【家族信託の失敗談から学ぶ】注意するべき9つの落とし穴と回避策

近年注目を集める家族信託は、認知症対策や相続準備に有効な選択肢です。しかし、契約の不備、税務トラブル、家族間の対立など、失敗事例も少なくありません。
本記事では、家族信託を検討中の方に向けて、陥りやすい9つの落とし穴と回避策を具体的に解説します。大切な家族のために、正しい知識を身につけ、安心して制度設計を進めましょう。
家族信託のキホン
家族信託はしくみが複雑に感じられるかもしれませんが、基本を押さえることでメリットとリスクを冷静に判断できます。ここでは、家族信託の基本構造や関係者の役割、そして今なぜ多くの家庭で注目されているのかを解説します。
家族信託のしくみと登場人物
家族信託とは、委託者がみずからの財産を信頼できる家族(受託者)に託し、指定した目的に沿って管理・運用してもらうしくみです。将来認知症になった場合でも、受託者が財産管理を継続できる安心感があります。
家族信託の登場人物は、委託者(財産の持ち主)、受託者(財産の管理者)、受益者(利益を受ける方)の三者です。委託者と受益者は同一人物であるケースが多く、親が委託者・受益者で、子が受託者となるパターンが一般的です。
事例で登場人物を確認しましょう。
委託者:母親Aさん
受託者:長男Bさん
受益者:母親Aさん
委託者である母親Aさんは、将来認知症になった場合の財産管理に不安を感じています。そこで、自分の所有する自宅不動産と預貯金の一部を長男Bさんに託すことを考えました。
受託者となったBさんは、信託されたAさんの自宅と預貯金を管理し、Aさんの生活費や医療費をA三の財産から支払います。Aさんが認知症で判断能力が低下しても、Bさんが財産を管理できるため、銀行口座が凍結されて生活費が引き出せなくなるといった事態を防げます。
受益者は母親Aさん自身であり、信託された自分の財産から生じる利益を受け取ります。つまり、財産の形式的な所有権は受託者である長男Bさんに移りますが、財産から得られる利益は引き続きAさんのものとなるしくみです。
このように、家族信託により、母親Aさんは自分の財産を使いながら安心して老後を過ごせるとともに、認知症になった場合の財産管理の不安を解消できます。
なぜ今、家族信託が注目されているのか?
家族信託が注目されている背景には、社会の高齢化と相続対策の重要性が深く関係しています。特に、親が認知症を発症すると、従来の成年後見制度では自由な財産活用が難しくなるため、より柔軟な対応ができる家族信託が選ばれるようになってきました。
また、家族信託は相続対策にも有効です。将来的な財産の承継先を指定できる「後継ぎ遺贈型信託(受益者連続型信託)」などを活用すれば、亡くなった後の財産分配にも意思を反映しやすくなります。
家族信託は、民法上の契約に基づく柔軟なしくみですが、その分ルールの理解不足がトラブルの原因にもなりやすく、適切な設計と運用が求められます。
次からは、実際に起こりやすい失敗の具体例とその対策を見ていきましょう。
【落とし穴1】家族関係に亀裂が……感情のもつれが引き起こすトラブル
家族信託は、あくまでも家族を軸にした制度です。人間関係のわずかなほころびが大きなトラブルに発展するケースも少なくありません。信託という形式の裏側にある“感情”に目を向けないと、信頼関係が壊れ、最悪の場合には相続争いにもつながりかねません。
なぜ家族関係に亀裂が入るのか?心理的背景
「親は長男ばかりを信頼している」「相談もされずに勝手に信託契約が結ばれていた」といった不満がきっかけで、兄弟姉妹間の関係が悪化するケースがあります。
家族信託は、法的には委託者と受託者が契約すれば成立しますが、相続に関係する他の家族にとっては、自分たちの知らないところで物事が進んでしまうことに強い抵抗感を抱きやすいのです。
特に財産に関する情報はデリケートで、「自分だけ知らされていない」という被害感情が膨らみやすい傾向があります。このような心理的なわだかまりが、信託契約への不信感や将来的な相続トラブルの引き金になることもあるのです。
家族会議の徹底!透明性こそトラブル回避の鍵
家族信託を円滑に進めるために欠かせないのが、透明性のある説明と合意形成です。委託者・受託者の間だけで契約を進めるのではなく、相続人予定者全員を含めた家族会議を開きましょう。信託の目的や契約内容を丁寧に説明し、疑問や不安を共有する場を設けることが大切です。
たとえば、「親の判断能力があるうちに、家族全員で今後の財産管理について話し合う」「受託者を一人にする場合でも、定期的な報告義務を契約に盛り込む」といった工夫により、他の家族の不信感を軽減できます。
なぜこの人が受託者なのか、何をどう管理するのかが共有されるだけで、信託の目的が“家族全体の安心”であることが伝わり、感情的なもつれの芽を摘むことができます。
【落とし穴2】「想定外の税金」に驚き!税務リスクを見誤ったケース
家族信託なら贈与税や相続税の心配はないという誤解から、予期せぬ税負担に直面する家庭もあります。家族信託は相続税対策に効果的な面もありますが、設計次第では逆に税務上のリスクを抱えることになります。
想定外に発生する税金の例
家族信託で注意したいのが、贈与税・不動産取得税・登録免許税などの税金です。たとえば、不動産を信託財産として受託者に名義変更する際、契約内容次第では贈与とみなされ、贈与税が課税される場合があります。
贈与税は税率が高く、贈与の対象が不動産の場合は高額になりがちなため注意が必要です。信託期間中に受益者を変更した場合、利益の移転とみなされ贈与税が課されるなど、思わぬ税務リスクにつながることもあるのです。
また、信託を設定しても、固定資産税の納税義務者は受益者です。手続き漏れによって延滞金が発生するケースもあるため、納税を忘れないようにしましょう。
専門家によるシミュレーションでリスクを最小限に
家族信託を検討する際は、必ず税務に精通した専門家によるシミュレーションをおこないましょう。たとえば、不動産を信託する場合には、受益者を誰にするか、どのタイミングで移転をおこなうかによって、課税の有無や税率が大きく異なります。
「家族信託=節税」ではありません。適切な制度理解があってこそ、安心できる設計が可能になります。行政書士や税理士と連携しながら進めることで、将来的な負担やトラブルを未然に防ぐことができます。
【落とし穴3】財産が信託できない?!契約不備や財産管理の落とし穴
せっかく信託契約を結んだのに、信託できない財産があったり、契約内容に不備があって信託口座が開設できなかったりと、思わぬ障害に直面するケースもあります。家族信託の効果を最大限に発揮するには、信託契約の内容と対象財産について、丁寧な確認と準備が必要です。
信託できない財産とは?契約書不備で起こる問題
原則として、家族信託の対象にできるのは「法律上、処分可能な財産」に限られます。不動産や預貯金、有価証券などは対象になりますが、契約者本人名義ではない財産や、すでに担保がついている資産は信託が難しい場合があります。
また、契約書の不備も重大な問題です。受託者が財産を好き勝手できるような表現になっていたり、受益者の権利が曖昧だったりすると、後々法的トラブルに発展しかねません。特に、受託者の権限と目的の具体性については、慎重な文言の設定が必要です。
インターネット上のひな形を安易に使うことは避け、専門家に相談のうえでオーダーメイドの契約書の作成を強くおすすめします。
信託口口座が開設できない問題とその対策
信託契約を締結した後、受託者名義で「信託口口座(信託財産専用の銀行口座)」を開設する必要がありますが、銀行によっては対応していない場合や、契約書の内容が不十分な場合は開設を拒否されることもあります。
信託口口座が開設できないと、信託された財産と受託者個人の財産とを区別して管理できなくなり、受託者の責任が不明確になります。結果として、信託そのものが機能不全に陥ってしまうリスクがあるのです。
信託口座に対応している金融機関や、金融機関が求める契約書の形式を事前に把握しておきましょう。契約前に金融機関に相談しておくと、スムーズな運用につながります。
契約書は専門家のチェックを受けると安心
家族信託の契約書は、ひとつのミスや抜け漏れが大きなリスクとなります。財産の種類や家族構成に応じた設計が大切です。
家族信託の実務に精通した行政書士などの専門家に相談し、契約書のドラフト段階からチェックを受けると安心です。専門家が関わることで、法的な観点だけでなく、実務上のリスクにも目を配ることができます。契約前の段階でいかに準備を整えるかが信託成功のカギを握ります。
【落とし穴4】認知症が進行してからでは手遅れ…契約締結のタイミング問題
そろそろ家族信託を検討しようと思っているうちに、親が認知症を発症してしまい、信託契約を結べなくなってしまうケースもあります。家族信託は契約である以上、契約者本人の判断能力がしっかりしていることが大前提です。タイミングを誤ると、大切な資産の管理が思うようにいかなくなるおそれがあります。
判断能力低下してからでは契約ができない
家族信託の契約には、委託者が自分の意思で信託内容を理解し、契約締結の判断をしていること(意思能力)が求められます。意思能力は、民法で定められた契約の基本的な要件のひとつです。
認知症が進行し、医師から「意思能力がない」と判断された状態では、契約そのものが無効とみなされる可能性があります。実際、契約締結後に親の意思能力をめぐって親族間で争いが起きた例もあります。
また、認知症が軽度であっても、「契約当時、本人は本当に内容を理解していたのか?」と後から疑問が持ち上がることもあり、信託の効力が問われる事態にもなりかねません。
判断能力が確かなうちに検討・相談を
トラブルを避けるためには、親の判断能力が明確で、なおかつ本人の意思で契約内容を決められる段階で、早めに準備を進めることが肝心です。信託契約は財産に関する重要な取り決めですから、元気なうちに話し合いを始めるのが理想的です。
まだ早いと思っていても、家族で話し合いを始め、専門家に相談することで、スムーズな備えが可能になります。
【落とし穴5】受託者の負担が大きく、管理が破綻するリスク
家族信託の受託者となる方は、信託財産を管理・運用する重責を担います。一般的には子どもなどの親族が受託者になるケースが多いですが、実際に始まってみるとその負担は想像以上です。「引き受けなければよかった」「頼まなければよかった」と後悔する方もいます。信託の設計段階で、受託者の負担や能力を正しく見極めることが重要です。
受託者の選定ミスと管理能力不足が招くトラブル
信託財産には不動産、預貯金、有価証券など多岐にわたる資産が含まれる場合があります。適切な管理には、相応の知識と責任感が求められます。
単に「長男だから」「近くに住んでいるから」という理由だけで安易に受託者を選んでしまうと、受託者本人が対応しきれず、財産管理が滞る、家族内での不信感を招くといった問題に発展するリスクがあります。
受託者が信託のしくみや役割を理解していない場合、知らず知らずのうちに信託のルールに反した行為をしてしまい、法的リスクにつながることもあるのです。
利益相反行為禁止のルールと違反のリスク
家族信託では、受託者が自己の利益のために信託財産を使うことは禁止されています。たとえば、親から託された不動産を、本人の許可なく自分の名義で売却したり、自分の借金の担保にしたりするような行為は、受益者の利益に反する行為として問題になります。
信頼して任せたはずの家族同士で法的な争いになるという悲しい結末を迎えないためにも、ルールの理解は重要です。
受託者の慎重な選定とサポート体制の構築
まずは受託者選びを慎重におこなうことが第一です。単なる血縁ではなく、誠実さ・責任感・理解力なども考慮し、場合によっては複数名を共同受託者とする方法や、専門家のサポートを受ける選択肢も検討しましょう。
信託の運用が始まった後も、受託者が定期的に受益者や家族との情報共有をおこなうとよいでしょう。行政書士や税理士が相談役として関わる体制を整えることで、受託者の負担を軽減しつつ透明性の確保が可能です。
【落とし穴6】遺留分対策の考慮不足!思わぬトラブルを招く可能性
家族信託を活用して将来の財産承継をスムーズに進めたいと考える方は多いですが、遺留分を軽視すると、信託後に深刻なトラブルが発生するおそれがあります。家族信託は遺言と異なり、生前から効力をもつため、相続時に他の相続人との間で「不公平感」が生まれやすいのです。
遺留分とは?家族信託と遺留分の関係
遺留分とは、法律で定められた最低限の相続分のことです。法定相続人のうち、配偶者・子(直系卑属)・親(直系尊属)に認められています。
たとえば、ある子どもだけに全財産を信託して他の相続人には一切の財産が渡らないようにすると、遺留分を侵害された他の相続人から遺留分侵害額請求を受ける可能性があります。遺留分を侵害した分の金額は、原則として金銭での支払いが必要です。信託財産が不動産の場合、受託者が自分の財産から支払わなければならず、対応が困難なケースも少なくありません。
遺留分も考慮した総合的な相続対策を練る
家族信託の設計時には、誰に・どの財産を・どのように引き継がせたいのかという希望だけでなく、他の相続人の感情や遺留分も考慮しましょう。
たとえば、配分に納得してもらうための事前説明や、他の相続人にも一定の財産を残す工夫により、リスクの軽減が可能です。
遺留分のトラブルを未然に防ぐためには、家族信託に加えて遺言書の作成や、贈与・生命保険の活用など、複数の手法を組み合わせた総合的な相続対策が効果的です。
【落とし穴7】住宅ローンの一括返済や損益通算不可などのデメリットを見落とす
家族信託は柔軟で便利な制度ですが、万能ではありません。特に不動産を信託財産とする場合、思わぬ制約やリスクが生じることがあります。「信託すれば安心」と思い込んで準備不足のまま進めると後悔しかねません。
信託不動産の損失の損益通算禁止ルール
受益者課税の原則により、信託財産である不動産から得た家賃収入などの利益は受益者の不動産所得などとして課税されます。受託者は、信託財産の管理や収益計算をおこない、受益者に報告する義務がありますが、自分で所得税を納めるわけではありません。
一方、信託財産である不動産から損失が生じた場合(家賃収入より経費が大きい場合など)は、損失は原則としてなかったものとみなされます。受益者が信託財産以外の不動産所得などがあっても、損益通算できません。また、損失を翌年以降に繰り越して控除することも認められていません。
節税対策として不動産を活用していた方にとっては、予想外のデメリットとなることもあります。
住宅ローン付き不動産を信託した際の一括返済リスク
住宅ローンが残っている不動産を信託する場合は慎重な検討が必要です。多くの金融機関では、ローン付き不動産の名義を信託名義に変更するのは契約違反です。場合によってはローンの一括返済を求められます。
家族信託は、財産を受託者名義に変更する必要があるため、金融機関との契約内容や同意の有無を十分に確認しないまま進めると、信託どころか家計の破綻につながるおそれがあります。
信託する財産の性質と影響を事前に確認する
リスクを避けるためには、信託の対象となる財産が税務上・金融制度上どのように扱われるかを事前に把握しましょう。特に不動産については、登記、ローン、家賃収入、税金などさまざまな視点からの確認が必要です。
信託によって何ができるのかだけでなく、何ができなくなるのかにも目を向けて、計画的に設計を進めましょう。疑問がある場合は、家族信託に精通した専門家に相談することで、安心して対策を進められます。
【落とし穴8】信託期間の途中で強制終了!信託法の落とし穴
家族信託は一度契約を結ぶと永久に続くものと思われがちですが、実は期間の制限や信託の終了要件が法令によって定められています。ルールを見落とすと、信託が途中で思わぬ形で終了してしまい、信託終了後の財産の帰属先や税務上の取り扱いに混乱が生じやすいため注意が必要です。
家族信託の「30年ルール」とは?
30年ルールは、受益者が次々に変わっていくタイプの信託(受益者連続型信託)において、信託が永久に続くのを防ぐためのルールです。信託の効力発生から30年が経過した時、または受託者が死亡した時の、どちらか早く到来した時点で、受益権の承継がストップします。
たとえば、父、子、孫……と、何代にもわたって信託が続くと、将来的に誰がその財産の持ち主なのか、最終的にどうなるのかがわかりにくくなるためです。社会や家族の状況に合わせて契約内容を見直し、適切な承継をおこなうためのルールなのです。
家族信託の「1年ルール」とは?
1年ルールは、受託者が不在の状態が1年間続いた場合に信託が強制的に終了してしまう規定です(信託法第163条第3号)。受託者が亡くなったり辞任したりして、後任の受託者が1年以内に選任されない場合、信託は強制的に終了します。財産を管理する人がいない状態が長く続くのは好ましくないためです。
1年ルールは、信託の機能が失われたり、放置されたりする事態を防ぎ、信託関係を明確にするために設けられています。意図せず信託が終了しないよう、信託契約を慎重に設計し、予備の受託者を定めておくなどの対策が重要です。
ルール違反による強制終了リスクと、その影響
信託期間の設計ミスや、契約書に明確な終了時期や条件が記されていないことにより、信託の目的が達成されたとみなされて終了扱いとなる場合があります。特に、受託者と受益者が同一になったことによる信託の即時終了(信託法第163条第2号)などは予期せぬトラブルにつながります。
信託終了後の財産の行き先が適切に指定されていないこともトラブルの要因です。
信託終了時に受益者以外の方が財産を受けとる場合は、贈与税が課税されます。受益者の死亡が原因で信託が終了した場合は、財産を最終的に受け取った方への遺贈とみなされて相続税が課税される可能性があります。
登録免許税や不動産取得税の負担も誰にどのように財産を移転するかによって異なるため、制度設計の時点で専門家に相談して決めておくと安心です。
信託期間と継続性を考慮した適切な設計
信託契約時には、信託の開始時点だけでなく終了後の姿まで見据えた設計が重要です。信託の終了条件を明文化し、信託終了時点で残っている財産の帰属先も明確にすると、トラブルや誤解を防げるでしょう。
また、信託の継続性を保つためには、一定の年数ごとに見直しをおこなう体制を整えておくことも有効です。受託者の高齢化や受益者の死亡など、時間とともに事情は変わります。専門家とともに長期的な視点で設計し、必要に応じて信託契約の見直しをおこなう柔軟さが求められます。
【落とし穴9】専門家選びで失敗!知識不足や不誠実な対応のリスク
家族信託は制度としての自由度が高く、一見すると誰でもできそうに思えるかもしれません。しかし、自由度が高いがゆえに、適切な設計や運用には専門知識が必要です。
専門家の選び方を誤ると、信託契約が無効とされたり、後から多額の税金が発生したりするトラブルになりかねません。ここでは、安心して任せられる専門家の見極め方を解説します。
失敗する専門家選びの特徴と起こりうる損害
専門家のWebサイトなどに掲載されている業務内容の中に信託が含まれていても、必ずしも信託に詳しいとは限りません。実績が不明な場合や、具体的な説明をしてもらえない場合は、信託の経験が浅い可能性があります。
信託制度の理解が浅いまま契約書の雛形を流用したり、信託設計に必要なヒアリングが不十分なまま契約を進めたりした結果、財産管理が滞る結果になりかねません。
最悪の場合、税務署や裁判所で信託の実態がないとみなされ、贈与税や相続税の課税対象となってしまうリスクすらあるのです。
焦って契約するのではなく、無料相談などの機会を利用して、まずは話を聞いてみるとよいでしょう。
専門家への報酬が高額になるケースと注意点
家族信託を専門家に依頼する際の費用相場は、30万円~100万円程度です。専門家報酬は信託財産の1%~1.5%程度が目安となるため、財産が高額な場合は報酬も比例して高くなります。
不動産が複数ある場合や、金銭・有価証券など財産が多岐にわたる場合など、コンサルティングや契約書作成に時間と労力がかかる場合も費用が高くなる傾向があります。
専門家によって報酬体系が異なるため、複数の事務所から見積もりを取り、比較検討することが大切です。コンサルティング費用、契約書作成費用、公正証書費用、登記費用など、何が含まれているか明確にし、あとから追加費用がかからないかも確認しましょう。
実績や信頼性も重視し、総合的に納得できる専門家に依頼するとよいでしょう。
複数比較で信頼できる専門家を見極める
相談先を決めるには、複数の専門家に相談して比較検討することをおすすめします。信頼できる専門家を見極めるためには、以下のような点をチェックしましょう。
- 家族信託の実務経験や取り扱い実績が豊富か
- 財産や家族状況に応じてオーダーメイドで設計してくれるか
- 税務・法務・家族関係など複合的な視点でアドバイスがもらえるか
- 実際のサポート体制やアフターフォローが整っているか
行政書士・司法書士・税理士・弁護士など、複数の専門職が連携している事務所であれば、より安心して任せることができます。
家族信託は専門家と進めるのが安心!行政書士に相談すべき理由
家族信託は、認知症対策や相続準備の有効な手段である一方、設計や契約の過程で誤ると、取り返しのつかないトラブルを招く可能性があります。そのため、検討段階からの専門家のサポートが重要です。
相談先に迷ったら、家族信託に詳しい行政書士に相談するのがおすすめです。
「自分でできる」は危険!家族信託の専門性と複雑さ
「雛形があるから自分でできるのでは?」という声もありますが、専門知識がない方が自分で進めるのは危険です。信託契約は単なる文書作成ではなく、登場人物の関係性、財産の内容、税務への影響、将来のリスクまで総合的な判断が求められます。
受益者連続型の信託や、共有名義不動産の取り扱い、信託終了後の財産移転などは専門家のサポートがなければ設計が難しいでしょう。法的に無効な契約となれば、家族信託の目的自体が失われてしまいます。
専門家に依頼するとコストはかかりますが、家族の安心のための必要経費と捉えることもできるでしょう。
行政書士に相談するメリット
行政書士は、信託契約書の作成はもちろん、家族構成や資産状況に応じたオーダーメイドのスキーム設計が可能です。誤解や不信を避けるための関係者との調整もおこないます。
必要に応じて司法書士、税理士、弁護士などの専門家と連携するため、行政書士に依頼するとできない手続きがあるのでは?という心配は無用です。手続きを依頼するだけでなく、不安や疑問を気軽に相談できる専門家として心強いでしょう。
まとめ
家族信託は、親の認知症対策や円滑な相続に有効な一方で、設計ミスや税務リスク、家族間のトラブルといった失敗につながる落とし穴も存在します。安心して家族信託を進めるためには、法的・税務的な知識を持つ行政書士などの専門家に早めに相談し、家族の状況に合ったプランを一緒に考えることが重要です。
当事務所(行政書士佐藤秀樹事務所)では、家族信託に関する相談を受け付けています。相続と生前対策の経験も豊富な行政書士が、あなたとご家族の状況を丁寧にヒアリングし、適切な財産管理と承継の方法をご提案します。ぜひお気軽にご相談ください。