建設業許可に裏ワザはない!要件をクリアするための正攻法

建設業許可を取りたいのに要件が厳しく、裏ワザでなんとか突破できないかと情報収集している方も少なくないでしょう。実際、経営業務の管理責任者や営業所技術者など、全ての要件を満たすのは簡単ではありません。
しかし、嘘やごまかしによって許可をとろうとすることは、大きなリスクを伴います。合法的に許可をとるのが、結局のところもっとも効率がよく安全なのです。
本記事では、建設業許可の裏ワザを知りたいあなたのために、合法的に要件不足を補い、早く確実に許可を得るための方法を解説します。最後まで読んで、正攻法で建設業許可を取得しましょう。
建設業許可に裏ワザはある?よくある誤解と現実
建設業許可の取得を目指す中で、なんとか簡単に許可をとる方法はないかと考えてこの記事にたどり着いた方も多いでしょう。裏ワザと称される方法がインターネット上で紹介されることもありますが、果たして本当に合法で安全な方法なのでしょうか。ここでは、よくある誤解と制度の正しい活用方法について解説します。
建設業許可に裏ワザはない!実態に合わない“噂”の例
インターネットや同業者の間で「名義だけ借りておけば大丈夫」「契約書の内容を書きかえれば許可がとれる」などの裏ワザを耳にした方もいるかもしれません。
しかし、許可申請書に虚偽の記載をしたり、不正な手段で許可を取得したりすることは重大な法律違反であり、拘禁刑や罰金を科される可能性があります。営業停止や許可の取消しの行政処分を受けるおそれもあります。
親族や知人の名義を借りて経営業務の管理責任者として申請したり、古い工事の契約書を修正して提出したりする行為は、裏ワザではなく違法行為です。仮に一時的に許可を受けられたとしても、トラブルになったときの代償は大きいためやめましょう。
合法的な「近道」は制度の正しい活用
裏ワザという言葉からイメージされるような抜け道は存在しませんが、制度を上手に活用することで、想像よりも簡単に要件を満たせる場合もあります。
たとえば、経営業務の管理責任者は、これまでの役員や個人事業主としての経験を活用できることもあります。技術者要件も、資格がなくても実務経験でカバーできる場合があります。制度を正しく理解し、書類でしっかり裏付けることが、もっとも現実的でリスクのない近道なのです。
建設業許可をスムーズに取得するための5つの近道
法律上のリスクを伴う裏ワザを使わなくても、ポイントを押さえて準備すればスムーズに許可取得できるケースがあります。ここでは現実的に使えるノウハウとして、制度の中にある近道を5つの視点から紹介します。
経営業務の管理責任者の代替要件を活用する
建設業許可の要となる経営業務の管理責任者の要件は、2020年の法改正でより柔軟な運用になりました。許可を受けたい業種で5年以上の経営経験が必須と誤解されがちですが、実際は下記のような多様なパターンで要件を満たせます。
許可を受けたい建設業種以外の経営経験
許可を受けたい業種でなくても、建設業で5年以上の経営経験があれば要件を満たします。たとえば、土木工事業の経営経験が5年以上あれば、建築一式工事の許可申請においても経営業務の管理責任者として要件を満たします。
重要なのは、「建設業において」企業全体の経営判断に携わっていたことです。
役員や個人事業主以外の経験を活かす
代表取締役などの役員や個人事業主でなくても、建設工事の施工に必要な資金調達、人員配置、下請業者との契約締結などの経験があれば、要件を満たす可能性があります。
執行役員、事業部長、支店長など、経営の一部分を実質的に担っていた場合は5年以上、総務部長、経理部長、人事部長など、経営トップを直接的に支える役割の場合は6年以上の経験を書類で証明できれば要件を満たします。
社長としての経験が少ないからと諦めず、活かせる経験がないか探してみましょう。
複数人の経験を組み合わせる方法
常勤の役員の中に、建設業経験は浅いが財務・労務・業務運営の経験がある方や、他業種含め役員経験が豊富な方がいる場合、サポートする方を置くことで要件を満たす場合があります。
たとえば、建設業での役員経験は2年だが、飲食業の社長を5年務めた経験があるケースです。この場合、財務・労務・業務運営の経験が5年以上ある方をサポート役として置くことで、要件を満たします。サポート役は分野ごとに複数人になっても問題ありません。
営業所技術者に該当する資格・経験を確認する
営業所ごとに、工事に関する専門知識をもつ「営業所技術者」を配置する要件があります。国家資格が必須だと誤解している方も多いですが、実際は学歴や実務経験でも要件を満たせるケースが多いのです
学歴と実務経験を組み合わせる
国家資格がなくても、許可を受けたい建設業種で指定された学科を卒業し、かつ一定期間の実務経験があれば、営業所技術者として認められます。高卒の場合は5年以上、大卒や高専卒の場合は3年以上の実務経験で要件を満たします。
たとえば、工業高校の土木科を卒業し、卒業後5年間土木工事の現場で施工管理や監督業務に携わってきた方は、国家資格がなくても土木一式工事の営業所技術者となれる可能性があります。
指定学科は建設業の種類ごとに細かく定められているため、卒業した学科が該当するか確認が必要です。
10年以上の実務経験一本で勝負する
学歴や国家資格がなくても、許可を受けたい建設業種で10年以上の実務経験があれば、営業所技術者になれます。長年現場で働いてきたベテランの一人親方や職人の方が許可をとる際に多く使われる方法です。
請負契約書や注文書、現場の写真、日報などの書類を組み合わせて、いつどのような工事にどのようにかかわったかを証明します。
資格を活かす
実務経験が少ない方にとっては、逆に資格を活かす方が近道となる場合もあります。たとえば、一級・二級建築士や一級・二級施工管理技士は、その資格だけで営業所技術者の要件を満たす可能性があります。
資格の種類や級によって対象となる工事の業種が異なるため、許可をとりたい業種の要件を満たすかを手引きなどで確認しましょう。
財産的要件を満たす工夫
自己資金500万円以上の要件は、預金残高だけではなく受取手形・未収金などを合算して判断されます。法人では、貸借対照表の純資産の合計額です。
もし自己資金が500万円以上ない場合も、500万円以上の資金を調達する能力があれば要件を満たします。具体的には、取引先の銀行から融資が受けられることの証明書や、500万円以上の評価額の不動産を所有していることがわかる固定資産評価証明書で金銭的信用を示すことが可能です。
補足説明書や任意資料の活用実例
書類が足りないときには、補足説明書や任意資料を提出することでカバーできる場合があります。たとえば、何らかの事情により勤務証明書が用意できなくても、給与明細や社会保険の加入履歴、日報などを組み合わせることで、勤務実態があると認められるケースなどです。
リストに書かれた書類が用意できずに困ったら、建設業許可申請が得意な行政書士に相談するとよいでしょう。行政書士は申請のノウハウを熟知しているため、どのような書類を用意すればよいかアドバイスがもらえます。
手続きを急ぎたいときの準備の手順
急いで許可を取得したい場合、まずは要件を満たしているか、必要書類をそろえられるかを確認しましょう。自社ですぐに用意できる資料の収集と並行して、関係機関から取り寄せる必要のある書類を手配します。
要件を満たすかわからない場合や、書類がそろわない場合は、早期に専門家に相談しましょう。手戻りを防ぎ、スムーズに許可を取得するために、申請後に何か指摘を受けてからではなく、書類を提出する前の相談がおすすめです。
よくあるつまずきポイントと乗り越え方
一人親方や小規模な事業者に特に多いのが、過去の工事の書類が見つからない、過去の勤務先と連絡がとれず証明書がもらえない、要件を満たすと思ったのに却下になってしまったといったトラブルです。対策が可能な場合も多いので、すぐに諦めずに専門家も活用しながら許可取得を目指しましょう。
書類が揃わない・過去の勤務証明が取れない
実務経験を証明する書類が集められずに申請が滞ってしまうケースは多いです。過去に勤めていた企業がすでに廃業していたり、連絡がつかなかったりすると、勤務証明をもらうこと自体が難しくなります。また、一人親方にありがちなのが、長年現場で働いてきたにもかかわらず、帳簿や契約書などの証拠が残っていないというケースです。
用意できないものはしかたがないので、実務経験を証明できるほかの方法がないか探りましょう。たとえば、工事の発注書や請求書、現場写真、当時の社会保険の加入履歴、施工実績の記録など、間接的でも経験の裏付けになる資料を積み上げることで、実務経験の証明として認められる可能性があります。
自己判断で諦めず、申請先の行政庁や、行政書士などの専門家に確認するとよいでしょう。
数字上はOKなのに却下された
提出書類の内容や整合性に疑問をもたれた結果、補足資料の提出を求められたり、申請を却下されたりする場合もあります。年数や金額といった数字が要件を満たすように書類の表向きだけを整えても、審査ではごまかしがききません。
たとえば、申請書類に記載した工事実績や売上高と、税務書類や契約書に記載されている内容が一致しない場合、虚偽記載を疑われるリスクがあります。また、経営業務の管理責任者として申請した方の経歴に説明不足な点があると、具体的な業務内容、経験年数、関与したプロジェクトなどの詳細な説明が求められる可能性があります。
経験豊富な行政書士などの専門家と相談しながら、必要に応じて資料を補完し、申請書類全体の一貫性を整えることで、行政庁が納得できる申請書類を作成することを強くおすすめします。
困ったら行政書士に相談を
自分の状況では無理と言われるかもしれない、難しくてよくわからないという気持ちから、専門家への相談を先延ばしにしてしまう方もいます。自己判断で無理だと早合点して諦めてしまう方も少なくありません。しかし、わからないことを丁寧に説明し、許可取得に向けてサポートするのが専門家の役割です。
「相談してみたら、思っていたよりずっとスムーズに進んだ」という声をいただくことも多いです。経験豊富な行政書士であれば、書類が足りない場合の代替手段や、経歴に自信がない場合の補強方法など、個別の事情に応じた現実的な対策を一緒に考えてくれます。相談することによって、不安が具体的な課題として整理され、次のアクションが見えてきます。
自分で申請できる?行政書士に依頼するべき?
コストを抑えるために自分で申請したいと考える方もいるでしょう。建設業許可申請は自分でおこなうことも可能ですが、要件や書類に不安がある場合は行政書士に依頼すると安心です。依頼するメリットや費用相場を確認し、自分で申請するか専門家に任せるかを検討しましょう。
自分で申請するメリットと限界
建設業許可の申請には、ある程度の知識と書類作成スキルが求められます。都道府県や地方整備局が出している建設業許可の手引きを読み解くだけでも労力がかかるものです。一般的な要件や提出書類の説明しか書かれていないため、自社のケースで要件を満たすのか、どの書類を用意するのかなどは基本的に自分で判断することになります。
自分で申請すれば費用の節約にはなりますが、それなりの覚悟も必要です。時間と労力に余裕があり、制度をじっくり学ぶことに前向きな方には自力での申請も選択肢のひとつですが、スムーズな取得を望むなら、行政書士への依頼も視野に入れるとよいでしょう。
行政書士に依頼するメリットと費用相場
建設業許可の申請を行政書士に依頼するメリットは、時間と労力を節約できる点と、許可取得の可能性が高まる点にあります。申請書の作成や内容の確認、提出や行政庁とのやりとりまで対応してもらえるため、依頼者の負担は自分で申請する場合と比べて大幅に減ります。
費用は免許の種類によっても異なりますが、一般建設業・知事許可の新規申請の場合は10~20万円程度が相場です。特定建設業の場合や大臣許可の場合は費用が高くなる傾向があります。建設業許可取得によってビジネスチャンスが広がるため、費用をかけても行政書士に依頼して確実に許可を取得するというのもひとつの考え方です。
こんな方は行政書士に頼るのがおすすめ
次のような方は、自力申請にこだわらず、早い段階で行政書士に相談することをおすすめします。
- 書類作成が苦手
- 要件を満たしているか自信がない
- どうしても用意できない書類がある
- 本業が忙しく、手続きに割ける時間がない
- できるだけ早く許可を取得したい
建設業許可申請に強い行政書士は、単に書類の作成を代行するだけではなく、許可を取得するためにはどうすればよいかのアドバイスも可能です。初回相談を無料で実施している場合もあるため、一人で悩まずに気軽に相談することをおすすめします。
まとめ
建設業許可の取得に「裏ワザ」はありません。しかし、制度のしくみを理解し、ちょっとした工夫や事前準備をおこなうことで、想像以上にスムーズに進められるケースもあります。
とはいえ、誰もが簡単に許可を取得できるわけではなく、人手不足の中で日々の現場を回している方にとっては煩雑な手続きがハードルになる場合もあるでしょう。自己判断で申請を諦めず、建設業許可を取り扱っている行政書士に相談しましょう。
当事務所(行政書士佐藤秀樹事務所)では、建設業許可申請についてのご相談を受け付けています。初回相談は無料ですので、要件を満たしているか不安な方や、書類がそろわずお困りの方も、まずはお気軽にご相談ください。