相続手続きはどっちに頼む?行政書士と司法書士に依頼できることの違い

相続手続きはどっちに頼む?行政書士と司法書士に依頼できることの違い
この記事の監修者

佐藤 秀樹

行政書士佐藤秀樹事務所 代表。
行政書士として30年以上の経験を持ち、法人設立、相続、建設業許可などの分野に精通。
お客様の未来を、「誠意」と「情熱」でサポートします。

相続手続きは多岐にわたり、相続を扱う専門家も税理士・弁護士・司法書士・行政書士など複数の業種があります。特に行政書士と司法書士は、名前も似ていて違いがよくわからない方も多いことでしょう。

行政書士と司法書士はどちらも相続に関連する業務を扱っていますが、それぞれ得意分野が異なるため、依頼したい内容によってどちらに頼んだ方がよいかは変わります。本記事では、相続について行政書士と司法書士に依頼できることの違いを詳しく解説します。

目次

依頼内容によって適切な相談先が異なる

相続手続きを進めるうえで、依頼内容に応じて適切な専門家を選ぶことが大切です。行政書士と司法書士は、それぞれ異なる業務に強みがあります。

行政書士は遺産分割協議書の作成や相続財産の調査などに長けています。一方、司法書士は不動産登記や家庭裁判所へ提出する書類作成を専門としており、相続登記が必要な場合に活躍します。依頼内容に応じた専門家を選ぶことが、相続手続きをスムーズに進めるためのポイントです。

相続における行政書士と司法書士の違い

行政書士と司法書士の業務には具体的にどのような違いがあるのでしょうか。司法書士は登記というイメージがある方でも、行政書士の業務はピンとこないかもしれません。相続の分野では、行政書士も司法書士も共通してできる業務がある一方で、得意分野には明確な差があります。それぞれに頼めることや得意なことを詳しく見ていきましょう。

行政書士とは?相続で頼めること・得意なこと

行政書士は、官公署(各省庁、自治体、警察署、保健所等)へ提出する書類の作成や提出を行う専門家です。相続については、主に相続人調査や相続財産調査、遺産分割協議書の作成などを担当します。相続が発生したあとはもちろん、遺言などの生前対策にも対応できます。また、預貯金の払戻し請求や自動車の移転登録なども行政書士の業務範囲です。

相続人どうしでトラブルがなく、手続きに必要な書類作成や調査をスムーズに進めたい場合は行政書士に依頼するのがおすすめです。行政書士は業務の範囲が非常に広いので、いくつかの手続きを専門的に行っているケースが多いため、相続業務の実績がある行政書士に相談するとよいでしょう。以下では、行政書士に依頼できる業務を解説します。

相続人調査

相続人調査とは、亡くなった方の遺産を相続する権利のある相続人を確定する手続きです。相続人が誰であるかを把握することは、相続の開始後に必要な全ての手続き(遺産分割協議書の作成、相続登記など)を行うための最初のステップです。

一緒に暮らしている家族でも法的には相続人でなかったり、逆に会ったこともない親戚が相続人だったりすることも珍しくありません。相続人が確定していない状態で遺産分割を進めてしまうと、あとからほかの相続人が名乗り出て、遺産分割が無効になる可能性があります。そのため、相続人調査を正確に行い、相続人全員を把握することが非常に重要です。

行政書士は、相続人を特定するために被相続人の出生から死亡に至るまでの戸籍謄本を集め、系譜をたどって相続人を確定します。相続人を確実に特定し、後の手続きを円滑に進めるための大切な準備です。

相続財産の調査

相続財産の全容を把握せずに遺産分割を行うと、財産を公平に分けることができません。また、遺産分割協議の際に、どの財産を誰が受け取るかを決定するためには、まずその全体像を把握することが不可欠です。具体的には、不動産、預貯金、保険金、動産(車、貴金属など)など、亡くなった方のあらゆる財産を調査します。

行政書士は、相続財産に関する調査を行い、必要な書類(たとえば、銀行の預金残高証明書、不動産の登記事項証明書など)を取り寄せます。また、遺産分割協議書に記載すべき財産目録を作成し、遺産分割協議を進めるための資料を整えます。

遺産分割協議書の作成

遺産分割協議書は、相続人全員が遺産をどう分けるかを決めた内容を文書化したものです。遺産分割協議書がないと、相続財産の名義変更などの手続きができません。相続人どうしの話し合いが円満に進んだとしても、きちんと書面に残すことで後々のトラブルを防げます。


行政書士は、相続人全員の意見を聞いて遺産分割協議書を作成します。協議書には、相続財産をどのように分けるか、誰がどの財産を相続するかを明確に記載し、相続人全員が署名押印します。相続人どうしが遠方に住んでいて一堂に会するのが難しい場合は、行政書士が連絡役を担うことも可能です。

預貯金の払戻し・名義変更

亡くなった方の口座は、銀行が亡くなったことを知った時点で凍結され、取引ができなくなります。凍結を解除するには、遺産分割の手続きが完了したあとに名義変更の手続きが必要です。

葬儀費用や医療費などの支払いのために、遺産分割の手続きの完了を待たずに預貯金を引き出したい場合は、「相続が開始した時点の預貯金額×1/3×払戻しを行う相続人の法定相続分」で求められる金額を上限として、相続人のうちのひとりからでも払戻し請求ができます。

行政書士は、預貯金の名義変更も払戻し請求も対応可能です。作成した遺産分割協議書のほか、相続人全員の印鑑証明書や金融機関に提出する届出書などを用意し、金融機関で手続きを行います。

自動車移転登録

相続財産に自動車がある場合は、運輸支局または軽自動車検査協会で名義変更の手続きが必要です。バイクや市区町村亡くなった方の名義のままでは、車両を売却したり、保険を更新したりできません。

行政書士は自動車移転登録(自動車の名義変更)の手続きを代行できます。最寄りの運輸支局まで距離があるケースも多いので、書類を提出しにいくのが面倒な場合は行政書士に依頼するのも手です。

司法書士とは?相続で頼めること・得意なこと

司法書士のもっとも主要な業務は登記申請です。相続の領域では、不動産の相続登記(名義変更)がメインです。亡くなった方が法人の役員だった場合は、役員変更などの商業登記にも対応できます。登記と比べると利用する方は少ないですが、自筆証書遺言の検認手続きや相続放棄の申述など、家庭裁判所に提出する書類の作成・提出も司法書士に依頼できる業務です。ひとつずつ詳しく解説します。

不動産の名義変更(相続登記)

相続登記(不動産の名義変更)は、相続において重要な手続きのひとつです。2024年4月から相続登記が義務化されたことで関心をもった方も多いでしょう。相続登記を行わないと、過料のペナルティを受ける可能性があるだけではありません。亡くなった方の名義のままにしていると、相続人に所有権があることが明確でないため、不動産を処分できません。また、手続きをしないまま次の相続が発生してしまうと、どんどん関係者が増えて手続きが煩雑になるおそれもあります。

司法書士は、登記申請書の作成や必要書類の収集を行い、法務局に登記申請します。相続登記の申請は、被相続人や相続人の戸籍謄本、印鑑証明書、固定資産評価証明書など添付書類がとても多いので、書類の収集から全て任せることで手間がぐっと減ります。

自筆証書遺言の検認手続き

自筆証書遺言とは、その名のとおり被相続人が自分で書いた遺言書です。自宅などで自筆証書遺言を発見した場合、封がされていれば勝手に開封してはいけません。相続人立会いのもと家庭裁判所で開封し、相続人に内容を知らせます。これを自筆証書遺言の検認手続きといい、遺言の偽造や変造を防ぐことが大きな目的です。検認手続きを受けていない遺言書は、相続の手続きで使用できません。

司法書士は、家庭裁判所へ提出する書類の作成・提出や、裁判所との連絡調整を代行します。検認期日には申立人である相続人本人が家庭裁判所に出向きます。検認手続きでは遺言書が有効であるかは確認しないため、検認手続きを受けたものの実務上は使えない遺言書だったというケースもあります。検認を受けたら、遺言書を司法書士に確認してもらい、その後の手続きのアドバイスをもらうとよいでしょう。

相続放棄の申述

相続放棄は、相続人が遺産をいっさい相続したくない場合に行う手続きです。借金が多い場合など相続人がその責任を負いたくない場合に選ばれます。相続放棄をすると、初めから相続人でなかったことになり、遺産分割は相続放棄した方を除く相続人で行います。

相続放棄の期限は、「自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内」と定められています。少し難しい言い回しですが、亡くなったことを当日に知ったのであれば、被相続人が亡くなってから3ヵ月以内です。相続放棄をしなければ、被相続人の財産を全て相続することになるので、マイナスの財産が多い場合は負債も抱えることになってしまいます。

司法書士は戸籍の収集や家庭裁判所に提出する相続放棄申述書の作成・提出を代行します。忙しくてなかなか時間がとれない方は、司法書士に依頼して確実に手続きを終えるのがよいでしょう。

行政書士と司法書士の両方が行える手続きもある

行政書士と司法書士の両方が行える手続きとして、相続人調査や相続財産調査、遺産分割協議書の作成などが挙げられます。

【一覧表】行政書士・司法書士 どっちに頼む?業務範囲と費用の違い

行政書士と司法書士の業務範囲と費用の相場は以下のとおりです。同じ業務でも、行政書士に依頼するほうが費用が安い傾向にあります。実際にかかる費用は事務所によって異なるため、依頼する行政書士や司法書士に確認しましょう。

手続き内容行政書士費用相場(行政書士)司法書士費用相場(司法書士)
相続人調査3万~7万円5万~10万円
相続財産調査5万~10万円7万~15万円
遺産分割協議書の作成5万~10万円7万~15万円
預貯金の払戻し・名義変更3万~8万円△(書類作成サポートのみ)2万~5万円
自動車移転登録1万~3万円×
不動産の名義変更(相続登記)×5万~10万円+登録免許税
自筆証書遺言の検認×〇(家庭裁判所への申立て代行)5万~10万円
相続放棄の申述×〇(申述書類の作成と提出代行)3万~7万円

【要注意】行政書士・司法書士に依頼できない相続手続き

行政書士や司法書士だけでは全ての相続手続きを完了できない場合もあります。相続税の申告をする場合は税理士の、相続人間のトラブルなど紛争が生じている場合は弁護士のサポートが必要です。

行政書士や司法書士に依頼したあとでほかの専門家へ相談や依頼をする必要が出てきた場合は、提携している税理士や弁護士を紹介してもらえる可能性があります。ワンストップで手続きが行える事務所なら、複数の専門家をたらい回しになる心配はありません。ただし、相続の手続きをスタートする時点で相続税申告や紛争解決の必要性が明らかな場合は、最初の相談先を税理士や弁護士にするという選択肢もあります。

相続税の申告は税理士へ

税金についての書類作成や提出代行は、行政書士や司法書士では行うことができません。また、税金に関する相談をすることもできません。これらの業務は税理士の専門領域です。相続税の申告が必要かどうかの確認や節税の相談、申告書の作成・提出は税理士に依頼しましょう。

紛争解決は弁護士へ

遺産分割について相続人どうし折り合いがつかない場合や、遺言の内容に不満があり無効を主張したい場合など、法律上の紛争がある場合は、行政書士や司法書士では対応できません。当事者に代わって交渉したり、裁判手続きの代行を代行したりできるのは弁護士だけです。相続人間で争いがある場合は書類作成や手続きを進めることができないため、まずは弁護士に相談するのが解決の近道でしょう。

【失敗しない】相続に強い専門家の選び方

相続手続きは専門的な知識が必要なうえに、スムーズに進めるためには適切な専門家を選ぶことが重要です。しかし、「行政書士」「司法書士」「税理士」「弁護士」など、さまざまな士業が関わるため、どの専門家を選べばよいのか迷う方も多いでしょう。ここでは、相続に強い専門家を選ぶ際のポイントを詳しく解説します。

相続に関する実績・経験が豊富か

相続手続きはひとつとして同じケースがないため、実績や経験が豊富な専門家を選ぶことが重要です。相続登記や遺産分割協議書の作成など、一見シンプルに思える手続きでも、状況によっては複雑な対応が求められることがあります。実績がある専門家ほど、過去の事例に基づいた適切なアドバイスやスムーズな手続きが期待できます。

実績を確認する方法としては、専門家のホームページやSNSなどで、相続を得意としているか、過去の相談件数や事例を公開しているかをチェックするとよいでしょう。ご自身と似たようなケースに対応した実績が確認できれば、なお安心できます。無料相談を利用して、具体的な対応実績を質問してみるのもよいでしょう。

料金体系が明確で、見積もりが丁寧か

相続手続きの料金は専門家によって異なるため、明確な料金体系を提示している事務所を選ぶことが大切です。費用が不透明な場合、手続きを進める中で追加費用が発生し、最終的に思いもよらない高額な請求となるリスクがあるため、事前にしっかり確認しましょう。

料金体系が明確かどうかを確認するポイントはいくつかあります。まずは、基本料金に何が含まれているのかを把握することです。たとえば「相続登記○○円」と書かれていても、戸籍謄本の取得や遺産分割協議書の作成など、登記申請に付随する業務は追加費用が発生するケースがあります。見積もりを出してもらって不透明な部分があれば、何にかかる費用かを確認しておくと安心です。費用面で不安があれば、トラブルを避けるためにも複数の専門家から見積もりを取り、比較しましょう。

親身になって相談に乗ってくれるか

親身になって相談に乗ってくれるのは相続の専門家として当然、と言いたいところですが、実際に相談してみるとあまり相性がよろしくなかったというケースもあります。たとえば、相続が初めてで何もわからないから相談しているのに、説明の際に専門用語を多用されてしまうと、質問もしづらくなり、親身になって相談に乗ってもらえているとは感じられないでしょう。

実績が豊富な専門家でも、必ずしもあなたにとって相談しやすい人ではないかもしれません。会って話してみて、ご自身が「この人に任せたい」と思えるかは重要な判断基準です。

他の専門家との連携体制があるか

行政書士も司法書士も、相続税申告や法的トラブルの解決など対応できない業務があります。相談の中で自分が対応できない手続きの必要が生じた場合でも、税理士や弁護士などほかの専門家との連携体制があれば、相談者自身が手続きごとに専門家を探さずにすみます。

ひとつの事務所に複数の専門家が在籍していてワンストップでサービスを提供している場合もありますが、個人事務所でも専門家同士のアライアンスがあれば、同様にワンストップで手続きを完結することは可能です。

事務所の評判・口コミが良いか

実際に依頼した方からの評価も気になるところです。事務所のホームページに「お客様の声」として口コミが載っている場合がありますが、当然のことながら基本的にはプラスの評価ばかりです。住んでいる地域の専門家であれば、知り合いなどから直接評判を聞けるかもしれません。口コミサイトなどで依頼した方の生の声を確認する方法もあります。

もちろん、公開されている口コミが専門家に対する評価の全てではありませんが、相談先を決める材料のひとつとして参考にするとよいでしょう。

【まとめ】あなたに最適な専門家を見つけて、スムーズな相続手続きを!

行政書士と司法書士は名前こそ似ていますが、それぞれ異なる得意分野をもつ専門家です。相続について相談する場合は、相談したい内容や依頼したい業務に応じて相談先を決めることが大切です。

当事務所(行政書士佐藤秀樹事務所)では、相続に強い行政書士があなたのお悩みを丁寧にお伺いし、最適なプランをご提案します。司法書士・税理士・弁護士など他の専門家と提携しており、当事務所が各専門家とのやりとりの窓口となって手続きをスムーズに進められるのが当事務所の強みです。

初回相談は無料で承っておりますので、お気軽にご相談ください。

編集者

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次