家系図や相続に役立つ!戸籍をたどる方法と読み解き方を徹底解説

戸籍をたどる方法と読み解き方を徹底解説

家系図作成や相続の際に、親族関係を正しく知るために欠かせないのが戸籍です。戸籍には、出生から現在に至るまでの身分上の出来事や、家族関係が記録されています。現在の戸籍から古い戸籍へと順に遡ることで、父母、祖父母……と先祖代々の系譜をたどることができます。

しかし、戸籍を集め、読み解く作業は容易ではありません。特に、古い戸籍は手書きで、現代とは異なる形式や見慣れない言葉・文字が使われていることも多く、正しく読むにはコツがいります。

本記事では、戸籍のたどり方や、古い戸籍の読み解き方について、初心者にもわかりやすく解説します。ぜひ、家系図作成や相続人調査に役立ててください。

目次

戸籍をたどる前に知っておきたい基礎知識

戸籍をたどるためには、戸籍のしくみをきちんと理解しておくことが大切です。戸籍にはいくつか種類があり、それぞれ記録されている内容や意味合いが異なります。まずは、戸籍とは何かという基本から、戸籍の種類、戸籍からどのような情報が読み取れるのかについて解説します。

戸籍とは何か?そのしくみと種類

戸籍とは、日本国民一人一人の身分関係(出生、婚姻、死亡、親子関係など)の公的な記録です。原則として「一組の夫婦とその未婚の子」を単位として作成され、本籍地の市区町村役場で管理されています。

初めて婚姻する際には、親の戸籍から抜けて夫婦だけの新しい戸籍が作られます。夫の氏を名乗る場合は夫が、妻の氏を名乗る場合は妻が新しい戸籍の筆頭者となります。家族関係を知るためには、現在の戸籍だけでなく過去の戸籍もさかのぼって確認する必要があるのです。

現在戸籍

「現在戸籍」とは、いま現在有効な戸籍です。婚姻したり死亡したりすると戸籍から除籍されますが、同じ戸籍に残っている方がいれば除籍された方の情報も現在戸籍に載ります。多くの場合はコンピュータ化されており、記載内容が読み取りやすいのが特徴です。

相続人調査の際も、家系図を作成する際も、まずは現在戸籍からスタートします。戸籍を取得する際は、同じ戸籍の方全員の情報が載っている戸籍謄本(全部事項証明書)を取得しましょう。戸籍抄本には、一部の人の情報しか記載されないため注意が必要です。

除籍

「除籍」とう言葉は、死亡、婚姻、離婚、転籍(本籍地を移すこと)などにより戸籍からいなくなることを指す場合と、誰もいなくなった戸籍そのものを指す場合があります。戸籍から除籍されると、除籍された旨とその理由が名前の横などに記載されます。戸籍から全員が抜けたとしても、戸籍簿そのものは原則として150年間は市区町村役場に保管されており、除籍謄本として確認が可能です。戸籍をたどる際は、除籍謄本を取得するケースもよくあります。

改製原戸籍

改製原戸籍とは、法改正によって戸籍の様式が変更された際に、新しく作り変えられる前の戸籍です。戸籍法が制定された明治時代から現在に至るまで、戸籍制度は何度か大きな改正を経ています。特に平成に入ってからは、紙の戸籍から電子データへと作り替えが進みました。

改製原戸籍には、現在の戸籍には引き継がれていない古い情報や過去の身分事項が記載されていることが多く、親族関係を確認するための重要な手がかりとなります。ただし、ほとんどは手書きのため、慣れていないと読み解くのが難しいという難点があります。

戸籍からわかること|出生・婚姻・死亡・続柄など

戸籍には、実にさまざまな情報が含まれています。具体的には、戸籍をたどることで以下のような事項を確認できます。

  • 氏名、生年月日
  • 出生に関する事項(いつ、どこで生まれたか、父母は誰か)
  • 婚姻に関する事項(いつ、誰と結婚したか、離婚したか)
  • 死亡に関する事項(いつ、どこで死亡したか)
  • 親子関係(実子、養子縁組など)
  • 兄弟姉妹(同じ戸籍にいた兄弟姉妹)
  • 親や子の氏名・本籍地
  • 転籍や分籍の履歴

相続の際は、法定相続人を確定するために戸籍の確認が必要です。親族関係をわざわざ戸籍で確認する必要はないと思う方もいるかもしれません。しかし、亡くなった親に離婚歴があり、前の配偶者との間に子どもがいることを戸籍見て初めて知るケースもあります。

自分で戸籍をたどる手順

戸籍をたどる際は、現在から過去に向かって順にさかのぼっていきます。ここでは、自分を起点として戸籍をたどる方法をステップごとに紹介します。

Step1:自分の本籍地を確認する方法

自分の現在戸籍を取得するためには、あなた自身の本籍地と戸籍の筆頭者を知る必要があります。本籍地は住民票の住所とは一致しない場合もあるため、わからない場合は住民票を取得して確認しましょう。住民票を請求する際に、本籍地・筆頭者氏名の記載を省略しないことがポイントです。

Step2:直系尊属(父母、祖父母……)の戸籍をたどるルール

戸籍をたどる際は、自分から親へ、親から祖父母へ……と世代をさかのぼって進めていきます。本籍地と戸籍の筆頭者がわかっていれば、自分の戸籍謄本を取得できます。請求先は本籍地の市区町村役場です。

未婚の方は、親が自分と同じ戸籍に載っていることが多いでしょう。この場合、現在戸籍に親のひとつ前の本籍地が載っています。それを手掛かりに、さらに一世代前の戸籍謄本を取得します。

結婚している方は、配偶者や子どもが同じ戸籍に載っていますが、親や兄弟は同じ戸籍に載っていません。結婚する際に新たな戸籍を作るためです。この場合、自分の従前戸籍の欄を見て、結婚前の本籍地と筆頭者を確認しましょう。親が同じ戸籍にいない場合は、自分と親が一緒に載っている戸籍まで遡るステップが必要です。

戸籍を取得できる範囲は限られており、自分と配偶者のほかは、直接血のつながりのある親族だけです。直系尊属(父母、祖父母など)や直系卑属(子、孫など)の戸籍は、理由を問わず取得できます。一方、兄弟姉妹や叔父・叔母、いとこなどの傍系血族の戸籍は、単に親族であるというだけでは取得できません。

Step3:役所での戸籍謄本の取得方法(窓口・郵送・オンライン・コンビニ交付)

戸籍を取得するには、窓口で直接請求する方法のほか、郵送請求やオンライン請求、コンビニ交付があります。戸籍を管理しているのは本籍地の市区町村役場ですが、戸籍の広域交付により、全国すべての市区町村の戸籍を最寄りの市区町村役場で請求できるようになりました。

役所の窓口で直接請求する

市区町村役場の窓口に行き、備え付けの申請書に記入して提出します。本人確認書類が必要です。手数料は基本的に全国共通で、戸籍謄本は1通450円、除籍謄本や改製原戸籍謄本は1通750円です。その場で書類を受け取り確認できるので、追加の請求が必要な場合に対応しやすいのがメリットです。

2024年3月1日からは、本籍地以外の市区町村役場でも戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本が取得できるようになりました。利用できるのは本人、配偶者、直系尊属(父母、祖父母など)、直系卑属(子、孫など)に限られます。郵送や代理人による請求はできません。窓口でマイナンバーカードなどの本人確認書類の提示が必要です。広域交付制度を利用することで、遠方にある本籍地の戸籍もまとめてスムーズに取得でき、戸籍調査がより効率的に進められます。

郵送による請求

代理人が請求する場合や、役所の窓口に行くのが難しい場合は、本籍地の市区町村役場に郵送で請求するとよいでしょう。住所の異動履歴が載っている戸籍の附表の写しなど、広域交付の対象でない証明書が必要な場合も郵送請求が便利です。請求先の市区町村役場の公式Webサイトから、郵送用の戸籍等交付請求書の様式をダウンロードし、必要事項を記入します。請求書に加え、本人確認書類のコピー、手数料分の定額小為替、切手を貼った返信用封筒を同封して請求します。

オンライン申請

一部の自治体では、マイナポータルや各自治体の電子申請サービスを利用して、インターネット経由で戸籍謄本などの請求ができます。オンラインで本人確認や電子署名をおこなうため、多くの場合、マイナンバーカードが必要です。請求した戸籍謄本などは郵送で受けとるのが一般的です。対応している自治体が限られているため、本籍地の自治体がオンライン申請に対応しているか確認しましょう。

コンビニ交付

本籍地の自治体がコンビニ交付サービスに対応していれば、コンビニなどに設置されているマルチコピー機で、マイナンバーカードを利用して戸籍謄本を取得できます。役所の開庁時間を気にせず、早朝や夜間でも取得できる点がメリットです。ただし、住民票の住所地と本籍地の市区町村が異なる方は、事前に本籍地の市区町村に「戸籍証明書交付の利用登録申請」を行う必要があります。登録には通常数日かかるため、急ぎで証明書が必要な場合は注意しましょう。

Step4:戸籍が途切れたときの対処法

「戸籍を順にたどっていったが情報が途切れてしまった」という事態は、ご先祖様が転籍(本籍地の変更)や結婚などの理由で別の戸籍に移っているケースで起こりがちです。古い時代では転籍を何度も繰り返していることも珍しくありません。

困ったら、直前に取得した戸籍をもう一度じっくりと見てみましょう。戸籍には、その人が「どこから来たか(従前戸籍)」や「どこへ行ったか(転籍先や婚姻・分籍による新本籍地など)」の情報が記載されています。これが次にたどるべき戸籍の大切な手がかりになります。

古い戸籍は手書きで書かれており、読み慣れない旧字体や崩し字が使われていることもあって、読み解くのが難しい場合があります。行き詰まってしまった場合や、戸籍収集に時間をかけるのが難しい場合は、戸籍調査が得意な行政書士への相談をおすすめします。

古い戸籍の読み方と注意点

戸籍をさかのぼっていくと、現在とは全く異なる形式の戸籍に出会うこともあるでしょう。古い戸籍は手書きであるうえ、現代では見慣れない文字や独特の言い回しで書かれているため、読み解くのに苦労することも少なくありません。

明治時代や戦前の戸籍の特徴(手書き、旧字体、異体字)

戸籍がコンピュータ化され始めたのは平成初期のことです。それまでは、役所の職員が手書きで戸籍を作成していました。そのため、古い戸籍は筆跡の癖やインクのかすれ・にじみによって判読が難しいケースが多々あります。

時代が古くなるほど、使われている文字も現代とは異なり、旧字体や異体字が多くなります。たとえば「会」と「會」、「広」と「廣」など、ごく一般的な漢字であるにもかかわらず、旧字体であると知らないと読めない場合もあります。漢数字は、改ざんを防ぐ目的で「壱」「弐」「参」「拾」といった大字が使われているのが一般的です。

さらに、明治時代の戸籍は当時の家制度に基づいて作られていました。現在の戸籍が夫婦とその子を単位とするのに対し、明治戸籍は戸主と呼ばれる家の代表者を中心に、その家に属する全員が記載される形式でした。戸主との続柄も現代とは異なる独特の表記がされています。

よくある読み間違い・戸籍用語の解説

戸籍を読み解く際に覚えておきたい用語があります。戸籍独特の用語が正確に読み取れると、家族の繋がりや相続関係を正しく把握できます。

  • 嫡出子: 法律上の婚姻関係にある父母から生まれた子。
  • 庶出子: 法律上の婚姻関係にない父母から生まれた子(古い戸籍の記載)。
  • 養子縁組: 法律上の親子関係を結ぶこと。
  • 認知: 婚姻関係にない男性が自分の子であると認めること。

手書き文字特有の読み間違いにも注意が必要です。日付や名前、地番などを読み間違えると、次にたどるべき戸籍が分からなくなったり、手続きが滞ったりする原因になります。文字の判読や用語の意味に自信がもてない場合は、専門家への相談をおすすめします。

相続手続きに必要な情報の見つけ方

相続の際に戸籍をたどる目的は、誰が法律上の相続人であるかを調べることです。亡くなった方の出生から死亡までの全ての戸籍を切れ目なく集め、出生・婚姻・離婚・転籍・子の出生・養子縁組・認知・死亡といった記録を確認します。

法律上、相続人となる可能性があるのは、亡くなった方の配偶者・子・親・兄弟姉妹などです。亡くなった時点で婚姻中であれば、配偶者は同じ戸籍に載っているので見つけやすいでしょう。意外と難しいのが、子を探すことです。配偶者との間の子は、本人と同じ戸籍に載っている場合が多いです。しかし、離婚歴があり、前の配偶者との間に子がいる場合や、認知した子がいる場合は、古い戸籍を見ないと載っていないケースがあります。

戸籍をひとつずつ遡り、親族関係を丁寧に確認することが大切です。注意が必要なのは、戸籍に載っている続柄は筆頭者(古い戸籍では戸主)から見た関係である点です。筆頭者以外の方同士の関係を知るためには、続柄だけでなく父母の欄や養子縁組をしているかの情報がヒントになります。

専門家が読み解く際の着眼点

戸籍調査に慣れている行政書士がどのように戸籍を読み解いているのか、着眼点をご紹介します。

「何を読みとるか」という点では、身分事項欄を徹底的に確認します。離婚・婚姻、養子縁組・離縁などは、配偶者と子が誰であるかを知るために必要な情報です。対象者が男性の場合は「認知」の記載がないかもチェックします。

相続人が亡くなっている場合、死亡年月日も重要です。相続人となるはずの方が被相続人よりも先に亡くなっている場合、代襲相続といって、相続人の子などが代わりに相続するケースがあるためです。また、「従前戸籍」「新戸籍編製」の表記は、前後の戸籍を結び付ける情報であり、次にどの戸籍をたどるかのヒントでもあります。

確実に効率よく進めるためには、戸籍の収集を漏れなく・切れ目なくおこなうこと、新しい戸籍から古い戸籍へひとつずつ遡ることが大切です。登場人物が多い場合もあるので、簡単な家系図を作成し、氏名・生年月日・死亡年月日といった情報や身分上の出来事(婚姻・離婚・養子縁組など)を書き込みながら進めるとよいでしょう。

記載があいまいな場合や判読が困難な場合は、戸籍謄本などを取得した市区町村役場の戸籍担当課に確認するのもひとつの方法です。

相続と戸籍調査の関係性

相続と戸籍調査は切っても切れない関係にあります。法律上の相続人が誰であるかを正確に知るためには、戸籍調査が欠かせません。

相続人の確定に不可欠な戸籍調査

戸籍の調査が不十分で、本来相続人となるべき人を見落としてしまうことは大きなリスクです。あとから相続人が名乗り出た場合、すでに完了したはずの遺産分割協議が無効になったり、親族間で深刻なトラブルに発展したりするおそれがあります。

遺された家族が、相続権のある前妻の子や認知された子の存在を知らないことも珍しくありません。無用なトラブルを避けるためにも、相続手続きのはじめの一歩として、戸籍をたどって相続人を確定させることが大切です。

遺産分割協議や相続放棄などとの関連性

遺言書がない場合や、遺言書に分け方の指定がない財産がある場合、相続人全員で遺産分割協議をおこない、誰がどの財産を相続するかを話し合って決めます。「相続人全員で」というのがポイントで、協議に参加していない相続人がいた場合、遺産分割協議は無効となります。遺産分割協議のあとの不動産の名義変更や預貯金の解約手続きなどをスムーズに進めるためにも、最初の段階で戸籍調査をおこなうことが重要です。

戸籍調査は相続放棄する際も必要です。相続放棄は、家庭裁判所に「私は相続人としての権利義務を放棄します」と申述する手続きです。遺産を引き継ぎたくない事情があるときに選択されます。相続放棄の申述をする際は、亡くなった方と自分の関係がわかる戸籍謄本などの提出が求められます。つまり、相続放棄する場合でも、戸籍を収集して自分が相続人であることを確認する必要があるのです。また、自分が放棄した場合に次に誰が相続人になるのかを確認することは、その後の関係者への影響を考慮する上でも役立ちます。

相続関係は生前に整理しておくのがおすすめ

戸籍を集める作業は時間と手間がかかるものです。特に本籍地が遠方であったり、戸籍が何度も作り替えられていたり、記載内容が読みづらかったりすると、思いのほか時間がかかり、相続の手続きがなかなか進まない場合もあります。

そのため、将来の相続に備えて、出生から現在に至るまでの戸籍謄本を取得して手元に置いておけば、いざという時に手続きがスムーズに進みます。生前整理というと、財産の整理をイメージする方が多いですが、戸籍の整理もまた、将来のための大切な備えのひとつと言えるでしょう。

自力での調査に限界を感じたら行政書士に依頼しよう

戸籍をたどる作業は、実際に取り組んでみると、意外と時間と手間がかかります。最初のうちは簡単そうに思えても、古い戸籍を遡るにつれて読み解くのが難しくなる場合も多いものです。相続関係を確認する場合は特に、見落としがあると後々トラブルになりかねません。不明点がある場合や、不安を感じる場合は、迷わず専門家に相談しましょう。

相談先としておすすめしたいのが、相続手続きが得意な行政書士です。行政書士にはそれぞれ専門分野がありますが、相続に強い行政書士は戸籍を読むことに慣れています。あなたに代わって全国の市区町村役場から戸籍を取り寄せ、法律的な観点から必要な情報を整理してくれるため、自分で調べるよりも確実性が高く、時間や労力の節約にもなります。

当事務所(行政書士佐藤秀樹事務所)では、相続の実績が豊富な行政書士が、戸籍を読み解くお手伝いをいたします。初回相談は無料です。家系図を作成して家族の歴史を記録に残したい場合も、相続の準備として戸籍を整理したい場合も、お気軽にご相談ください。

編集者

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