電気工事で建設業許可をとるには?電気工事業登録との違いと許可要件

電気工事で建設業許可をとるには?電気工事業登録との違いと許可要件

「電気工事業登録はしているけど、建設業許可も必要なの?」と疑問に思う電気工事業者の方は少なくありません。この2つの許可・登録は目的も基準も異なるため、事業の規模や内容によっては両方が必要です。

本記事では、電気工事業における建設業許可と電気工事業登録の違いを明確にし、建設業許可取得の要件をわかりやすく解説します。

目次

建設業許可(電気工事業)が必要な工事とは?

電気工事業を営む場合でも、全ての事業者に建設業許可が求められるわけではありません。まず、どのような場合に建設業許可が必要なのかを解説します。

建設業許可は請負代金500万円以上で必要

建設業法上の電気工事業は、送配電設備や発電設備の設置、屋内配線、照明・動力設備の施工など、電気設備に関する工事全般を指します。新設・改修・撤去工事の全てが対象です。

請負金額が税込500万円以上の工事を請け負う場合、建設業許可が必要です。この請負金額には、材料費や機器代も含まれます。

建設業許可が必要になる可能性がある工事の例
  • 大規模な商業施設の照明・電源設備工事
  • 工場全体の配電設備や変電設備の設置工事
  • ビルやマンションの引込線、構内配線、非常用発電設備の工事
  • 学校や病院などの新築に伴う電気設備工事

たとえば、純粋な工事費用が300万円でも、250万円の高価な配電盤や変圧器を設置する場合、請負代金の合計は550万円となり、建設業許可が必要です。純粋な施工費だけで判断すると、無許可営業をしてしまうリスクがあるため注意しましょう。

建設業許可取得が事業拡大につながる

建設業許可を取得する最大のメリットは、500万円以上の高額案件を合法的に請け負えるようになることです。これにより、取引先の拡大や元請契約の獲得が可能になります。

また、建設業許可は、企業の信頼性の証明にもなります。公共工事への入札参加資格の取得や、金融機関からの融資審査でも有利に働き、長期的な事業基盤の強化につながります。

建設業許可と電気工事業登録の違い

電気工事業をおこなうためには、工事の内容や金額に応じて「電気工事業登録」や「建設業許可(電気工事業)」が必要です。対象とする工事や許可基準、申請先などが異なります。

両者の違いを理解し、自分の事業に必要な許可・登録を確認しましょう。

【比較表】建設業許可と電気工事業登録

建設業許可は建設業法に基づくもので、一定規模以上の工事における適正な取引と工事の品質確保を目的としています。許可が必要かどうかの基準は工事の請負金額です。

一方、電気工事業登録は電気工事業法に基づくもので、電気工事の欠陥による災害防止と、安全確保を目的としています。そのため、登録が必要かどうかの基準は工事内容そのものです。

項目建設業許可(電気工事業)電気工事業登録
根拠法建設業法電気工事士法
必要となる工事請負金額が税込500万円以上の工事一般用電気工作物または自家用電気工作物の設置や変更
要件経営業務管理責任者・営業所技術者・財産的基礎・社会保険加入・誠実性など営業所・主任電気工事士・法定備付器具
申請先都道府県知事または国土交通大臣都道府県知事
有効期間5年5年

このように、建設業許可と電気工事業登録は目的も要件も異なります。そのため、請負金額500万円以上の工事を請け負う場合は、両方の取得・登録が必要となるケースが多いです。

電気工事業登録が必要なケース

電気工事業登録が必要なのは、一般用電気工作物または自家用電気工作物(最大電力500kW未満の需要設備に限る)の設置や変更をおこなう工事です。

電気工事業登録が必要な工事の例
  • コンセントやスイッチ、照明器具の取り付け・交換
  • 電線の配線工事
  • 分電盤やブレーカーの設置・交換
  • エアコンの室内機と室外機を結ぶ配線工事
  • 太陽光発電設備の電気工事

請負金額の大小に関係なく登録が義務付けられているため、比較的規模の小さい工事をおこなう事業者も登録が必要です。営業所ごとに主任電気工事士を配置します。主任電気工事士となるには、「第一種電気工事士」または「第二種電気工事士(免状の交付後、電気工事に関し3年以上の実務経験)」の資格が必須です。

ただし、電気工事士の資格がなくてもおこなえる「軽微な工事」のみを取り扱う場合は電気工事業登録は不要です。

電気工事士の資格が不要な軽微な工事の例
  • 電圧600V以下で使用する差込接続器、ねじ込み接続器、ソケット、ローゼット、その他の接続器や開閉器、電球、ヒューズを取り付け、または取り外す工事
  • 電圧が60V以下の機器を接続する工事

建設業許可(電気工事業)が必要なケース

電気工事業登録を行っていても、1件あたりの請負金額が税込500万円以上となる場合は、電気工事業の建設業許可が必要です。たとえば、工場の受変電設備一式更新や大規模商業施設の配線・照明工事など、材料費と施工費を合わせた総額が基準額を超えるケースがあります。

また、公共工事や大手ゼネコンからの下請け契約では、工事の金額が基準未満でも建設業許可があることを契約条件とされることがあります。取引先や案件の傾向を踏まえて、電気工事業登録のみで対応できるのか、建設業許可を取得すべきかを判断しましょう。

許可取得は時間を要するため、見込み案件が出る前に準備を進めておくことが望ましいです。

一般建設業許可(電気工事業)の要件

一般建設業許可を取得するには、以下の5つの要件を全て満たす必要があります。特に「経営業務の管理責任者等」と「営業所技術者」の確保は多くの事業者がつまずくポイントです。

経営業務の管理責任者等がいること

経営業務の管理責任者等(通称「経管」)とは、建設業の経営経験がある人です。1人では経験が不足している場合、補佐役と組み合わせて要件を満たすことも認められています。

1. 経験者1人で要件を満たす場合

以下のいずれかに該当する人が、常勤の役員等として配置されていること。

  • 建設業に関し、5年以上の経営業務の管理責任者としての経験がある
  • 建設業に関し、5年以上の経営業務管理責任者に準ずる地位で経営業務を管理した経験がある
  • 建設業に関し、6年以上の経営業務を補佐する業務に従事した経験がある

2. 経験者1人+補佐役で要件を満たす場合

以下のいずれかに該当する人が常勤役員として配置され、補佐役が財務・労務管理・業務運営の経験をそれぞれ有していること。

  • 建設業に関し、2年以上役員等の経験があり、かつ、5年以上役員等に次ぐ地位で経験がある
  • 建設業か否かを問わず、5年以上役員等の経験があり、かつ、建設業に関し2年以上役員等の経験がある

補佐役は1人で財務・労務・業務運営全ての経験が必要なわけでなく、分野ごとに複数の補佐人をつけることも認められます。ただし、役員等も補佐役も常勤でなければならないため、外部のコンサルタントや、他の会社の役員と兼務する人では要件を満たしません。

営業所技術者がいること

営業所技術者とは、建設業の種類ごとに必要な技術資格や実務経験をもつ人を指します。電気工事をおこなう営業所ごとに、許可を受ける業種の工事に精通した技術者の配置が必要です。要件は以下のように、学歴と実務経験、実務経験のみ、国家資格の3種類あり、いずれかひとつを満たす必要があります。

  • 指定学科(電気工学、電気通信工学)を卒業し、かつ、一定の実務経験がある
    • 大学・高専卒:3年以上の実務経験
    • 高校卒:5年以上の実務経験
  • 特定の国家資格をもっている
    • 1級電気工事施工管理技士
    • 2級電気工事施工管理技士 (電気工事)
    • 第一種電気工事士
    • 第二種電気工事士 (免状交付後、電気工事に関して3年以上の実務経験)
    • 電気主任技術者 (第1種~第3種のいずれかで、免状交付後、電気工事に関して5年以上の実務経験)
    • 技術士(建設、総合技術監理、電気電子)
  • 電気工事に関して、10年以上の実務経験がある

営業所技術者は許可を受ける営業所に常勤している必要があり、他の会社との兼務は不可です。

誠実性があること

誠実性とは、工事の請負契約をきちんと履行するコンプライアンス体制が整っていることを指します。発注者や下請業者との間でトラブルを起こした履歴も審査の対象です。会社や役員、事業主、営業所長、支店長などが、過去5年以内に罰金以上の刑を受けている場合は要件を満たしません。

財産的基礎があること

財産的基礎とは、健全な経営を維持できる資金力があることです。一般建設業では、自己資本500万円以上、または500万円以上の資金調達能力を証明する必要があります。証明方法は、直近の決算書や預金残高証明書、融資証明書などです。資金基盤が弱いと、許可取得後の事業継続も困難になるため、審査では厳しく見られます。

欠格要件に該当しないこと

会社や事業主、役員などが欠格要件に該当すると許可が下りません。欠格要件は、破産して手続きが終わっていない、建設業許可取消処分を受けてから5年以内、拘禁刑の執行が終わってから5年以内など複数あります。

社会保険に加入していること

近年、建設業許可の審査で重視されるようになったのが社会保険の加入状況です。法人や常勤従業員がいる事業所では、健康保険・厚生年金保険・雇用保険への加入が義務付けられています。

社会保険加入は労働者の福利厚生だけでなく、元請けや発注者からの信頼にも直結します。未加入のままでは許可申請が受理されない場合が多いため、適切な社会保険に加入しているか確認しましょう。

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特定建設業許可(電気工事業)の要件

元請けとして下請業者に発注する工事の総額が4,000万円以上(建築一式工事の場合は6,000万円以上)となる場合は、特定建設業許可が必要です。一般建設業許可と比較して、財務基盤と技術者の要件がより厳格です。ほかの要件についても、審査で厳しく見られる傾向があります。

特定建設業の営業所技術者

特定建設業許可には、一般許可よりも高い専門性と技術力をもつ営業所技術者の配置が求められます。電気工事業は「指定建設業」に該当するため、以下のいずれかの資格が必須です。実務経験のみでの認定は原則として認められません。

  • 1級電気工事施工管理技士
  • 技術士(建設、総合技術監理、電気電子)

大規模工事の現場監督や設計・品質管理を担う能力が重視されるため、技術者の人材確保が許可取得のハードルになるケースもあります。

特定建設業の財産的基礎

特定建設業許可は、下請業者への支払いを確実におこなえる資金力があるかを確認するため、財産要件が厳しいのが特徴です。以下の全てを満たす必要があります。

  • 欠損の額が、資本金の額の20%を超えないこと
  • 流動比率が75%以上であること
  • 資本金の額が2,000万円以上であること
  • 自己資本の額が4,000万円以上であること

直近の貸借対照表や預金残高証明、金融機関の融資証明書などの提出が必要です。財務面で要件を満たさない場合、増資や資産の充実を図ったうえで申請に臨みましょう。

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建設業許可の申請手順と費用

建設業許可をスムーズに取得するためには、申請の流れを理解して早期に準備を開始することが大切です。ここでは、申請の流れと費用について解説します。

建設業許可申請の流れ

建設業許可の取得には、大きく分けて3つのステップがあります。

1. 要件の確認と書類の準備

経営業務の管理責任者等や営業所技術者、財務要件など、許可要件を満たしているかを確認します。要件を満たしている場合は、登記簿謄本、決算書、技術者の資格証明書、会社の定款など、膨大な数の書類を収集・作成します。

2. 申請書の提出

必要書類を全て揃えたら、管轄の都道府県知事または国土交通大臣へ申請します。

3. 審査・許可通知

申請後、行政庁による審査が行われます。審査期間は、都道府県によって異なりますが、約30日~45日程度が目安です。審査が完了すると、許可通知が届きます。

許可取得までの期間は、書類準備から含めると数ヵ月かかることが一般的です。特に、要件を満たす人材や証明書類の収集に時間がかかる場合があります。

建設業許可申請の費用

建設業許可申請にかかる主な費用は、法定手数料と行政書士への報酬です。

法定手数料は申請書を提出する際に必ずかかる費用で、新規で知事許可を取得する場合は9万円、国土交通大臣許可を取得する場合は15万円です。営業所がひとつの都道府県のみにある場合は知事許可、2つ以上の都道府県にまたがる場合は国土交通大臣許可が必要です。許可の有効期間は5年で、更新時にも同様の手数料が発生します。

自社で申請手続きをおこなう場合は法定手数料のみで済みますが、行政書士に依頼する場合は報酬が発生します。報酬の額は事務所や依頼内容によって異なりますが、一般的には10~30万円程度が相場です。

契約前に見積もりを提示してもらい、何にいくらかかるのかをしっかり把握しましょう。許可申請に必要な費用総額としては20~50万円程度の費用を見積もっておくとよいでしょう。

電気工事業の建設業許可は行政書士に相談を

建設業許可の申請は、自分でおこなうことも可能です。しかし、要件の複雑さや膨大な提出書類、行政とのやり取りなど、慣れない手続きに本業の時間が取られてしまうリスクがあります。

建設業許可に強い行政書士に依頼すれば、要件確認から書類作成、提出まで、一連の手続きをスムーズに進めることができます。時間と手間を大幅に削減し、確実に許可を取得できるため、事業拡大のための重要な投資と考えることができます。

まとめ

建設業許可と電気工事業登録は、目的も要件もまったく異なるものです。工事金額が500万円未満であれば電気工事業登録のみで対応できる場合もありますが、それ以上の高額案件や公共工事では建設業許可が必要です。

許可取得には、経営業務の管理責任者等や営業所技術者の配置、健全な財務基盤など、複数の要件を満たさなければなりません。申請書類も多岐にわたるため、初めての申請や要件に不安がある場合は、専門家である行政書士への相談を検討しましょう。

当事務所(行政書士佐藤秀樹事務所)では、建設業許可に関するご相談を受け付けています。建設業許可が必要かわからない方も、許可要件を満たすか不安な方も、経験豊富な行政書士が丁寧にお話を伺ったうえでアドバイスいたします。ぜひお気軽にご相談ください。

編集者

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