更新手数料が4万円、永住は10万円超に?政府が検討する「大幅値上げ」の内容と影響を解説

「在留カードの更新手数料が、今の5倍〜10倍になるかもしれない」 そんな衝撃的なニュースが飛び込んできました。
2024年11月、政府は外国人の在留資格手続きにかかる手数料を、現在の水準から欧米並みに大幅に引き上げる方針を固めたと報道されています。
これまでの手数料は、変更・更新許可で6,000円、永住許可で8,000円〜1万円程度でしたが、今回の検討案では更新等が3万〜4万円、永住許可に至っては10万円以上という、これまでにない上げ幅が想定されています。
実施の目安は2026年度とされており、今後、外国人材を雇用する企業や、日本での永住を目指す方にとっては無視できないコスト増となることは間違いありません。
なぜこれほど急激な値上げが行われるのか? 具体的にいつから変わるのか? この記事では、報道されたニュースの内容を整理し、今後の見通しと、申請者が今知っておくべきポイントを行政書士の視点で解説します。
在留資格の手数料が大幅値上げへ
政府・与党関係者からの情報として、外国人の在留資格手続きにかかる手数料を「欧米並み」の水準まで引き上げる方針が明らかになりました。
これまで日本の手数料は「実費相当(印紙代)」として比較的安価に設定されてきましたが、今回の検討案では、制度維持や管理コストを含めた「受益者負担」の考え方へ大きくシフトすることになります。
具体的にどのような金額が検討されているのか、詳しく見ていきましょう。
【金額】更新は最大4万円、永住は10万円超へ?現行との比較
報道によると、政府が軸として検討している値上げ案は以下の通りです。特に永住許可申請の手数料は、現在の10倍以上となる可能性が示唆されています。
| 手続きの種類 | 現在の手数料 (2024年4月〜) | 検討されている改定案 |
| 在留期間の更新 | 6,000円 | 30,000円 〜 40,000円 |
| 在留資格の変更 | 6,000円 | 30,000円 〜 40,000円 |
| 永住許可申請 | 10,000円 | 100,000円以上 |
※金額は報道ベースの検討案であり、確定したものではありません。
これまで、日本の手数料は諸外国と比べても「格安」とされてきました。 たとえば、就労資格の変更・更新にかかる費用は、米国では約6万5000円~7万3000円、英国では約16万9000円と高額です。今回の改定案は、こうした欧米主要国の水準(数万円〜十数万円)を参考に設定されています。
また、入国管理局(法務省)の手続きだけでなく、外務省が管轄する「査証(ビザ)」の発行手数料についても、同様に引き上げが検討されています。
対象となる手続きと時期の目安
では、この大幅な値上げはいつから実施されるのでしょうか。
報道によれば、政府は「2026年度」の実施を目指して調整を進めています。
実は、現在の手数料の上限は「入管法(出入国管理及び難民認定法)」によって「1万円」と定められています。そのため、これを超える金額に設定するには、政令の変更だけでなく、法律そのものを改正する必要があります。
今後のスケジュールとしては、以下のような流れが予想されます。
- 2025年(来年)の通常国会:入管法改正案を提出
- 法案の可決・成立
- 2026年度(再来年度):新料金体系での運用開始
つまり、明日すぐに値上がりするわけではありませんが、再来年度の更新や申請からは、コストが劇的に変わる可能性が高いということです。特に、数年以内の永住申請を考えている方や、多くの外国人材を抱える企業にとっては、早めの計画が必要になるでしょう。
なぜ今、手数料に改定が必要なのか?背景を解説
これまで数千円で済んでいた手数料が、なぜ急に数万円、あるいは10万円以上へと跳ね上がるのでしょうか。
政府の方針転換の裏には、「国際基準への合わせ」と「外国人材受入れ拡大に伴うコスト増」という2つの大きな理由があります。
日本は「安すぎる」?欧米諸国との圧倒的な価格差

政府が今回の値上げの最大の根拠としているのが、「欧米諸国との価格差」です。
これまでの日本の手数料設定は、基本的に「紙代や事務手数料などの実費」を基準にしていました。しかし、欧米では「行政サービスを受ける人が、その維持管理コストも負担すべき」という「受益者負担」の考え方が一般的です。
報道で紹介されている各国の手数料(就労資格の変更・更新)と比較してみましょう。
- 日本:6,000円(※2024年4月改定後)
- ドイツ:約1万6,000円〜1万7,000円
- 米国:約6万5,000円〜7万3,000円
- 英国:約16万9,000円
このように、特に英語圏の主要国と比較すると、日本の手数料は桁違いに安く設定されています。政府は、日本の手数料をこれらの国々の水準(数万円〜十数万円)に近づけることで、財源を確保したい考えです。
増収分の使い道は審査迅速化・環境整備と「不法滞在対策」
もう一つの背景は、在留外国人の急増と、それに伴う行政コストの増大です。 2024年6月末時点で、在留外国人数は約396万人と過去最高を更新しました。申請件数が増えれば、審査にかかる人件費やシステム維持費も当然膨らみます。
今回の値上げによる増収分は、単に国の利益になるわけではなく、以下のような施策に充てられる予定です。
- 入国審査・在留審査の迅速化
- 審査官の増員やシステムの高度化により、審査待ち時間の短縮を図る。
- 受入れ環境の整備
- 日本語教育の充実など、日本で暮らす外国人の支援体制を強化する。
- 不法滞在者対策の強化
- 現在約7万人に上るとされる不法滞在者の摘発や、強制送還にかかる費用に充てる。
特に、円滑な共生社会を作るための「環境整備」と、ルールの厳格化(不法滞在対策)の両面において、財源が必要とされているのが現状です。
申請者・雇用企業への影響と懸念点
今回の値上げ案が実現すれば、当然ながら申請者本人や、雇用主である企業の負担は重くなります。単に「高くなる」だけでなく、具体的なシチュエーションでどのような影響が出るのかを考えてみましょう。
留学生や家族滞在者への経済的負担

最も影響が大きいと予想されるのが、留学生や「家族滞在」ビザで暮らす方々です。 たとえば、就労ビザを持つ夫と、妻・子供2人の4人家族の場合を考えてみます。
これまでは家族全員分の更新手続きをしても、手数料は合計2万4,000円(6,000円×4人)程度でした。 しかし、仮に1人4万円に値上げされた場合、一度の更新で合計16万円もの出費が必要になります。
在留期間が「1年」しか出なかった場合、毎年この出費が発生することになります。家計への圧迫は避けられず、更新時期の負担感は非常に重いものになるでしょう。
企業が負担する場合のコスト増

技能実習生や特定技能外国人などを多数雇用している企業や監理団体にとっても、看過できない問題です。 多くの企業では、福利厚生や採用コストの一環として、在留手続きの手数料を会社側が負担しています。
もし100人の外国人社員を抱える企業で、全員の更新手数料が4万円になったと仮定すると、単純計算で400万円がかかります(※更新時期が分散するとしても、年間のランニングコストとして)。
これまでは「数千円だから」と会社が全額負担していたケースでも、今後は「本人負担とするか、会社負担を続けるか」のルール見直しを迫られる企業が出てくるはずです。
永住権申請への駆け込み需要は起きるか?
今回の報道で特に衝撃を与えたのが、永住許可申請手数料の「10万円以上」への値上げです。 現行の1万円(印紙代8,000円から改定済み)と比較すると10倍以上の跳ね上がりとなるため、「安いうちに申請しておきたい」という心理が働くのは自然なことです。
法改正が予定されている2025年から施行される2026年度にかけて、永住申請の「駆け込み需要」が急増する可能性が高いでしょう。
ここで懸念されるのが、審査期間のさらなる長期化です。 現在でも永住許可の審査には10ヶ月〜1年以上の時間を要するケースが増えています。駆け込み申請が殺到すれば、審査完了までさらに長い時間がかかることも予想されます。「いつか永住を」と考えている方は、要件を満たし次第、早めに動くことが重要になるかもしれません。
行政書士としての見解と今後の対策
今回の報道は、多くの外国人の方や企業にとって寝耳に水の話だったかもしれません。 しかし、ただ不安がるだけでなく、制度の趣旨を理解し、冷静に対策を立てることが重要です。
手数料値上げでも「許可」のハードルは変わらない?
「高いお金を払うのだから、その分、審査が緩くなったり、サービスが良くなったりするのでは?」 そう期待する方もいるかもしれません。しかし、結論から言えば審査のハードル(要件)が下がることはありません。
むしろ、政府は今回の増収分を「不法滞在対策」や「審査の厳格化」にも充てるとしています。 「受益者負担」という名目でコスト負担を求めつつ、ルールを守らない外国人には厳しく対処するという姿勢の表れとも取れます。
手数料が高額になったからこそ、「絶対に一度で許可を取りたい(不許可になって再申請の手間やコストをかけたくない)」というプレッシャーはこれまで以上に強くなるでしょう。申請書類の正確性や、立証資料の準備がいっそう重要になってきます。
今できる準備は?
実施目標の「2026年度」までは、まだ少し時間があります。今からできる対策を整理しておきましょう。
永住申請の検討
現在、永住権の要件を満たしている(またはもうすぐ満たす)方は、値上げ前の申請を強くおすすめします。ただし、前述の通り審査期間が長引く可能性があるため、余裕を持ったスケジュールが必要です。
企業の予算見直し
外国人社員の手数料を会社負担にしている企業様は、来期以降の予算策定において、コスト増を織り込んでおく必要があります。場合によっては、社内規定(負担範囲)の見直しも検討が必要かもしれません
情報収集を怠らない
今回の方針は「検討段階」であり、国会での審議を経て正式決定されます。金額や時期の詳細が変わる可能性もあるため、最新の入管法改正情報を常にチェックしましょう。
まとめ
今回のニュースは、日本で暮らす外国人の方々にとって非常に大きなインパクトを与えるものです。 最後に、記事のポイントを振り返ります。
- 更新手数料が3万〜4万円、永住許可は10万円以上になる可能性がある。
- 政府は2026年度からの実施を目指し、来年の国会で法改正を予定。
- 「高額な手数料を払ったのに不許可」というリスクを避けるため、申請の確実性がより重要になる。
- 要件を満たす方は、値上げ前の「永住権申請」を急ぐべき。
「失敗できない申請」だからこそ、プロのサポートを
手数料が数万円〜10万円単位になれば、ご自身で申請して不許可になった場合の金銭的・精神的ダメージは計り知れません。「とりあえず自分でやってみて、ダメなら専門家に」というやり方が、今後は大きなリスクになります。
だからこそ、「最初から確実に許可を取りに行く」ための準備がこれまで以上に重要です。
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