建設会社設立に必要な資格・許可は?営業開始までのロードマップ

建設会社設立に必要な資格・許可は?営業開始までのロードマップ

建設業界で独立を目指す方や、事業拡大のために法人化を検討している方にとって、どのような資格や許可が必要かは重要なポイントです。個人が持つ技術や経験の証明である資格と、会社が特定の建設工事を請け負うために必要な建設業許可は、それぞれ役割が異なります。

本記事では、建設会社設立に必要な資格と許可の違いから、建設業許可申請の流れ、注意すべきポイントまでわかりやすく解説します。設立準備の初期段階にいる方も、最後まで読んで次のアクションを明確にしましょう。

目次

建設会社を設立するにはどのような資格や許可が必要?

職人としての腕に自信があり、建設業の経験が豊富なベテランの技術者でも、会社を作ってすぐに営業できない場合があります。一定規模以上の工事を請け負うためには「建設業許可」が必要なためです。

まずは建設会社設立時に混同しやすい資格と許可の違いを整理し、どのような場合に建設業許可が必要となるのかを見ていきましょう。

資格と許可は別物?混同しやすいポイントを整理

建設会社を設立するうえで、資格があれば営業できるというのはよくある誤解です。たしかに建築士や施工管理技士といった国家資格は、個人の専門的な技術力の証明になります。しかし、会社として一定規模の工事を受注するためには「建設業許可」が必要です。

技術力の高い職人から建設会社の経営者へとステージを移す際には、事業のビジョンを明確にし、建設業許可の取得も視野に入れて準備を進めるとよいでしょう。

建設業許可が必要となるケースと不要なケース

では、どのような場合に建設業許可が必要になるのでしょうか。知らないうちに無許可営業をしてしまう事態を防ぐため、すぐに建設業許可取得を考えない場合も正しく理解することが大切です。

請負金額が1件の工事につき500万円以上の建設工事(建築一式工事の場合は1,500万円以上、または延べ面積150㎡以上の木造住宅工事)を受注する場合は、建設業許可が必要です。

たとえば、新築住宅の建築工事やビルの大規模リノベーションなどを扱う場合は許可が必要でしょう。一方、クロスの貼り替えや簡易な修繕など、請負金額が500万円(建築一式工事の場合は1,500万円)に満たない建設工事については、建設業許可がなくても請け負うことが可能です。

当面は金額が小さい工事を請け負う予定でも、将来的に事業規模を拡大したい、元請会社と安定した取引をしたいという場合には、早い段階で建設業許可を取得しておく方が、信頼性の面でもメリットが大きい場合があります。

公共工事の入札参加や大手ハウスメーカーとの取引では建設業許可があることが前提条件となることも多いため、許可をもっていないことでビジネスチャンスを逃すことにもなりかねません。

建設業許可に必要な6つの要件とは?

建設業許可を得るためには、建設業法で定められた6つの要件をすべて満たすとともに、客観的に証明する必要があります。ここでは、それぞれの要件の具体的な内容と注意点について解説します。

適切な経営業務管理体制があること

経営業務の管理責任者は、建設業界では「経管」と呼ばれることもありましたが、2020年の建設業法改正により、要件は「適切な経営業務管理体制の整備」に変わりました。必ずしもひとりの方が単独で全ての経営経験を持たなくても、会社の体制として適切な経営能力が備わっていれば許可取得が可能です。

具体的には、常勤役員等として1~3の以下のいずれかの経験を持つ者を配置することが必要です。または、4~5のように、常勤役員等とそれを直接補佐する経験者を組み合わせて置くことが必要です。よりわかりやすくするため、文言をかみ砕いて紹介します。

  1. 建設業の会社で、法人役員や個人事業主として5年以上、経営業務全般を管理した経験がある人
  2. 建設業の会社で、支配人や支店長など社長や役員に次ぐ立場で、経営の指揮を執る権限を与えられ、5年以上経営に携わってきた経験がある人
  3. 建設業の会社で、社長や役員の補佐として6年以上経営業務に携わってきた経験がある人
  4. 建設業の役員などとして2年以上、かつ財務・労務・業務運営のいずれかを5年以上担当した経験がある人
  5. 建設業かどうかにかかわらず役員などとして5年以上、そのうち建設業の役員などとして2年以上経験がある人

4と5は、常勤役員等を直接サポートする形で、財務・労務・業務運営の経験者が必要です。経営経験の証明書類として、組織図、職務分掌、意思決定の流れを示す社内規程、役員や管理職の経歴書などを提出します。

営業所技術者がいること

次に必要なのが営業所技術者です。法改正前の専任技術者(通称「専技」)にあたります。許可を取得しようとする建設業種ごと、営業所ごとに、技術的な責任を担う人材を常勤で配置することが義務付けられています。

一般建設業で営業所技術者として認められるには、以下のいずれかひとつに該当することが必要です。こちらも、文言をかみ砕いて記載します。

  1. 建設工事に関連する専門的な学科を卒業し、その後、現場で経験を積んだ人(大卒・高専卒なら3年以上、高卒なら5年以上)
  2. 許可を受けたい建設工事について、10年以上実務経験を積んできた人
  3. 特定の国家資格(例:建築士、施工管理技士など)をもっている人

具体的にどのような学科・資格が対象となるかは工事の業種によって異なるため、管轄の行政庁が出している建設業許可の手引きをよく確認しましょう。

証明書類としては、資格証明書や卒業証明書のほか、工事契約書、請求書、現場写真などを複数年分そろえる必要があります。ベテランでも実務経験の証明が難しい場合があるため、困ったら行政書士などの専門家に相談することをおすすめします。 

適切な社会保険に加入していること

近年の法改正により強化された要件のひとつです。加入義務があるにもかかわらず、健康保険および厚生年金保険、雇用保険、労災保険へ未加入の場合は建設業許可を受けられません。

許可取得だけでなく、公共工事の入札や元請との取引にも大きく影響するため、事業を安定して運営する上でも重要です。未加入の場合は、許可申請前に必ず加入手続きを済ませておきましょう。

財産的基礎があること

経営破綻による工事の中断や下請業者への支払いの遅れなどを防ぎ、建設業界全体の信頼性を保つために会社の財産を確認します。具体的には、以下のいずれかを満たすことが要件です。

  1. 自己資本が500万円以上あること
  2. 500万円以上の資金調達能力があること
  3. 直前5年間建設業許可を受けて継続して営業した実績があること 

新規設立の会社や、建設業許可を初めて取得する会社の場合、1または2を証明する必要があります。自己資本は貸借対照表の純資産の部で確認できます。資金調達能力を示す場合は、金融機関が発行する残高証明書(申請日時点で500万円以上の預金があることを証明するもの)などで証明します。

請負契約に関して誠実性があること

誠実性があるとは、簡単に言うと正直で真面目な会社であるということです。建設業者として事業を営むには、法令を遵守し、契約を誠実に履行する姿勢が求められます。

許可申請時には、過去の経歴や処分歴が不許可の理由となることがあります。特に以下のようなケースは誠実性を欠くと判断されるおそれがあります。

  • 過去に建設業法違反で営業停止や許可取消の処分を受けた
  • 詐欺や背任、横領などの罪で刑事罰を受けた
  • 許可申請書に虚偽の内容を記載した

申請前には代表者や役員の経歴をしっかり確認し、不安があれば事前に専門家へ相談しておくと安心です。

欠格要件に該当しないこと

欠格要件にひとつでも該当すると、許可を受けられません。主な欠格要件をわかりやすく言い換えると以下のようなものがあります。

  • 建設業許可を取り消され、5年経過していない(許可取り消しの理由は、虚偽の申請をして建設業の許可を取った、著しい不正行為を行った、営業停止処分を無視して営業を続けたなど)
  • 許可が取り消されそうになったため(聴聞の連絡があったため)処分を逃れるために廃業し、5年経過していない
  • 刑務所に入るような刑罰を受けたことがあり、刑が終わってからまだ5年経っていない
  • 建設業法に違反したり、建設工事やそこで働く人に関わる重要な法律(建築基準法、労働基準法、労働者派遣法など)に違反して、罰金刑を受けたことがあり、刑が終わってからまだ5年経っていない
  • 暴力団員、または暴力団員でなくなってからまだ5年経っていない

会社全体だけでなく、代表取締役・役員・支配人など、重要な地位にある方全員に適用され、申請時には欠格要件に該当しないことの誓約書を提出します。内容に虚偽があると刑事罰の対象になる場合もあるため、信頼性ある経営体制の証明として、慎重に確認しましょう。

建設会社設立と建設業許可申請、どちらが先?成功するための順番と流れ

建設業許可を法人として取得する場合には、会社を設立してから許可申請するのが基本です。登記が未完了で法人格を持たない状態では、法人としての建設業許可を申請することができないからです。

以下では、会社設立から許可取得までの流れをステップごとに解説します。事前に手続きの全体像をつかんでおくことで、余計な時間やコストをかけずにスムーズに準備を進めやすくなります。

会社設立と許可申請、どちらを先にすべきか?

前述のとおり、法人で許可を取得するには法人登記が完了している必要があります。まず会社設立手続きを済ませ、そのあとに建設業許可を申請しましょう。ただし、建設業許可の要件を満たすかは会社設立前にあらかじめ確認しておくことが重要です。思い描いたとおりに営業を開始するために、建設業許可に詳しい行政書士に相談するとよいでしょう。

会社設立から許可取得までのステップガイド

会社設立から建設業許可を取得するまでの流れを、5つのステップに分けて解説します。スケジュール感や注意点を押さえて、効率的に準備を進めましょう。

定款作成

会社の基本ルールである定款を作成しましょう。建設業を営む場合は、定款の事業目的欄に「建設業」や「建築工事業」などの文言が明記されている必要があります。その他にも、必ず記載しなければならない事項や、記載しないと効力を発揮しない事項もあるため、専門家にアドバイスを受けながら作成するのがおすすめです。株式会社の場合は、公証役場で定款の認証を受けます。定款は会社設立の登記申請をするために必要です。

法人設立登記

法務局で登記申請すると、法人として正式に設立されます。登記申請は添付書類が多く、登記申請書の作成にも専門知識が必要なため、司法書士に依頼する場合が多いです。登記完了までには、書類の準備期間を含めて2週間から1ヶ月程度かかるのが一般的です。

許可要件確認と証明書類の準備

建設業許可の要件をあらためて確認し、要件を証明するための書類を集めていきます。個人の資格や学歴、実務経験を証明する書類は法人設立を待たずに集められる場合が多いため、先に準備を進めておくのもよいでしょう。

法人の財産的基礎を示す預金残高証明書や社会保険の加入を示す通知書などは、登記だけでなく法人名義の銀行口座の解説や社会保険への加入などの手続きを済ませたあとでないと取得できません。書類の整備には想像以上に時間がかかることもあるため、早めに取りかかることが許可取得の近道です。

建設業許可申請

証明書類がそろったら、建設業許可の申請書を作成し、管轄の行政庁に提出します。申請書類は複数の書式があり、細かな記載ミスや不備があると差し戻されてしまうため、丁寧に仕上げることが重要です。

申請の際には、法定手数料(知事許可で9万円、大臣許可で15万円)がかかります。事前相談が推奨されている場合もあるため、各行政庁で出している建設業許可の手引きを確認して対応しましょう。

建設業許可通知書の交付

申請が受理されると、審査を経て、問題がなければおよそ30日〜45日程度で許可通知書が届きます。許可通知書が届いたら、その情報をもとに建設業の許可票を作成しましょう。営業所や元請けの現場に掲示が義務付けられています。ここまで終われば、晴れて建設業者として営業を開始できます。

審査の段階で追加書類を求められることもあるため、書類を提出しても安心はできません。提出書類の内容について正確に説明できるように準備しておきましょう。

よくある失敗事例と対策

建設業許可申請は提出書類が多く、形式や内容にも細かなルールがあります。一見すると要件を満たしているように思えても、証明書類の不備や説明不足で補正指示を受けるケースも少なくありません。実際によくある失敗事例から対策を学び、スムーズな申請を目指しましょう。

経営経験の証明不足

経営業務の管理責任者(経管)の要件に該当する人物が社内にいても、経験を客観的に証明できる書類がそろっていなければ許可を受けられません。

たとえば、役員経験の期間を示す登記簿謄本や株主総会議事録などが抜けていた、あるいは役員就任時期と申請内容が一致していないなど、わずかな齟齬でも審査に影響します。個人事業主としての経験を証明する場合でも、開業届や確定申告書類がない、工事実績の請求書や契約書の保存が不十分などの理由で証明力が足りないと判断されることがあります。

実際に経験があるだけでなく、書類で期間の漏れがなく客観的に証明できているかを確認しましょう。

技術者の要件不備

営業所技術者として予定していた社員が、許可を受けたい業種に必要な資格や実務経験の年数を満たしていなかったケースもあります。

特に注意が必要なのは、実務経験のみでの申請を予定している場合です。10年分の根拠資料を集めるのは簡単ではありません。工事契約書や注文書などの裏付け資料が不十分だったり、勤務していた会社の証明書類が取得できなかったりすると、経験として認定されないことがあります。

過去の契約書などを書き換えるのは虚偽の申請にあたるため、絶対に行ってはいけません。どうしても書類が揃わない場合は専門家に相談しましょう。

財産的基礎の誤解

とりあえず口座に500万円入れればよいと誤解される場合がありますが、形式的な金額の有無だけではなく、資金の実態や継続性が重視されます。審査の際は入金時期や金銭の出所を確認するため、申請直前の一時的な入金があると追加説明を求められる可能性があります。

登記直後で決算書がない場合は、預金残高証明書が唯一の証拠になるため、名義や金額に間違いがないかも細かくチェックしましょう。

自分でできる?専門家に依頼すべき?判断の分かれ目とメリット・デメリット

建設業許可申請は、法律で定められた6つの要件を満たしたうえで、多くの証明書類をそろえ、正確に申請書を作成・提出する必要があります。コストを抑えるために自力で申請するか、専門家に依頼するべきか迷う方も多いでしょう。

ここでは、自分で申請を行う場合と、行政書士などの専門家に依頼する場合、それぞれのメリット・デメリットを比較し、判断のヒントをお伝えします。

自分で申請する場合の注意点とリスク

自分で申請する場合は行政書士への報酬が不要になるため、初期コストは確かに下げられます。しかし、申請書の記載ミスや書類の不備による差戻しや不許可が起こりやすいのが実際のところです。補正指示への対応などで営業開始が遅れるリスクもあります。

初めての場合、要件を満たしていることを証明する資料を用意したり、行政庁からの問い合わせに適切に対応したりするのが難しい場合があります。調べて準備するのに膨大な時間を要し、本業に支障をきたしては本末転倒です。自分で申請するのが難しいと感じたら、必要な投資と捉えて行政書士に依頼するのも有効な方法です。

専門家に依頼することで得られる安心とスピード

建設業許可申請に精通した行政書士に依頼することで、複雑な申請業務を一括して任せることができます。特に、要件を満たしているか微妙なケースや、証明書類が整っていない状態からスタートする場合、専門家の的確なアドバイスが申請成功の鍵です。

費用は申請内容によって異なりますが、知事許可かつ一般建設業許可の新規申請で15万円程度です。短期間で確実に許可を取得できる可能性が高く、結果として営業開始までの時間的コスト」が抑えられることにもつながります。

また、今後の事業展開を見据えたアドバイスや、更新・業種追加などのフォローも依頼できるため、長期的な安心感を重視したい方には特におすすめです。

まとめ

建設会社を設立し、一定規模の工事を請け負うためには建設業許可が必要です。経営者が個人として技術力を示すような資格を持っていたとしても、それだけでは営業できません。

スムーズな営業開始の第一歩として、会社設立と許可取得の流れを正しく理解しましょう。要件や証明資料に不安がある方、早く確実に許可を取得したい方は、専門家に相談することで無駄な時間と労力を省くことができます。必要な資格や許可をしっかり整え、スムーズに建設業の第一歩を踏み出すために、今すべき行動を明確にしていきましょう。

当事務所(行政書士佐藤秀樹事務所)では、建設業許可申請についてのご相談を受け付けています。初めてで何から手をつけてよいかわからない方はお気軽にご相談ください。

編集者

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