建設業許可取得後に本店移転した際の手続きは?変更届・登記について徹底解説!

建設業許可取得後に本店移転した際の手続きは?変更届・登記について徹底解説!

建設業許可を取得したあとに本店を移転すると、「変更届」または「許可換え新規」といった手続きが必要です。移転先が同一都道府県内か、他県かによって対応が大きく異なり、登記・許可など複数の手続きを期限内に行う必要があります。

本記事では、本店移転に伴う登記の流れ、変更届・許可換え新規の違い、手続きに必要な書類や費用、そして手続きを怠った場合のリスクまでをわかりやすく解説します。

本記事を読むことで、本店移転を控えている方は、トラブルなくスムーズに建設業許可の手続きができるようになるでしょう。ぜひ参考にしてください。

目次

建設業許可取得後に本店移転した際の手続きの流れ

建設業許可を取得したあとに本店を移転した場合、速やかに「変更届」または「許可換え新規」が必要です。

移転先が同一都道府県内か、ほかの都道府県かによって手続きが異なります。

現在の一般的な流れは次のとおりです。

  1. 登記変更の完了
    まず、法務局で本店所在地の変更登記を行い、新しい登記事項証明書を取得します。
  2. 変更届または許可換え新規
     ・同一都道府県内の移転 → 「変更届出書」を提出(変更後30日以内)。
     ・他県への移転 → 「許可換え新規」申請が必要。
  3. 関係書類の添付・提出
    登記事項証明書、定款、役員名簿、営業所写真などを添付し、提出先は都道府県庁または国土交通省地方整備局です。

これらの手続き完了後、許可証の書換交付が行われます。

変更内容を放置すると営業停止などの行政処分を受ける場合もあるため、速やかな対応が重要です。

【必要な手続き①】変更届提出について

建設業許可を受けた業者が本店所在地を移転した場合、移転先が同一都道府県内であれば「変更届」の提出が必要です。

この届出は、許可内容を最新の事業情報に更新するための重要な手続きです。

登記上の本店だけでなく、実際の営業所の所在地も変更となる場合は、営業所としての要件(専任技術者や常勤性など)を満たしているかも確認されます。

変更届を怠ると、許可情報の整合性が取れず、更新申請時や公共工事の入札資格審査で問題になる場合があるので、気をつけましょう。

申請期限

変更届は、建設業法第11条に基づき、変更が生じた日から30日以内の提出が義務付けられています。

ここでの「変更日」は、登記簿上の変更登記が完了した日を指すのが一般的です。

期限を過ぎると、行政指導や監督処分の対象となるおそれがあるため注意が必要です。

なお、やむを得ない事情で期限内に提出できない場合でも、理由書を添付して速やかに対応しましょう。

必要書類

変更届を提出する際は、以下のような書類が必要です。 

  • 建設業許可変更届出書 
  • 登記事項証明書(移転後のもの) 
  • 定款(変更箇所がある場合) 
  • 専任技術者の勤務証明書(必要な場合) 

書類の不備があると受理されないことがあるため、最新の様式や記載要領を都道府県庁や国土交通省の公式サイトで確認しておくことが大切です。 

提出先

提出先は、許可の区分によって異なります。

一般建設業・特定建設業のいずれも、都道府県知事許可の場合は本店所在地の都道府県庁、国土交通大臣許可の場合は管轄の地方整備局が窓口です。

窓口への持参が基本ですが、近年は郵送や電子申請にも対応する自治体が増えています。

最新の受付方法や提出書式は、各自治体・地方整備局の公式Webサイトで確認しましょう。

【必要な手続き②】許可換え新規について

 「許可換え新規」とは、本店をほかの都道府県へ移転した場合に行う新たな建設業許可申請のことです。

建設業の許可は都道府県ごとに有効であり、県外に本店を移すと従来の許可が失効するため、新たに移転先の都道府県で許可を取り直す必要があります。

すでに許可を受けていた実績があるため「新規申請」とは異なり、過去の経営実績や技術者要件などを引き継いで審査を受けることが可能です。

申請のタイミングを誤ると無許可期間が生じるおそれがあるため、移転前から準備を進め、旧許可の廃業届も忘れずに提出するのが重要です。 

必要書類

許可換え新規を行う際には、次のような書類を準備する必要があります。

  • 許可換え新規申請書(所定様式)
  • 登記事項証明書(移転後の本店所在地のもの)
  • 経営業務管理責任者の要件を証明する書面
  • 専任技術者の要件を証明する書面
  • 身分証明書
  • 登記されていないことの証明書
  • 定款
  • 履歴事項証明書(登記簿謄本)
  • 納税証明書
  • 社会保険などに加入していることを証明する書面
  • 金融機関の残高証明書
  • 営業所の所有・使用権限を証明する書類
  • 支店責任者が契約締結権限を持つことを証明する書面
  • 営業所の写真

いずれも最新の様式を各都道府県庁や地方整備局の公式サイトで確認し、不備のないよう整えることが重要です。

これらの書類を正確にそろえることで、審査の遅延や補正指示を防ぎ、スムーズな許可取得につながります。

手続きにかかる費用

許可換え新規にかかる手数料は、申請先の区分によって異なります。

2025年現在、都道府県知事許可の場合はおおむね9万円前後、国土交通大臣許可の場合は15万円前後が目安です。

これに加えて、登記事項証明書や住民票、財務書類の取得費用、専門家(行政書士)への依頼費用などが別途発生します。

【必要な手続き③】登記について

建設業許可を受けた後に本店を移転する場合、まず必要となるのが法務局での「本店移転登記」です。

登記は会社の基本情報を公的に記録するもので、登記を怠ると許可更新や変更届の際に不備扱いとなるおそれがあります。

登記申請は移転日から2週間以内に行うことが会社法で義務付けられており、期間を過ぎると過料(罰金)を科される場合もあります。

登記完了後に発行される「登記事項証明書」は、そのあとの建設業許可変更届や許可換え新規申請の際に必須書類として用いられます。

必要書類

本店移転登記に必要な主な書類は以下のとおりです。

  • 株式会社本店移転登記申請書
  • 株主総会議事録
  • 株主リスト
  • 取締役会議事録
  • 取締役の決定書
  • 委任状

登記内容や会社形態(株式会社・合同会社など)によって添付書類が異なるため、事前に法務局の公式サイトや窓口で最新情報を確認するのが重要です。

手続きにかかる費用

本店移転登記に必要な費用は、登記の種類によって異なります。

2025年現在の目安として、同一法務局管内での移転は登録免許税3万円、ほかの法務局管轄区域への移転は登録免許税6万円がかかります。

さらに、司法書士に依頼する場合は別途3万円〜7万円程度の報酬が発生します。

そのほか、印鑑証明書や登記事項証明書の発行手数料も必要です。費用を抑えたい場合は、自社でオンライン申請を行うことも可能ですが、書類不備があると修正指示を受けるため、慎重な準備が求められます。 

登記手続きの流れ

本店移転登記は次のような流れで行われます。

  1. 株主総会または取締役会で本店移転を決議
  2. 新所在地の確定および賃貸契約・住所確認書類の準備
  3. 登記申請書および添付書類の作成
  4. 管轄法務局へ登記申請(移転日から2週間以内)
  5. 登記完了後、登記事項証明書を取得

登記完了にはおおむね一週間ほどかかります。完了後は速やかに建設業許可変更届や許可換え新規申請に進むことで、手続きの遅れを防ぐことができます。

建設業許可取得後の本店移転を怠った場合のリスクとは?

本店移転後に変更届や登記を提出せずに放置すると、行政指導や営業停止などの処分を受ける可能性があります。

さらに、許可更新や入札資格、金融取引にも影響するため、リスクを正しく把握して早期対応するのが大切です。

次から詳しい内容を見ていきましょう。

行政指導・注意の対象となる

建設業許可を受けたあとに本店を移転しても、変更届や許可換え新規などの手続きを行わないままでいると、行政指導や注意喚起の対象になってしまいます。

建設業法第11条では、許可業者は「変更があった場合は30日以内に届け出る」ことが義務付けられています。

これを怠ると「報告義務違反」として、まずは指導文書や改善命令が出されることがあります。

特に公共工事を請け負っている業者は、信用に関わる重大な問題とみなされるため、行政処分や入札参加停止のリスクが高まります。

許可更新時に「書類不備」扱いになる

建設業許可は5年ごとの更新が必要ですが、本店所在地の変更手続きをしていないと、更新時に「書類不備」として受理されないケースがあります。

許可証に記載された本店住所と登記簿上の所在地が一致していない場合、事実関係の確認や訂正が必要となり、更新手続きが大幅に遅れる可能性があります。

結果として、更新期限までに許可が間に合わず、営業停止状態に陥ることもあります。

無許可営業とみなされるケース

本店所在地をほかの都道府県に移転したにもかかわらず、旧所在地の都道府県知事許可のまま営業を続けた場合、「無許可営業」とみなされるおそれがあります。

建設業法では、許可の効力は都道府県ごとに限定されており、管轄外での営業は違法とされます。

無許可営業と判断された場合、営業停止や罰則(懲役または罰金)の対象になることもあります。

移転が決まった段階で速やかに「許可換え新規」手続きに着手し、許可の空白期間が生じないように準備しておくことが不可欠です。

登記遅延による過料

会社法第915条では、本店移転後2週間以内に登記を行わなければならないと定められています。

これを過ぎると、代表者や取締役に対して「過料(罰金)」が科されることがあります。

過料の費用は事案によって異なりますが、一般的に数万円程度が課されることが多いです。

登記遅延は単なる形式的な問題に見えて、許可手続きや契約時の信用にも影響するため、移転が決まり次第、速やかに法務局への登記申請をおこなう必要があります。

請負契約・金融取引への影響

本店所在地の変更を反映していないまま営業を続けると、取引先や金融機関との信頼関係に支障をきたすことがあります。

請負契約書や請求書に記載された住所が登記情報と異なる場合、「法人情報の整合性が取れていない」と判断され、契約締結を拒まれたり、融資審査が通らなかったりする場合もあります。

特に公共工事や入札案件では、会社情報の正確性が厳しく確認されるため、信用低下につながるリスクがあります。 

行政機関・税務署・社会保険手続きにも影響

本店移転に伴う登記や届出を怠ると、建設業許可だけでなく、税務署・年金事務所・労働基準監督署などへの届出にも影響がおよびます。

所在地が変更されていない状態では、税務関係の書類や社会保険の通知が旧住所に送付され、重要な手続きを見逃す危険があります。

さらに、労災保険や雇用保険の適用事業所情報も更新されないため、従業員の保険手続きに支障が出る場合もあります。

移転後は、登記・許可・税務・労務の各届出を一連の流れで完了させることが大切です。

建設業許可後の本店移転と営業所移転との違いは?

「本店」と「営業所」はどちらも事業拠点ですが、法的な位置づけや必要手続きは大きく異なります。

それぞれの定義・手続きの流れ・実務上の影響を理解すれば、移転時に必要な対応を正確に判断できます。

次から詳しく解説していきます。

建設業許可における「本店」と「営業所」の定義

建設業法における「本店」と「営業所」は、いずれも事業運営の拠点ですが、その役割と法的な位置づけは異なります。

「本店」は会社の登記上の所在地であり、法人の意思決定・経営管理を行う中心機能を持ちます。

一方の「営業所」は、実際に建設業の営業活動や契約締結、施工管理などを行う事業拠点を指します。

営業所は必ずしも登記上の支店である必要はありませんが、専任技術者の配置や常勤性が求められるなど、建設業法上の要件を満たす必要があります。

本店の移転は、許可そのものに関わる重大な変更ですが、営業所の移転は営業体制の変更に位置づけられます。

手続きの違い

本店を移転する場合、登記変更が必須であり、移転先が同一都道府県内か他県かによって手続きが変わります。

同一県内では「変更届」を提出し、県外へ移転する場合は「許可換え新規」として新たな許可申請が必要です。

これに対して営業所移転は、登記を伴わない場合でも「営業所に関する変更届」を30日以内に提出する義務があります。

また専任技術者の常勤性や人員配置の確認資料(勤務証明書、営業所写真など)も求められます。

本店移転は許可の有効性そのものに影響するのに対し、営業所移転は営業活動の適正性に関する確認手続きが中心です。

実務上の影響の違い

本店移転は、許可証記載事項・登記簿・税務関係・社会保険関係など、会社全体の法的手続きに大きな影響を及ぼします。

特に県外移転の場合、旧許可の効力が失われるため、許可換え新規を行わないと建設業を継続できません。

一方、営業所移転は営業拠点の変更にとどまるため、許可の有効性は維持されますが、専任技術者が不在となる期間が生じると「営業停止」に該当するおそれがあります。

公共工事や入札資格審査では、営業所の所在地・技術者情報が厳密に確認されるため、移転時期と手続きの連携を慎重に進めることが実務上のポイントです。

建設業許可後の本店移転手続きは専門家に頼むべき?

登記・許可・税務・社会保険など複数の手続きが関係する本店移転は、行政書士や司法書士など専門家に依頼すればスムーズに進められます。

次から解説する「自分で対応できるケースとの違い」や、「依頼費用の目安」を知って、効率的に手続きを完了させましょう。

専門家に依頼すべきケース

本店移転に関する手続きは、登記・建設業許可・税務・社会保険など複数の行政手続きを伴うため、内容が複雑になることがあります。

特に、県外への移転で「許可換え新規」が必要な場合や、法人登記・営業所構成・技術者配置などが同時に変更になるケースでは、行政書士や司法書士など専門家へ依頼するのがおすすめです。

また、公共工事の入札資格を維持している事業者や、許可業種が複数ある場合も、書類不備が許されないためプロのサポートが必要でしょう。

移転後に無許可期間が生じると業務停止リスクもあるため、専門家を通じて確実なスケジュール管理を行うのが安心です。

自分で手続きしてもよいケース

同一都道府県内での本店移転や、営業所構成・役員体制に変更がない場合は、自分で手続きを進めるのもよいでしょう。

登記申請と建設業許可の変更届の流れを正確に理解し、期限内(登記は2週間以内、変更届は30日以内)に提出できるのであれば、費用を抑えて進められます。

法務局や都道府県庁の公式サイトには最新の申請様式や記載例が公開されているため、それを参考にすれば問題ありません。

ただし、添付書類の不備や日付のずれがあると補正指示や再提出になるため、慎重な確認が必要です。時間的余裕がある個人事業主や小規模業者には向いています。

専門家に依頼するメリット・デメリット

建設業許可後の本店移転手続きは、内容が複雑で複数の行政手続きを伴うため、専門家に依頼すればスムーズかつ確実に進められます。特に期限管理や書類作成に不安がある場合は、専門家のサポートが大きな助けになるでしょう。

【メリット】

  • 手続きの正確性とスピードが確保できる
  • 書類不備や期限超過を防げる
  • 許可換え新規・登記・税務届出などを一括で任せられる
  • 最新の法改正や要件に対応してもらえる

【デメリット】

  • 報酬費用が発生する
  • 内容によっては打ち合わせや確認に時間がかかる
  • 軽微な変更のみの場合は費用負担が割高になる

もし全て自分で対応するのが不安だけれど、費用はかけられない場合は、専門家に全て任せるのではなく、登記のみを依頼して変更届は自分で行うなど、依頼範囲を分ける「部分依頼」もおすすめです。自社の規模や業務量に合わせて、最適なサポート体制を選びましょう。

専門家に依頼した場合の費用相場

本店移転に関する建設業許可の手続きを専門家に依頼する場合、依頼内容や移転の範囲によって費用は変わります。一般的な相場は以下のとおりです。

  • 登記のみ司法書士に依頼:3万円〜7万円前後
  • 建設業許可変更届(同一都道府県内):5万円〜10万円前後
  • 許可換え新規(県外移転):10万円〜20万円前後
  • 登録免許税:3万円〜6万円(別途)
  • 各種証明書発行費用:数千円〜

これらの費用は専門家の事務所規模や地域によっても差があります。費用はかかりますが、書類作成・行政対応・スケジュール管理を一任できるため、結果的にリスク回避や時間短縮につながります。

費用対効果を考え、自社にとってもっとも効率的な依頼内容を検討するのが大切です。

まとめ

建設業許可をもつ企業は、本店移転をおこなう際、転先が同一都道府県内であれば変更届を、県外であれば許可換え新規をおこなう必要があります。

いずれも期限を過ぎると行政指導や営業停止などのリスクが生じ、公共工事や金融取引にも影響する可能性があります。

手続き内容が複雑な場合は、行政書士や司法書士など専門家に依頼するのもおすすめです。

編集者

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