るのが現実的です。

【ケース別】離婚した親の相続人と相続手続き

離婚した親が再婚している場合や養子縁組している場合は、相続関係がより複雑になります。具体的なケースごとに、相続人の範囲と手続きの流れを正しく理解しておきましょう。

あなたに異母兄弟(異父兄弟)がいる場合

親が再婚していて、新しい配偶者との間に子どもがいる場合、その子も相続人になります。父親や母親が違っても、相続人としての権利は平等です。

たとえば、両親が離婚して、父と再婚相手との間に子がいるとします。再婚相手との間の子とあなたは異母兄弟の関係で、いずれも父の相続人となります。

相続手続きでは相続人全員の同意が必要なため、疎遠であっても協議の場に参加しなければなりません。連絡が取りにくい場合や感情的な対立がある場合は、家庭裁判所の調停に進む方法もあります。

親が再婚相手の連れ子を養子としている場合

親が再婚相手の連れ子と養子縁組をしている場合、養子も実子と同じように相続人になります。養子縁組をしていない場合は、一緒に暮らしていても法律上の親子関係はないため、相続権はありません。

養子縁組をしているかどうかは家族の見かけでは判別できないため、必ず戸籍を確認しましょう。戸籍謄本の収集や、相続人の特定、ほかの相続人との連絡などを専門家に依頼することも可能です。

親に事実婚のパートナーがいる場合

事実婚のパートナーは法律上の相続人ではありません。ただし、遺言書に記載がある場合や、家庭裁判所がパートナーを特別縁故者と認めた場合は、事実婚であってもパートナーに財産がわたる可能性があります。

長年生活をともにしてきたパートナーと相続人との間で、遺品や不動産の処分をめぐってトラブルになるリスクもあるため、早めに専門家に相談することをおすすめします。相続人との間でトラブルが予想される場合は弁護士に相談するとよいでしょう。

あなた以外に相続人がいない場合

亡くなった時点で親に配偶者がおらず、あなたのほかに実子も養子もいない場合、あなたが唯一の相続人です。基本的に他者との協議が不要なため、比較的スムーズに相続手続きを進められます。財産調査を早期におこない、相続するか否かを検討しましょう。

遺言書にあなた以外の人に財産を譲る旨が書かれている場合は、指定された方と連絡をとって相続の手続きをおこなう必要があります。当事者同士で手続きや話し合いを進めるのが難しい場合もあるため、専門家に相談しましょう。

また、相続税申告が必要となる場合もあります。財産の内容に応じて税理士に相談すると安心です。

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まとめ

離婚した親が亡くなった場合、連絡がくるかどうかは親の家族や周囲の人次第です。あなたは親の相続人であり、仮に連絡がこなかったとしても、死亡の連絡を無視したとしても、相続の権利や義務は消えません。

放置すると、いつのまにか多額の借金を背負っていたなどという事態になりかねません。死亡を知った時点で相続人や財産の調査をおこない、ほかの相続人と連絡をとりあいましょう。相続したくない場合は、早急に相続放棄の手続きをおこないましょう。

相続放棄の期限は、原則として死亡を知った日から3ヵ月以内と法律で定められています。戸籍の見方がわからない、財産調査の方法がわからないなど、手続きの途中でつまづいてしまうと期限までに正しい判断ができません。ひとりで悩まずに、行政書士などの専門家に相談しましょう。

当事務所(行政書士佐藤秀樹事務所)では、相続に関するご相談を受け付けています。小さな疑問でも、まずはお気軽にご相談ください。

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