【簡単解説】建設業法とは?対象や許可、契約などについてわかりやすく解説!

建設業法とは?対象や許可、契約などについてわかりやすく解説!

「建設業法にはどのようなルールがあるの?」
「建設業法許可の対象は?」

このような疑問をもってこのページにたどり着いた方も多いのではないでしょうか。
建設業法は、建設業を適正かつ安全におこなうために定められた法律で、許可の取得や契約のルール、安全管理など、事業を始める前に知っておくべき重要な決まりが数多くあります。

実は、建設業法の内容を正しく理解していないと、「無許可営業で罰則を受ける」「工事契約が無効になる」「下請業者とのトラブルが起こる」といった深刻なリスクにつながることも少なくありません。

そこで本記事では、建設業法の基本的なしくみや対象範囲、許可の取り方、工事契約や技術者配置のルール、そして違反した場合の罰則まで、初めての方にもわかりやすく解説していきます。

「建設業法の何を知らずに進めると危ないのか?」を整理する手がかりとして、ぜひ最後までご覧ください。

目次

建設業法とは?概要をわかりやすく解説

建設業法は、建設業界でトラブルなく安心して工事を進めるためのルールを定めた法律です。

建設業を始めるには国や都道府県の「許可」が必要で、しっかりした技術力や資金力があるかがチェックされます。これにより手抜き工事の防止や、依頼主の安心につながるしくみが整っています。

また、下請けとの関係や契約内容、現場管理なども規定されており、安全で質の高い建設を実現するためのルールを整えています。

建設業法の目的や背景とは?

建設業法はどのような背景でなぜ制定されたのでしょうか。

結論、建設業法が制定された背景には、戦後の建設ラッシュによるトラブルの多発があり、こうした混乱を防ぎ、安全で信頼性の高い建設工事をおこなうためのルールとして制定されました。

次からは、その詳しい背景と目的について解説していきます。

建設業法は戦後の建設ラッシュによるトラブルを防ぐために制定された法律

建設業法は、戦後の復興や高度経済成長によって建設工事が急増する中、無許可業者や技術力の乏しい業者が参入し、工事の質の低下や契約トラブルなどが多発したことを背景に、1949年に制定されました。

こうした状況を改善し、安全で適正な工事を確保するために、建設業者に一定の資格や財産基準を求めるルールが設けられました。

建設業法の目的は「安心・安全な工事」と「社会の利益」

建設業法の目的は、大きく分けて「安心・安全な工事の確保」と「社会全体の利益の向上」にあります。

具体的には、工事を適正におこなうために、建設業者の資質を高め、契約や施工のルールを整備し、発注者(施主)を保護するのが法律の柱となっています。

たとえば、資格のある技術者を配置する義務や、一括下請けの禁止などが盛り込まれており、これにより、ずさんな施工や不正を防ぎ、公共工事や民間工事の品質が保たれるのです。

さらに、建設業の健全な発展を促し、社会の安心・安全な暮らしの向上にもつながるよう定められています。

建設業法の対象とは?わかりやすく解説

ここでは建設業法の対象工事や対象となる会社、契約関係について詳しく解説していきます。

対象となる工事

建設業法では、「建設工事」とは土木・建築に関する幅広い工事を指し、約35種類の工種が定められています。

これらの工事は大きく以下のように分類されます。

一式工事
土木一式工事…道路・橋梁・トンネルなどの大型土木構造物
建築一式工事…ビル・住宅などの躯体工事や基礎工事

専門工事
大工工事、左官工事、とび・土工工事、コンクリート工事…躯体や仕上げの各専門工種
設備工事…電気工事、管工事、電気通信工事、機械器具設置工事 など

仕上げ・付帯工事
内装仕上工事、防水工事、塗装工事、解体工事…仕上げや改修に特化

対象外の工事は?

建設業法では多くの工事に許可が必要ですが、一定の条件下では許可が不要なケースも存在します。

たとえば、「軽微な建設工事」として、請負金額が500万円未満(建築一式工事は1500万円未満)の工事は、許可なしでおこなえます。

また、自宅の増改築など自家用の工事や、災害復旧を目的とした緊急工事も対象外となる場合があります。

さらに、農業・林業・鉱業・製造業などに直接関連する一部工事や、電気・水道事業者がみずからおこなう特別法に基づく工事も、建設業法の許可を必要としないとされています。

対象となる会社

建設業法の対象となる会社の業態は、以下のとおりです。

ゼネコン(総合建設業者)
土木・建築一式工事を元請けで一括管理。大手(大成、鹿島など)から中小まで幅広い規模がある

サブコン(専門工事業者)
電気工事、管工事、内装工事、防水工事など、特定分野の施工を専門に下請けで請け負う

ハウスメーカー・住宅メーカー
自社ブランドの住宅を企画・設計・施工し、販売からアフターサービスまで一貫して提供

リフォーム会社
既存建物の改修・修繕工事を中心に、小規模から中規模の工事を迅速に対応

地域工務店
地域密着型で、新築・増改築から小工事まで幅広く請け負い、地元顧客との信頼関係を重視

設計施工一貫会社
建築設計から施工管理まで社内で完結し、設計段階から品質・コストを統合的にコントロール

設備工事会社
給排水衛生設備、空調設備、電気通信設備など、建物の設備インフラ整備に特化

解体・産廃処理業者
老朽建築物の解体工事および発生材の運搬・処理を一括しておこなう

建設業法の対象となる業態には多様な形態があり、事業の内容に応じて適切な許可・登録が求められます。

対象となる契約関係

建設業法では、「請負契約」に基づく建設工事が対象です。

請負契約とは、ある建物や設備などを完成させることを約束し、その対価として報酬をもらう契約のことです。

たとえば、発注者と元請業者、元請と下請業者のあいだで結ばれる契約がこれにあたります。

電気工事や内装工事などの一部の工事でも、完成させる責任がある場合は建設業法の対象で、工事を引き受ける場合は、立場に関係なく法律を守って契約する必要があります。

【建設業法】建設業の許可についてわかりやすく解説

建設業を営むには、原則として「建設業の許可」が必要です。

この章では、建設業の許可について、その種類や取得条件、申請手続き、許可取得後の注意点までをわかりやすく解説します。

建設業の許可には2つの区分がある

建設業の許可には「一般建設業」と「特定建設業」の2つの区分があります。これは、工事をどのような立場で請け負うかによってわかれています。

「一般建設業」は、主に中小規模の工事や下請けとして工事をおこなう場合に必要な許可です。下請けに出す金額が少ない元請業者も、こちらに該当します。

一方で「特定建設業」は、元請として大規模な工事を受注し、下請けに出す金額が1件あたり5,000万円以上(建築一式工事では8,000万円以上)となる場合に必要な許可です。特定建設業には、財務の健全性や技術者の配置など、より厳しい基準が求められます。

どちらの許可が必要かは、業務内容や工事の規模に応じて判断するのが重要です。

許可を取得するための基準とは?

建設業の許可を取得するには、以下のような基準を満たす必要があります。

経営業務の管理責任者がいること
過去に5年以上、建設業の経営に関わった経験が必要です。

専任技術者の配置
国家資格や一定の実務経験をもつ技術者を営業所ごとに配置します。

財産的基礎があること
一般建設業:自己資本500万円以上
特定建設業:資本金2,000万円以上+自己資本4,000万円以上

誠実性があること
法令を守り、適切に業務をおこなう体制が整っている必要があります。

欠格要件に該当しないこと
破産手続き中や前科がある場合などは許可を受けられません。

これらは会社としての信頼性・技術力・経営力を証明するために設けられており、条件をクリアすれば、建設業の許可申請が可能です。

許可の申請手続き方法

建設業の許可を取得するには、所定の手続きを正確におこなう必要があります。以下に、申請の基本的な流れをわかりやすくまとめました。

申請書類の作成
定型の申請書に加え、会社の登記事項証明書、納税証明書、経営経験や技術者の証明書類などを用意します。

提出先の確認
都道府県知事許可(ひとつの都道府県内のみで営業)または国土交通大臣許可(複数の都道府県で営業)で提出先が異なります。

申請書の提出と審査
書類一式を提出し、審査を受けます。内容に不備があると補正が求められます。

許可通知の受領
審査に通れば、許可通知が届き、正式に建設業の営業ができます。

書類の不備を防ぐため、事前に専門家に相談するのも安心です。

許可を取得したあとの注意点

建設業法の許可を取得したあとにも、継続的な管理と法令遵守が重要です。

不備があると処分や更新不可となる可能性もあるため注意しましょう。
具体的な注意点は、以下のとおりです。

5年ごとに更新が必要

建設業法の許可には有効期限があり、通常5年ごとに更新が必要です。

更新手続きを怠ると、許可の効力が失われ、事業を続けることができなくなるおそれがあります。

更新の際には、初回申請と同様に必要な書類を提出し、許可基準を引き続き満たしているかどうかの確認を受ける必要があります。

会社の状況に変更があったときは届け出が必要

許可は申請時点の情報をもとに発行されるため、そのあとに会社の基本情報に変更が生じた場合は、その都度行政機関に報告しなければなりません。

具体的には、会社名や所在地、代表者の変更、役員の入れ替え、資本金の増減、さらには事業内容の変更などが届け出の対象です。

これらの変更届けは、多くの場合、変更から30日以内などの期限が定められており、期限を過ぎると行政指導や最悪の場合は許可の取消しといった不利益を被る可能性もあります。

そのため、会社内部での変化を正確に把握し、必要な届け出を確実におこなう体制を整えておくことが大切です。

【建設業法】建設工事の請負契約についてわかりやすく解説

建設工事をおこなう際には、発注者と請負業者の間で「請負契約」を交わす必要があります。

この章では、契約書に記載すべき事項や建設業法にもとづいた請負契約の基本的なルールを見ていきましょう。

契約書に必ず書くべき主要項目

建設工事の請負契約ではトラブルを未然に防ぐために必ず契約書に下記の項目を記載する必要があります。

  1. 契約当事者の情報(契約を交わす会社や個人の氏名・住所・連絡先)
  2. 工事内容の明細(工事の名称・場所・施工範囲などの具体的内容)
  3. 契約金額と内訳(総額と支払い方法・支払い時期、必要に応じて内訳)
  4. 工期(着工日と完成日、遅延時の取り扱い)
  5. 設計図書・仕様書(工事内容を示す図面や仕様書の添付・効力)
  6. 変更・追加工事の対応(工事内容が変わった場合の手続きと精算)
  7. 引渡しと検査(完成後の検査方法と引渡し条件)
  8. 瑕疵担保責任(工事の不具合に対する保証期間と修補義務)
  9. 契約解除・違約金(解除できる条件と、違反時の責任や罰則)
  10. 紛争解決方法(裁判所の管轄や調停など、トラブル時の対応方法)

以上の項目を明確に記載すれば、建設工事請負契約におけるトラブルのリスクを大きく減らすことができます。可能であれば、契約書の作成・確認時には行政書士や弁護士のアドバイスを受けるとさらに安心です。

契約変更の場合のルールとは?

建設工事の契約変更は、原則として書面での合意が必要です。

設計変更や追加工事などの理由がある場合は、内容・金額・工期の変更点を明確に記載し、事前に発注者の承認を得るようにしましょう。

変更内容は「変更契約書」や「覚書」として記録し、双方の署名・押印を行います。口頭のみのやりとりはトラブルの元となるため避けましょう。

現場代理人や監督員に関する通知が必要

建設工事を請け負う際、元請業者が現場に代理人を置くときは、その代理人がどこまで権限をもつか、また発注者が代理人の行為について意見を伝える方法をあらかじめ書面で発注者に知らせなければなりません。

同様に、発注者側が現場に監督員を配置する場合も、監督員の権限範囲と請負業者が監督員へ意見を伝える手順を、書面で請負業者に通知する必要があります。

この通知は、メールやチャットなど電子的手段でも、双方が合意していれば書面に代えて有効です。事前に役割と連絡方法を明確にすれば、工事中の意思疎通がスムーズになり、責任の所在もはっきりさせられます。

発注者がしてはいけないことが決められている

建設工事の請負契約では、発注者(依頼側)が守るべきルールとして、次の三つの禁止事項が法律で定められています。

不当に低い請負代金の禁止

まず第一に、 「不当に低い請負代金の禁止」 があります。

発注者は、施工に必要な材料費や人件費、経費の合計を下回るような極端に安い金額で契約を結んではいけません。これは、工事の質を守り、請負業者に適正な利益を確保させることで、安全かつ確実な施工を担保するための規定です。

不当な使用資材・機械の購入強制の禁止

第二に、 「不当な使用資材・機械の購入強制の禁止」が定められています。

具体的には、発注者がみずから指定した資材や機械を請負業者に無理やり購入させ、自分の利益を得ることは禁止されてます。

たとえば、特定のメーカー製品しか使えないと強制したり、割高なレンタル機械を指定したりしてはいけません。これによって、請負業者は適切・安価な資材選びができ、工事全体のコスト管理を公正におこなえます。

異常に短い工期の禁止

第三に、 「著しく短い工期の禁止」 が定められているため、発注者は、通常の手順や気象条件、周辺環境を考慮した期間よりも明らかに短いスケジュールで工事を発注してはいけません。

なぜなら実際に必要な下準備や資材調達、熟練作業員の手配などが十分におこなえず、安全面や品質面のリスクが高まるためです。

これらの禁止ルールを守ることで、請負業者と発注者が互いに信頼し、公正な条件で工事を進められ、結果として工事品質の向上と、トラブルの未然防止につながります。

建設工事は見積書交付が義務付けられている

建設工事で発注者が見積書の交付を請求した場合には、建設業者は必ず交付しなければならないと法律で定められています。

見積書には材料費や労務費といった具体的な項目の内訳や、工事の各工程にかかる日数などを明示し、発注者が工事内容や総金額を正確に把握できるよう配慮しなければなりません。

また、見積書を提出する前段階として、建設業者には工事の規模や仕様に応じた金額・日程をあらかじめ詳細に算出する努力義務があります。

なお、発注者の同意があれば、紙の書面だけでなく電子メールやクラウドシステムなどの電子的手段で見積情報を提供しても、正式な見積書の交付とみなされます。

発注者の前金支払い時には保証人をつけられる

建設工事の請負契約において、発注者が着工前に前金を支払う場合、請負業者に保証人を立ててもらう、あるいは保証会社の「前払金保証制度」を利用すれば、もし工事が中断されたり、業者が倒産してしまった場合でも、前金が戻ってくるよう備えることができます。

こうした保証措置により、資金の不安を解消し、契約の信頼性を高められます。前金支払いをおこなう際は、契約書に保証の有無やその内容を明確に記載してもらい、万が一に備えた適切なリスク管理をおこないましょう。

工事をまるごと下請けに依頼はできない

建設工事の請負契約では、請負業者が受注した工事を全て第三者に丸投げ(全体下請け)するのは原則として認められていません。

これは、契約時に請負業者がみずから施工責任を負うことを前提としているためです。

全体を下請けに出すと、品質管理や安全対策、工期の遵守などが不透明になり、発注者の意図に反する工事が行われるリスクが高まります。また、建設業法でも、無断で一括して工事を下請けに出すことは禁じられており、違反すれば処分の対象になることもあります。

したがって、工事の一部を下請けに依頼する場合は、発注者の承諾を得たうえで適切に管理し、自社が責任をもって遂行する体制が必要です。

下請負人は変更できる

建設工事の請負契約において、請負業者が工事の一部を下請けに出している場合でも、状況に応じて下請負人を変更可能です。

ただし、発注者との契約内容や建設業法の規定に従い、適切な手続きが必要です。

特に、発注者から事前に承諾を得ることが契約上求められている場合には、無断で下請負人を変更できません。また、新たな下請負人が法令に適合しているか、技術的能力を有しているかなども確認されることがあります。

下請負人の変更は、工事の品質や進行に影響を与える可能性があるため、発注者との信頼関係を維持しながら、変更内容を明確にし、必要に応じて書面で通知・承認を得ることが大切です。

設計士と施工者の意見が衝突したときの報告ルールについて

建設工事の請負契約において、設計図面の解釈や施工方法、使用材料の選定などをめぐって、設計者(設計事務所)と施工者(請負業者)の意見が食うことがありますが、その場合、施工者は速やかに発注者(施主)にその内容を報告し指示を仰ぐひつようがあります。

もし報告を怠って、独自の判断で工事を進めた場合、発注者の意図と異なる仕上がりになり、後々のトラブルにつながる可能性があります。発注者の指示があればそれに従い、調整が必要な場合は三者間で協議を行い、合意形成を図ることが原則です。

元請負人の義務について

建設工事の請負契約において、元請負人(主に発注者から直接契約を受けた業者)には、契約上および法令上のさまざまな義務があります。

まず、契約どおりに工事を完成させる責任があり、品質・安全・工期の管理を徹底する必要があります。

また、工事の一部を下請業者に発注する場合は、下請契約の適正な締結とその履行管理、さらに下請代金の適正な支払い義務も負います。

加えて、労働安全衛生法や建設業法に基づき、現場の安全対策や従業員の保護にも配慮しなければなりません。

工事中に問題が発生した場合は、速やかに発注者へ報告し、必要な指示を仰ぐなど、誠実に対応してください。元請負人は、全体の責任者として工事全体を統括する立場にあるため、行動ひとつが工事の信頼性に関わることを頭に入れておきましょう。

紛争が起きてしまった際のルールについて

建設工事の請負契約において紛争が発生した場合は、「建設工事紛争審査会」による解決手続きをおこなうことが可能です。

これは、請負契約に関するトラブルを迅速かつ専門的に処理するためのしくみで、あっせん・調停・仲裁の3つの方法があります。

当事者の申請に基づき、中央審査会または都道府県審査会が対応し、特に公共性の高い工事では職権による介入も可能です。

審査会による調停が不調に終わった場合でも、手続きの打ち切り通知から1か月以内に訴訟を起こせば、時効は中断されたものとみなされます。こうした制度により、訴訟に頼らずに円満な解決を目指すしくみが整えられています。

【建設業法】施工技術の確保についてわかりやすく解説

建設工事の品質と安全を確保するためには、確かな「施工技術」が欠かせません。

建設業法では、会社が一定の技術力をもって工事をおこなえるよう、技術者の配置や基準について細かく定めています。この章では、建設業法における「施工技術の確保」に関する基本的なルールや考え方を、わかりやすく解説します。

主任技術者・監理技術者の配置ルールについて

建設業法では、建設工事を安全かつ適切に進めるために「主任技術者」や「監理技術者」の配置が義務付けられています。

全ての工事には「主任技術者」を置く必要があり、この方が現場で技術面の管理を行います。

さらに、特定建設業者が大きな元請工事を請け負う場合には、主任技術者より高い資格や経験をもつ「監理技術者」を配置しなければなりません。特に公共性の高い工事や大規模な工事では、これらの技術者をその現場専属で配置する「専任」が求められます。

ただし、小規模な工事などでは、ICT(情報通信技術)などを活用して複数現場を兼務できる場合もあります。

主任技術者・監理技術者がおこなう業務内容

主任技術者と監理技術者は、建設現場で工事をスムーズかつ安全に進めるために欠かせない存在です。

主任技術者は、全ての工事に配置され、施工計画の作成や進行・品質のチェック、現場スタッフへの技術的な指導を行います。

一方、監理技術者は大規模工事や公共性の高い現場に必要とされ、主任技術者の役割に加えて、下請業者への指導や全体の管理も担当します。

建設業法では、こうした技術者の配置を義務づけ、技術力の維持・向上を図ることが求められています。工事の品質確保はもちろん、技術者の育成や働く方の処遇改善にもつながる重要な制度です。

【建設業法】その他のルールについてわかりやすく解説

ここでは建設業法のその他のルールについて詳しく見ていきましょう。

標識の掲示義務について

建設業法では、建設業者に対し「標識の掲示義務」が規定されています。

具体的には、建設業者は、自社の店舗および元請工事の現場ごとに、公衆の見やすい場所へ、所定の標識(看板)を掲示しなければなりません。掲示する標識には、建設業の許可を受けた業種の名称、一般建設業か特定建設業かの別、その他国土交通省令で定める事項を明記する必要があります。

このルールは、発注者や地域住民が施工業者の信頼性や責任体制を確認するために設けられており、透明性の確保につながります。さらに、許可を受けていないのに誤解を招くような表示をしてしまうことも法律で禁じられています。

不当表示の禁止について

建設業法では、建設業を営む者に対して不当な表示を禁止しています。

これは、許可を受けていない事業者が、あたかも許可を得た正規の建設業者であるかのように見せかける行為を防ぐための規定です。

たとえば、会社案内やWebサイト、広告などで誤解を招くような文言や表示をおこなうと、発注者や顧客が誤った判断をするおそれがあり、信頼性や安全性に関わる重大な問題につながります。

こうした行為は、許可を得て適正に事業をおこなうほかの業者との公正な競争を阻害するため、法律で厳しく制限されているのです。

信頼性の高い事業運営をおこなうには、正しい許可情報の明示と、虚偽や誤認を与える表示をしないようにしましょう。

帳簿・書類の備付け・保存義務について

建設業法では、建設業者に対して帳簿や書類の備付け・保存義務が定められています。

具体的には、営業所ごとに営業に関する内容を記載した帳簿を整備し、さらに関連する図書も保存しなければなりません。

これは、業務の透明性を高め、行政による監査や調査に備えるためにおこなう必要があります。

帳簿や書類の内容、保存期間については国土交通省令で細かく定められており、紙媒体に限らず電子データでの管理も可能です。

しっかりとした記録管理は、法令遵守だけでなく、信頼性のある経営体制を築くうえでも重要なポイントです。建設業に携わる方は、この義務を正しく理解し、適切な対応を心がけましょう。

建設業法に違反してしまったらどうなる?

建設業法に違反すると、事業者にはさまざまなペナルティが科されます。

違反の内容や重大性に応じて、行政処分や罰金、さらには刑事罰まで幅広い措置が取られるため、十分な注意が必要です。

ここでは、建設業法違反によって生じる主なリスクと罰則について詳しくみていきましょう。

行政処分(営業停止・許可取消し・営業禁止など)

建設業法に違反した場合、まず国土交通大臣または都道府県知事から違反内容に応じた指示が出されます。

これに従わない、あるいは工事施工の不適切や無許可下請契約など重大な違反があった場合は、最長1年の営業停止処分が科されます。

さらに、許可基準を満たさなくなったり不正取得が発覚したりすると、許可取消しが義務付けられ、取消し後は役員や責任者を含め5年間の新規営業禁止となってしまいます。

これらの処分は官報・公報で公告され、違反行為には罰金刑や拘禁刑も適用されるため、日ごろから法令遵守を徹底しましょう。

過料・過失に応じた軽微な罰金

建設業法では、書類や手続きの不備にも「過料」といった軽い罰金が科されます。

たとえば、財務諸表の備え置きや必要書類への記載を怠った場合は20万円以下の過料となってしまいます。また、許可申請書や届出書への虚偽記載、標識の不掲示、誤認を招く表示、帳簿の未備付け・未記載・虚偽記載、帳簿・図書の不保存といった違反は10万円以下の過料となるため注意しましょう。

これらは手続き上のミスでも適用されるため、事業者がルールを守るための抑止力となっています。

指導・勧告・公表

建設業法に違反した場合、まず国土交通大臣や都道府県知事から「指導・助言」が行われます。

これは、施工状況や契約履行、帳簿・標識の備付けなどで不備があった際、必要な改善策を提示するものです。

さらに、特に賃金の未払いや損害発生など問題が深刻な場合には、「勧告」により立替払いや再発防止策の実施などがおこなわれます。

これらの措置を怠ると、行政処分や罰則の対象となるだけでなく、「監督処分簿」への記載や官報・公報での公表により、社会的信用を大きく損ねることになってしまうため十分注意しましょう。

刑事罰(懲役・罰金)

建設業法に違反すると、会社や関係者には以下のような刑事罰が科されます。

無許可営業
建設業の許可を受けずに営業した場合は、懲役最大3年または罰金最大300万円(あるいはその併科)です。

虚偽記載
許可申請書や関係書類に虚偽の記載をして提出した場合は、6か月以下の懲役または100万円以下の罰金(または併科)です。

下請契約違反
許可を受けない業者との下請契約や、法定金額以上の契約を結んだ場合も、懲役3年以下・罰金300万円以下の対象です。

営業停止命令違反・営業禁止違反
停止命令中に営業を続けたり、禁止期間中に再開したりすると、懲役3年以下・罰金300万円以下の罰金です。

賄賂の授受
経営状況分析機関の職員が賄賂を受け取った場合は、最長3年の拘禁刑。供与した側も3年以下の拘禁刑か200万円以下の罰金です。

【立場別】よくある建設業法違反のケース集

ここでは建設業法違反のよくあるケースを立場別に紹介していきます。

【建設業者(全般)】無許可でそもそも業を営む

A社は、地域の住宅リフォーム工事を中心に事業を始め、500万円を超える工事も複数受注していました。しかし、建設業許可を取得しておらず、無許可で建設業を営んでいたことが発覚しました。これは建設業法違反であり、行政処分や罰則の対象となり、契約の法的効力にも影響を及ぼします。

どうすればよかったのか?

A社は工事を請け負う前に、自社の工事内容や金額を精査し、必要な建設業許可を取得するべきでした。特に、500万円以上の建設工事や特定の専門工事は、許可がなければ違法となるため、事前に行政窓口や専門家に相談する体制を整えておくことが重要です。

【建設業者(全般)】財務基盤や経営能力が基準を満たさなくなるのに申告しない

B社は許可取得当初は健全な財務状態でしたが、業績悪化により債務超過となりました。それにもかかわらず、経営状況が基準を満たさなくなったことを行政に報告せず、許可を維持し続けていました。これは建設業法違反であり、許可取消や営業停止などの処分につながる可能性があります。

どうすればよかったのか?

B社は決算時に財務状況を正確に把握し、基準を満たさない場合は速やかに報告するべきでした。そのうえで、資本増強や経営改善策を講じることで許可の維持に努める必要があります。許可業者としての責任を果たすためにも、定期的な経営診断や専門家との連携が不可欠です。

【建設業者(全般)】主任技術者・監理技術者を置かない

C社は複数の建設現場を抱えていましたが、現場ごとに主任技術者や監理技術者を配置せず、無資格の従業員が現場を管理していました。これは建設業法上、工事現場には必ず専任の技術者を配置する義務があるため、明確な違反です。品質・安全管理の観点からも重大なリスクとなるでしょう。

どうすればよかったのか?

C社は、各現場の工事内容に応じて、必要な資格・経験をもつ主任技術者または監理技術者を配置する体制を整えるべきでした。専任の意味を正しく理解し、配置予定者の資格や実務経験の確認を怠らないよう、管理体制の強化が必要です。人的リソースが不足する場合は、無理に受注を広げず人材確保を優先すべきです。

【発注者】不当に低い請負代金での契約

D社はコスト削減を目的に、相場よりも大幅に安い金額で建設工事を下請会社に発注しました。下請け会社はやむなく引き受けましたが、適切な施工がおこなえず、あとに瑕疵が発覚しました。不当に低い請負金額は、建設業法や下請代金支払い遅延等防止法に違反する恐れがあり、発注者としての責任が問われる場合があります。

どうすればよかったのか?

D社は、適正な原価計算と見積評価を行い、品質や安全に見合った請負金額で契約を締結すべきでした。発注者は安さだけで業者を選定するのではなく、適正な利益を確保できる金額設定を意識し、元請・下請ともに健全な取引関係を築くことが重要です。

【発注者】著しく短い工期を設定する行為

E社は新店舗の開業に間に合わせるため、通常2か月かかる工事を1か月で完成させるよう下請会社に発注しました。下請会社は無理な日程にもかかわらず受注しましたが、品質に問題が生じ、事故寸前のトラブルも発生。工期の著しい短縮は建設業法や労働安全衛生法の趣旨に反する可能性があり、発注者責任が問われるケースもあります。

どうすればよかったのか?

E社は、設計や施工業者と十分な協議を行い、現実的なスケジュールで工事を進めるべきでした。スピード重視ではなく、施工の安全性や品質確保の優先が必要でした。やむを得ず短期工事となる場合でも、工程ごとの負担を正確に把握し、協議記録を残すことが肝要です。

【建設業者(元請負人)】下請代金の支払い遅延・不払い

F社は複数の下請業者に工事を依頼していましたが、資金繰りの悪化を理由に支払いを先延ばしにし、一部は支払いを行いませんでした。下請業者からの苦情を受け、調査の結果、建設業法違反(下請代金の支払い遅延・不払い)と認定されました。

どうすればよかったのか?

F社は、工事代金の支払いについて契約時に明確な支払い期日を定め、その履行に責任をもつ必要がありました。資金繰りに懸念がある場合は早期に金融機関や外部の専門家に相談し、計画的な支払い管理をおこなうことが求められます。下請会社との信頼関係を守るためにも、誠実な対応が不可欠です。

【建設業者(元請負人)】下請契約の一括発注禁止違反

G社は、公共工事の元請として契約を締結後、施工のほぼ全体をひとつの下請け会社に一括して丸投げしました。これは、建設業法に定められた「一括下請負の禁止」に抵触します。元請業者には工事全体の管理責任があり、その義務を放棄する行為は重大な法令違反です。

どうすればよかったのか?

G社は、各工種ごとに適切な下請業者と分割契約を締結し、元請として全体の工事管理・工程・安全を責任をもって担う体制を整えるべきでした。また、技術者の配置や現場の進捗確認を怠らず、実態としても「丸投げ」にならない運営を徹底する必要があります。公共工事であれば特に厳格な遵守が求められます。

【建設業者(下請負人)】特定建設業許可を受けずに大規模下請契約を締結する

H社は一般建設業許可しか持たないにもかかわらず、1件の工事で4,000万円を超える建築工事を元請J社から請け負いました。これは特定建設業許可が必要な規模であり、H社の行為は建設業法違反です。あとに発覚し、工事の継続が困難になるなど大きな問題を招きました。

どうすればよかったのか?

H社は契約前に、工事金額が特定建設業の要件に該当するかを確認し、必要な許可を取得してから契約するべきでした。特定建設業は資本要件も高いため、事前準備が必要です。元請のJ社も、下請業者の許可の範囲を契約前に確認し、法令遵守体制を整えることが必要でした。

実際にあった建設業法違反の事例

ここでは実際にあった建設業法違反の事例(下記)を紹介していきます。

  • 悪質リフォーム業者が無許可建設営業で逮捕
  • 虚偽の申請による建設業法違反容疑で5人逮捕
  • 資格の不正取得による建設業法の違反で指示処分

詳しく見ていきましょう。

悪質リフォーム業者が無許可建設営業で逮捕

2023年に、東京都渋谷区の清水謙行容疑者ら4人が、建設業許可を得ないまま500万円を超える住宅リフォーム工事を請け負ったとして、建設業法違反の疑いで逮捕されました。

相模原市と二宮町で屋根修繕や外壁塗装などを行っており、工事金額は実際の原価に対し大幅に高額でした。清水容疑者はSNSで派手な生活を発信していたことで注目を集めていました。また、過去には不要な工事を持ちかけた詐欺未遂事件にも関与していたとされ、警察は悪質な業務実態の解明を進めています。

出典:https://www.asahi.com/articles/AST3C1VLRT3CUTIL008M.html

虚偽の申請による建設業法違反容疑で5人逮捕

2023年7月、京都府警は建設業許可を不正に取得したとして、木津川市の土木工事業者「木津川道路」の実質的経営者・倉本直也容疑者ら5人を建設業法違反容疑で逮捕しました。

一行は、令和2年と3年に専任技術者が営業所に常駐していると偽った申請書類を府に提出し、特定建設業の許可を受けていたとされています。その後、同社は宇治田原町の公園造成工事(約5700万円)を受注しており、府警は、虚偽申請によって公共工事に参入しようとしたとみて、詳しい経緯を調べています。

出典:https://www.sankei.com/article/20230705-HS4NOCB7M5OTJHCMMEZIEBQGXQ/

資格の不正取得による建設業法の違反で指示処分

大林道路の社員13人が、必要な実務経験を満たさないまま1級施工管理技士などの資格を不正に取得し、営業所の専任技術者として配置されていたことが判明しました。

これにより、国土交通省関東地方整備局は2024年12月、同社に対し建設業法違反として再発防止等の指示処分を行いました。同社はさらにほかにも資格取り消し者がいることを認めています。不正の原因は、実務経験の重複計上や誤認によるもので、意図的なものではないと説明しています。

出典:https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00142/02124/

まとめ

建設業法は、建設工事を安全かつ適正におこなうために定められた法律です。

許可制度をはじめ、請負契約のルールや技術者の配置、安全対策、下請との関係性など、建設業を営むうえで守るべきさまざまな規定が設けられています。

許可が必要な工事や業者の範囲、違反時の罰則も明確に定められており、知らずに進めると営業停止や罰金、契約無効などの重大なリスクを招くおそれがあるので注意しましょう。

もし建設業の許可を取得したい場合や請負契約書の作成に不安がある場合は、行政書士など専門家に相談するのも安心です。

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