建設業の事業承継とは?手続きの流れやよくあるトラブル事例などを紹介!

建設業の事業承継とは?手続きの流れやよくあるトラブル事例などを紹介!

建設業を長く安定して続けていくためには、「事業承継」の準備が欠かせません。

しかし、いつから取り組むべきか、どの方法で承継すればよいのか、さらには建設業許可をどのように引き継ぐのかなど、正しい知識を持たずに進めると、思わぬトラブルに発展してしまうことがあります。

本記事では、建設業の事業承継とは何か、代表的な承継方法の違い、承継に必要な手続きの流れ、さらに実際に起こりやすいトラブルとその回避策まで、わかりやすく解説します。

最後まで読むことで、建設業の事業承継をスムーズかつ確実に進めるために必要なポイントが明確になり、後継者育成や許可の承継手続きなど、将来に向けた準備を自信をもって進められるようになるでしょう。

目次

建設業の事業承継とは

建設業の事業承継とは、経営者の交代に伴い、会社の経営権・資産・人材・取引関係・建設業許可など、事業の中核となる要素を次世代へ引き継ぐプロセスのことです。

建設業は許可制度や技術者要件など専門性が高く、承継時に満たすべき法的条件も多いため、一般的な事業承継よりも準備が複雑になりやすい点が特徴です。

また、得意先や協力業者との関係維持、技能者の確保、資金繰りの調整など、現場・管理部門ともに影響が大きいため、計画的な承継が欠かせません。

建設業許可は継承できる?

建設業許可は、2020年10月1日の建設業法改正によって「事前の認可を受ければ承継できる」制度へ大きく変わりました。

以前は、事業譲渡・合併・会社分割・相続などが発生した際、承継先は許可を新規取得するしかなく、その審査期間中は無許可状態となり工事を受注できないリスクがありました。

しかし現在は、承継予定日の2か月前~25日前の間に「事業承継認可申請」を行い、認可を受けることで許可番号も含めて継続して引き継ぐことが可能です。

建設業の事業承継をする3つの方法

建設業の事業承継には、大きく分けて「親族内承継」「親族外承継」「M&A」の3つの選択肢があります。

どの方法を選ぶかによって準備の内容や必要な期間、関係者との調整方法が大きく変わるため、自社に合った承継スタイルを早めに検討するのが重要です。

それぞれの特徴やメリットを理解しながら、最適な方法を選んでいきましょう。

親族内承継

親族内承継は、経営者の子どもや兄弟など、血縁関係にある人物へ会社を引き継ぐ方法です。

建設業では、長年の経験や信用が重視されるため、親族内で後継者を育てて引き継ぐことは比較的スムーズに進みやすいと言えます。

社内外の利害関係者も、親族への承継であれば心理的な抵抗が少なく、取引先や金融機関からの信頼が継続しやすい点もメリットです。

また、経営理念や社風が大きく変わらないため、従業員の安心にもつながります。

一方で、親族内に適任者がいない、あるいは後継者が事業に興味を持たないケースも多く、事前に教育や実務経験を積ませる準備が欠かせません。

さらに、親族間の関係性によっては、承継を巡るトラブルが起こる可能性もあるため、早い段階から計画的に体制づくりを進めることが重要です。

親族外承継

親族外承継は、血縁関係のない役員や従業員、あるいは外部から招いたプロ経営者などに会社を引き継ぐ方法です。

親族に適した後継者がいない場合や、より専門的な知識をもつ人物に会社を任せたい場合によく選ばれます。

建設業は専門性の高い業務が多いため、現場を理解している幹部社員を後継者にするケースは特に多く、社内の文化や業務フローを引き継ぎながらスムーズに経営を承継できます。

メリットとして、親族内承継と比べて候補者の選択肢が広がるため、より適切な人材を後継者に据えられる点が挙げられます。

ただし、株式の取得資金や経営権の移動をどのように進めるかといった課題があり、金融支援や制度を活用する準備が必要です。

また、従業員に新体制への理解を促すしくみづくりや、取引先への丁寧な説明など、社内外の調整も慎重に進める必要があります。

M&A

M&Aによる事業承継は、会社を第三者に売却し、経営や事業を引き継いでもらう方法です。

建設業は人材不足や技術継承の問題を抱える企業が多いため、近年は同業者や周辺業種による買収ニーズが高まっています。

M&Aの最大のメリットは、後継者がいない企業でも事業を存続できる点です。

売却益が得られるため、経営者の老後資金にもつながり、従業員の雇用や取引関係を継続できる可能性が高まります。

また、買い手企業の資金力やノウハウを活かすことで、これまでよりも大きな事業展開が期待できるケースもあります。

一方で、買い手側の方針によっては組織体制や働き方が変わる可能性があるため、従業員への十分な説明と理解が不可欠です。交渉には専門的な知識が必要なため、専門家と連携しながら適正な条件で進めることが重要です。

建設業の事業承継をする際の主な手続きの流れ

事業承継を円滑に進めるためには、明確な手順に沿って準備を進めることが欠かせません。

建設業は特に、許可制度や人員要件などの確認事項が多いため、早期の計画立案と段階的な実行が必要です。

ここでは、承継の初期段階から完了までの標準的な流れを順番に解説していきます。

① 事業承継の基本方針を決定する

建設業の事業承継を進める最初のステップは、自社の将来像や経営者の希望を踏まえた基本方針の決定です。

後継者に何を引き継いでほしいのか、事業規模を維持するか拡大を目指すか、経営理念をどのように残すかといった方向性を明確にします。

さらに、親族内承継・親族外承継・M&Aなど、どの選択肢が自社に適しているかを検討するのも重要です。

この段階では、長期的な視点で会社の課題やリスクを確認し、経営者自身の引退後の生活設計も含めて整理します。

基本方針を固めておくことで、あとの工程で迷いが少なくなり、社内外の関係者にも説明しやすくなるでしょう。

また、銀行や取引先からの信頼を維持するためにも、早い段階で承継方針を定めておくことが、円滑な事業承継につながります。

② 後継者の選定と育成をおこなう

基本方針が固まったら、次に後継者の候補を選定します。

建設業は専門性が高く、経営だけでなく現場理解も求められるため、適任者の選定は非常に重要です。

親族か社内の幹部社員か、もしくは外部から招くかを判断し、候補者の経験や適性を見極めます。

選定後は、経営スキル・財務知識・現場管理などを計画的に学ばせ、段階的に権限委譲を進めます。

また、主要取引先や金融機関へ徐々に顔合わせをおこなうことで、後継者への信頼を醸成しやすくなるでしょう。

育成には数年単位の期間が必要となるため、早めの着手が欠かせません。育成不足のまま承継すると、経営の停滞や従業員の不安につながるため、計画的な育成プログラムを設計するのが大切です。

③ 会社の現状把握と課題整理をおこなう

後継者選定と並行して、会社の現状を客観的に把握し、承継前に解決すべき課題を洗い出します。

具体的には、財務状況、保有資産、負債、受注状況、施工体制、人材配置など、多角的に現状分析を行います。

特に建設業では、資格保有の状況、監理技術者の配置、協力会社との関係など、業務継続に直結する要素の確認が必須です。

また、経営者個人に依存している業務がないか、新規受注のしくみが属人的になっていないかなど、経営リスクの棚卸しも重要です。

課題抽出後は、改善策を具体的に検討し、承継までにどこまで整備するかを整理します。

これらの作業をおこなうことで、後継者が引き継ぎやすい状態になり、スムーズに承継を進められます。

④ 承継方法の決定と対策の実施

現状把握ができたら、親族内承継、親族外承継、M&Aのいずれの方法で承継するかを最終的に決定します。

方法によって必要な準備や期間、関係者との調整内容は大きく異なるため、自社の状況に合わせた選択が必要です。

決定後は、株式の移転方法、役員変更の手順、相続や贈与の税務対策、金融機関との調整など、具体的な施策を進めます。

M&Aを選ぶ場合は、専門仲介会社と連携して交渉を進め、最適な相手を見つけることが求められます。また、従業員への説明や取引先とのコミュニケーションを丁寧におこなうことで、承継に伴う不安を最小限に抑えることができます。

手続きを計画的に進めることで、トラブルを避けながら承継体制を整えることができます。

⑤ 建設業許可の承継手続き

建設業では、事業承継の際に建設業許可の引き継ぎ手続きが非常に重要です。

許可は会社の信用そのものでもあるため、承継後も確実に継続できるよう適切な手続きをおこなう必要があります。

手続き内容は、承継方法によって異なります。以下のパターンに沿って準備を進めることで、事業停止のリスクを防ぐことができます。

① 代表者(経営業務管理責任者)の変更による承継 

代表者が交代するだけの場合、通常は「変更届」の提出で対応できます。 

ただし、新代表者が経営業務管理責任者の要件を満たしているかがポイントで、要件を満たさない場合は事前に役員追加・経験証明の整備などが必要です。

専任技術者の要件はそのまま引き継がれるため、担当者が変更されない場合は追加手続きは不要です。

② 法人格は同じまま事業承継する場合(株式譲渡など) 

会社の法人格が続く株式譲渡方式の事業承継では、許可自体はそのまま引き継がれます。 

ただし、役員変更・経営業務管理責任者の変更・専任技術者の配置状況などに変更があれば、変更届の提出が必要です。 

許可番号や許可有効期間は変わらないため、必要書類の準備や会社体制の見直しを計画的におこなうことが重要です。

③ 法人格が変わる場合の承継

法人格が変わる事業承継の場合は、「建設業許可の承継申請(事業承継認可申請)」が必要です。

 典型例としては以下のケースがあります。

  • 個人事業主から法人化(法人成り) 
  • 会社合併(吸収合併・新設合併) 
  • 会社分割(吸収分割・新設分割) 

この場合、経営業務管理責任者・専任技術者の要件を新法人が満たしているかが必須条件となるため、事前確認と人材確保をしっかりおこないましょう。

⑥ 経営権・資産の正式な移転と承継完了

最終段階では、株式や事業資産、役員職、代表権などを正式に移転し、後継者へ経営を引き継ぎます。

株式譲渡契約、贈与契約、役員変更登記などの法的手続きが中心となり、税務面の対応もセットで必要です。

建設業では、取引先や協力会社との関係維持が業務継続に直結するため、承継後に経営体制が変わったことを丁寧に説明し、信頼関係を維持する取り組みも重要です。

また、承継直後は新体制が安定して運営できるよう、旧経営者が一定期間サポートするケースも多く見られます。

後継者が現場と経営の両面を理解しながら運営できるよう、体制面のフォローをおこなうことで、承継の定着がスムーズに進みます。

建設業事業承継を成功させるためのポイント

建設業の事業承継を確実に成功させるには、後継者の育成や許可要件の確認、経営情報の整理など、計画的な準備が不可欠です。

特に建設業は、事業の継続に必要な資格・人材・信用が密接に関わるため、どの段階で何を優先すべきかを把握しておくことが大きな鍵です。

以下では、承継を円滑に進めるための重要なポイントを紹介します。

早期に後継者を選定し、時間をかけて育成する

建設業の事業承継では、後継者の能力や経験が事業継続の成否を大きく左右します。

そのため、できるだけ早い段階で候補者を選び、計画的に育成する必要があります。

建設業は専門性が高く、現場経験、資格、マネジメント力、取引先との関係構築など、多面的なスキルが求められます。

短期間で習得できるものではなく、数年単位での育成が前提です。

また、後継者を早めに現場や経営会議へ参加させることで、実務理解が進むだけでなく、従業員や取引先からの信頼も徐々に得られます。

後継者が不在のまま経営者が高齢化すると、急な承継で事業が不安定になるリスクもあるため、早期の選定と育成は事業の安定継続に直結します。

計画的な育成プランを作り、段階的に権限委譲を進めることが成功の鍵です。

建設業許可の承継条件を事前に確認しておく

建設業の事業承継において、建設業許可の承継は非常に重要なポイントです。

許可が継続できなければ事業自体が停止する恐れがあるため、後継者が許可要件を満たしているか、または満たせるように事前準備を進める必要があります。

経営業務管理責任者の要件を満たしているか、専任技術者の資格や実務経験が十分かといった項目を細かく確認します。

要件を満たさない場合は、後継者の資格取得や新たな技術者の採用など、数年単位の対策が必要になることもあります。

また、承継方法によって必要書類や手続きが異なるため、組織変更や代表者変更がある場合は早めに準備をおこなうことが大切です。

許可更新時期との調整も重要で、スケジュール管理を慎重におこなうことで、スムーズな承継を実現できます。

経営・財務・人材の「見える化」をおこなう

建設業の事業承継を成功させるためには、会社の現状を後継者や関係者が正しく把握できるよう、経営状況、財務内容、人材配置などを見える化しましょう。

建設業は案件ごとの収支管理、施工体制、協力会社との関係など、情報が複雑になりやすいため、整理されていないと承継後に混乱が起きやすいです。

現場経験に依存している業務や経営者しか把握していない取引先情報などがある場合は、承継前に文書化やシステム化を進めることが必要です。

また、財務状況を透明にしておくことで、後継者が経営判断を行いやすくなり、金融機関との関係維持にも役立ちます。

組織の状態を正確に把握し、改善すべき課題を明確にしておくことが、承継後の安定運営につながります。

取引先・従業員への信頼関係を丁寧に引き継ぐ

建設業では、取引先や協力会社との信用、そして従業員との関係性が事業の継続に直結します。

そのため、事業承継を進める際には、現経営者が築いてきた信頼を後継者へ丁寧に引き継ぐことが非常に重要です。

急に後継者へバトンタッチすると不信感や不安を生む可能性があるため、段階的に顔合わせや現場同行の機会を設け、関係性を構築していく必要があります。

また、従業員に対しては、承継後の方針や役割を丁寧に説明し、不安を取り除くコミュニケーションが不可欠です。協力会社との信頼関係が弱まると受注環境に影響が出るため、承継プロセスをオープンにしながら、相互理解を深めていくことが大切です。

専門家に早めに相談する

建設業の事業承継は、法務、税務、許可制度、組織運営など、多岐にわたる専門知識が求められます。

経営者だけで判断しようとすると見落としが生じやすいため、税理士、社労士、司法書士、M&A仲介会社などの専門家に早めに相談しましょう。

特に株式移転や相続対策、建設業許可の承継手続きは複雑であり、早期に体制を整えることでスムーズな承継が可能です。

専門家のサポートを受けることで、最適な承継方法の選定、手続きの抜け漏れ防止、節税対策などが進めやすいです。

また、第三者の視点から会社の課題を整理してもらえるため、後継者育成や組織改善にも役立ちます。早めの相談が、安心して承継を進めるための第一歩となるでしょう。

おすすめの相談窓口は?

当事務所(行政書士佐藤秀樹事務所)は、建設業の事業承継を安心して進めたい方に最適な相談窓口です。

弁護士・税理士・公認会計士・社労士・司法書士と連携したワンストップ体制により、許可承継・相続対策・組織再編など幅広い課題を一括サポート。法人設立2,000件以上の豊富な実績を活かし、最適な承継方法の提案から手続き代行まで丁寧に対応します。

建設業の事業承継でよくあるトラブル事例と回避方法

事業承継には多くのメリットがある一方で、準備不足や手続きミスによってトラブルが生じるケースも少なくありません。

建設業では、許可の不備や親族間の対立、従業員の離脱など、事業の存続に影響する問題が起こりやすいため、事前にリスクを理解しておくことが必要です。

ここでは、実際に起こりがちなトラブルとその防止策を紹介します。

設業許可の承継ができず営業が止まる

建設業の事業承継でもっとも多いトラブルのひとつが、建設業許可を適切に承継できず、事業が一時的に停止してしまうケースです。

許可には経営業務管理責任者や専任技術者の要件があり、後継者や新体制がこれらの条件を満たしていないと、継続して工事を受注できません。

特に、経営者が急な事情で引退した場合や、承継準備が不十分なまま手続きを進めた企業では、許可の不備が原因で工事がストップし、取引先からの信用低下にもつながります。

このようなトラブルを避けるためには、早期に後継者の資格状況を確認し、必要に応じて資格取得や人材確保の計画を立てておくことが重要です。

また、承継方法によって提出書類や手続き内容が異なるため、事前に専門家へ相談し、期限管理を徹底すればリスクを最小限に抑えることができます。

親族間での株式・資産の分配をめぐる争い

親族内承継では、株式や事業用資産、会社の評価額をめぐって親族間のトラブルが起こりやすいです。

特に建設業は長年の設備投資や不動産保有があるケースも多く、会社の価値が高いほど相続や贈与の負担が問題化しやすいです。

後継者が明確に決まっていない、または相続人が複数いる場合は、資産分配の公平性をめぐって意見が対立し、承継が長引いてしまうこともあります。

また、経営者が生前に資産整理を行わなかった場合、急な相続発生によって混乱を招くリスクがあります。

これを防ぐためには、会社の株式構成や資産状況を早い段階で整理し、親族間で話し合いの場を設けることが不可欠です。

専門家による事業承継計画や相続対策を活用すれば、争いを防ぎながらスムーズな承継を進められます。

従業員・取引先が離れてしまう

事業承継のプロセスが不透明だったり、後継者の情報が共有されないまま交代が進んだりすると、従業員や取引先に不安が広がり、離脱につながる恐れがあります。

建設業は現場力と信頼関係が事業の基盤であり、特に協力会社とのつながりが弱まると受注体制に直接影響します。

また、従業員も、新体制の方針が見えなければ転職を検討する場合があり、技能者の流出は大きなダメージになってしまいます。

こうしたトラブルを避けるには、承継方針やスケジュールを早めに共有し、後継者を現場や会議に参加させ、信頼関係を構築するのが重要です。

税金や登記の手続き漏れによるペナルティ

事業承継では、株式の譲渡、相続、贈与、役員変更、会社の組織再編など、多くの法務・税務手続きが伴います。

これらの手続きを怠ったり、期限に遅れたりすると、追加の税負担や罰則、行政手続きの遅延が発生するリスクがあります。

特に建設業では、登記変更が遅れると許可情報との不整合が生じ、更新や変更届に支障が出ることがあります。

また、税務面では、株価評価の誤りや相続税対策不足によって、想定以上の税負担が生じ、会社や家族に大きな影響を与えることもあります。

これらのトラブルを回避するには、税理士・司法書士などの専門家と連携し、事業承継計画をもとに必要な手続きをリスト化して進めることが不可欠です。早期準備と正確な手続き管理が、余計なリスクを避けるための鍵です。

建設業の事業承継における税務対策

建設業の事業承継では、株式や事業用資産にかかる税負担が大きくなりやすく、税務面の対策は欠かせない重要な要素です。

適切な制度活用や計画的な贈与により、承継時の資金負担を大きく軽減できる場合があります。ここでは、代表的な税務対策とその活用ポイントについて解説します。

事業承継税制を活用

建設業の事業承継において、もっとも大きな負担となりやすいのが株式や事業用資産にかかる相続税・贈与税です。

これらの税負担を大幅に軽減できる制度として、事業承継税制があります。

一定の条件を満たすことで、後継者が取得する自社株式に対する相続税や贈与税の納税を猶予または実質的に免除できる制度で、資金負担を最小限に抑えた承継が可能です。

ただし、適用には事前確認や計画提出など細かな手続きが必要で、承継後にも雇用確保や株式保有などの要件が課せられるため、制度を正しく理解したうえで利用する必要があります。

建設業のように設備投資が多く会社評価が高くなりがちな業種では、税制の活用によるメリットは特に大きく、早期に専門家へ相談すればスムーズな適用が可能です。

生前贈与は計画的に行い贈与税を抑える

生前贈与は、後継者に株式や資産を段階的に移すことで、負担を分散しながら贈与税を抑える効果があります。

建設業は保有資産が多く企業価値が高くなりやすいため、一度にまとめて贈与すると高額な贈与税が発生する可能性があります。

そこで、毎年の非課税枠を活用しながら計画的に贈与をおこなうことで、税金を大幅に抑えられます。また、相続発生前に贈与しておくことで、株式評価の上昇リスクを避けることにもつながります。

ただし、生前贈与は手続きや記録管理がしっかりしていないと否認される恐れがあるため、正しい方法で贈与契約書を作成するなどの対応が必要です。

株式や事業用資産の評価を下げて相続税を軽減する

相続税は、株式や事業用資産の評価額によって大きく変動します。

そのため、承継前に会社の評価額を適正かつ可能な範囲で低く抑えることで、税負担を軽減できる可能性があります。

たとえば、不必要な資産を処分する、借入を活用して純資産価値を調整する、役員報酬の見直しをおこなうなど、適法な対策によって評価額を下げることができます。

建設業の場合、機械や車両、不動産など高額な資産を保有しているケースが多く、評価額が高くなりやすいため、事前の整理が特に重要です。

さらに、利益の出し方や内部留保の扱いによっても株価に影響が出るため、税理士と連携しながら計画的に対策をおこなう必要があります。評価額の適正化は、後継者の負担を軽減する大切な取り組みです。

支援制度・補助金を活用する

建設業の事業承継には多くの費用がかかり、専門家への依頼費用や承継後の体制整備、設備更新なども必要です。

こうした負担を軽減するために、中小企業庁や自治体が実施している支援制度や補助金を活用するのがおすすめです。

事業承継・引継ぎ補助金などは、承継計画の策定費用、専門家依頼費用、M&Aに関する費用などを補助するもので、経営者の負担を大幅に抑えられます。

また、建設業では省力化設備の導入やICT活用などを支援する補助金も多く、承継後の企業力強化に役立ちます。

制度は年度ごとに内容が変わるため、最新の情報を確認しながら活用するのが重要です。

支援策を上手に組み合わせることで、負担を抑えつつスムーズに継承できます。

まとめ

建設業の事業承継は、後継者育成、許可の継承、税務対策など多くの準備が求められますが、早期の計画と専門家の支援によってスムーズに進めることができます。

事業の継続と発展のためにも、適切な承継方法の選択と計画的な実行が重要です。自社の状況を見極めながら、最適な承継プランを構築していきましょう。

編集者

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