代襲相続の疑問を解決!相続のプロがわかりやすく教える、ケース別対策マニュアル

代襲相続の疑問を解決!相続のプロがわかりやすく教える、ケース別対策マニュアル

祖父が亡くなったときに父がすでに亡くなっていたので、自分が相続人になった——このようなケースを代襲相続と言います。本来相続するはずの人が先に亡くなっていた場合や相続する権利を失っていた場合に、その子どもなどが代わりに相続人となるしくみです。

本記事では、相続の専門家の視点から、代襲相続の基本や具体的なパターン、注意点などをわかりやすく解説します。ご自身やご家族にもしものことがあったとき、後悔のない選択をするために、ぜひ参考にしてください。

この記事の監修者

佐藤 秀樹

行政書士佐藤秀樹事務所 代表。
行政書士として30年以上の経験を持ち、法人設立、相続、建設業許可などの分野に精通。
お客様の未来を、「誠意」と「情熱」でサポートします。

目次

代襲相続の基本を理解する

まずは、代襲相続のしくみや適用範囲など、基礎知識をわかりやすく解説します。相続に関する全体像を把握したい方におすすめの内容です。

代襲相続とは?定義と基本的な仕組み

代襲相続とは、本来相続人となるはずだった方に代わって、その方の子どもなどが代わりに相続する制度です。たとえば、亡くなった方の子どもは法定相続人となりますが、親より先に子が亡くなっているケースもあります。その場合、法定相続人となるはずだった子どもの子(亡くなった方から見ると孫)が、代わりに相続人となります。

代襲相続人の範囲

代襲相続が認められるのは、原則として相続人の直系卑属、つまり子どもや孫などの血縁者に限られます。亡くなった方の子どもが先に亡くなっていた場合、その子どもの子(亡くなった方の孫)が代襲相続人となるのが典型例です。もし孫も亡くなっていてひ孫がいる場合は、ひ孫が相続します。

また、亡くなった方の兄弟姉妹が相続人となるケースでは、兄弟姉妹が先に死亡していれば、その兄弟姉妹の子(亡くなった方の甥・姪)が代襲相続人です。兄弟姉妹の代襲は一代限りであり、甥や姪の子が相続人となることはありません。

代襲相続の割合

代襲相続人が相続する割合は、本来相続するはずだった人の法定相続分と同じです。具体的なケースで考えてみましょう。

【代襲相続人が一人の場合】

相続人:子A、子Bの子C
法定相続人:A 2分の1、C 2分の1

被相続人には配偶者はなく、二人の子A、Bがおり、Bはすでに亡くなっています。Bの子であるCが代襲相続人となります。本来、このケースの法定相続分は、Aが2分の1、Bが2分の1です。CはBの権利をそのまま引き継ぐため、Cの相続分は2分の1となります。

代襲相続人が複数いる場合

代襲相続人が複数いる場合は、その人数で本来の相続分を等しく分けます。先に亡くなっている子の子(今回亡くなった方の孫)が二人いるケースでは以下の通りです。

【代襲相続人が複数の場合】

相続人:子A、子Bの子C・D
法定相続人:A 2分の1、C 4分の1、D 4分の1

先ほどのケースとの違いは、代襲相続人が複数いる点です。この場合、Bが相続するはずだった2分の1を二人で等しく分けあうので、CとDの相続分は4分の1ずつになります。代襲相続人が増えても、ほかの相続人の相続分には影響がありません。

ただし、代襲相続が発生することで相続に関わる人の数が多くなったり、亡くなった方との関係が遠い方が相続人となったりすることで、遺産分割協議がスムーズに進まなくなることもあります。

代襲相続が発生するパターン

代襲相続が発生する状況は主に3つあります。ここでは、代襲相続が実際に適用される代表的な3つのパターンについて解説します。

パターン1:法定相続人の死亡

典型的な代襲相続のパターンが、法定相続人の死亡によるものです。法定相続人となるはずの方が被相続人より先に亡くなっているケース、または被相続人と法定相続人が同時に亡くなったと推定されるケースがこれにあたります。

被相続人に二人の子A・Bがいて、子Aが被相続人より先に亡くなっていた場合、Aの子ども、つまり被相続人の孫が代襲相続人として相続権をもちます。

父Cと子Dの親子が交通事故などで死亡し、どちらが先に死亡したかが明らかでないケースでも代襲相続が生じる可能性があります。Dの子Eは、Dの相続に関して法定相続人となります。さらに、Cの相続に関しても、代襲相続人としてDに代わって相続人となります。

代襲相続となるのは、あくまでも本来相続するはずだった方が先に、または同時に亡くなった場合です。被相続人が亡くなった時点では存命だった法定相続人が、相続の手続きが完了する前に亡くなった場合は「数次相続」といい、代襲相続とは異なる対応が必要です。

パターン2:相続廃除

相続廃除とは、「この人には財産を相続させたくない」として家庭裁判所に請求することで相続権を失わせる制度です。相続廃除の申立てができるのは、「被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき」または「被相続人の財産について不当な処分をしたとき」に限られます。単に不仲であることや疎遠であることを理由に廃除することはできません。

相続廃除の対象となるのは、遺留分のある法定相続人、つまり配偶者・直系卑属(子など)・直系尊属(親など)です。廃除された相続人は、相続人としての地位を完全に失います。遺産分割協議に参加することも、遺産を受け取ることもできません。ただし、廃除された相続人に子がいれば、代襲相続が発生します。これは「親の行為によって子が不利益を被るべきではない」という考え方に基づくしくみです。

相続廃除の方法は2つあります。ひとつは生前にみずから家庭裁判所に申立てる方法、もうひとつは、遺言書に特定の相続人を廃除する旨を記す方法です。遺言書に相続廃除する旨が書かれている場合は、遺言執行者が家庭裁判所での手続きを進めます。

パターン3:相続欠格

相続欠格とは、法に反する重大な行為をしたことで、自動的に相続権を失うことをいいます。欠格事由は、民法891条に下記のように定められています。

  1. 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者
  2. 被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。
  3. 詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者
  4. 詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者
  5. 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者

被相続人を殺害した、遺言書を偽造・破棄した、無理やり遺言を書かせたなどの行為が欠格事由に該当します。相続欠格は、家庭裁判所による判断を待たず、要件に該当すれば当然に相続権が失われるのが特徴です。ただし、特定の相続人の相続欠格を主張する場合は客観的な証拠が必要です。

相続廃除の場合と同じように、欠格者の子どもには代襲相続が認められます。たとえば、被相続人の子が相続欠格に該当したとしても、その子(つまり被相続人の孫)は代襲相続人として法定相続分を受け取ることができます。

代襲相続のケーススタディ

ここまで代襲相続の基本を解説しましたが、理屈だけでは理解しづらいこともあります。今度は、実際に起こりうる3つの事例で、どのように代襲相続が適用されるかを具体的にイメージしてみましょう。

子どもが死亡している場合

代襲相続が発生するケースで多いのが、被相続人の子どもがすでに亡くなっている場合です。たとえば、父親が亡くなり、本来は3人の子どもたちが相続する予定だったとします。しかし、長男が父よりも先に亡くなっていた場合、長男の相続分は消滅するのではなく、長男の子(被相続人の孫)が代襲相続人となってその相続分を受け取ります。

本来、3人の子どもたちの相続分はそれぞれ3分の1ずつです。長男の子どもが代襲相続する場合、3分の1の相続分をそのまま引き継ぎます。親の相続権を子どもが引き継ぐことで、遺産が次世代へと継承されるしくみです。法定相続人が先に亡くなっている場合は、代襲相続の可能性を確認することが大切です。

兄弟姉妹が死亡している場合

代襲相続は、兄弟姉妹が相続人となる場合にも発生します。たとえば、被相続人に配偶者も子どもも親もなく、弟と妹が相続する予定だったとします。しかし、弟が被相続人よりも先に亡くなっていた場合、弟の子(被相続人の甥や姪)が代襲相続人となります。兄弟姉妹に関する代襲相続は、1代限りです。つまり、甥や姪が亡くなっていた場合、甥姪の子に相続権は発生しません。兄弟姉妹の代襲相続は相続関係が複雑になりやすいため、関係者全員の戸籍を正確に確認し、誤認のないよう注意が必要です。

再代襲が発生する場合

再代襲とは、代襲相続人になるべき人もまた、相続開始時点ですでに亡くなっている場合に、その子がさらに代襲相続することをいいます。たとえば、被相続人の法定相続人である子も、その子である孫もすでに亡くなっていた場合、孫の子(被相続人のひ孫)が相続人となります。

再代襲は直系の子孫においては制限がなく、何代にもわたって続く可能性があります。極端な話、代襲→再代襲→再々代襲……という形で、ひ孫や玄孫まで相続権が引き継がれることもあり得るのです。

再代襲が生じると、相続人の数が増えたり未成年者が相続人となったりすることもあります。家系図の作成や専門家のサポートを受けながら、手続きを丁寧に進めていくことが重要です。

代襲相続人の権利と義務

代襲相続人にはほかの相続人と同様の権利義務が生じます。実際に代襲相続人になったらどうすればよいのか、何ができるのかを確認しましょう。

代襲相続人の相続分

代襲相続人が取得する相続分は、本来の相続人の相続分と同じです。たとえば、被相続人に3人の子がいて、そのうちの一人が被相続人より先に亡くなっていた場合、その子が受け取るはずだった3分の1の相続分を、代襲相続人である孫が引き継ぎます。

代襲相続人が複数いる場合には、被代襲者の相続分を均等に分けることになります。先ほどのケースで、先に亡くなっていた子に二人の子がいた場合は、それぞれ6分の1ずつを相続します。

このように、代襲相続人の相続分はあくまで「代わりに受け取る」という考え方に基づいているため、代襲相続によってほかの相続人の相続分が増減することはありません。

代襲相続人ができること:遺産分割協議、相続放棄など

代襲相続人は、通常の法定相続人とまったく同じように相続に参加する権利をもちます。相続人のひとりとして、遺産の分け方を決める遺産分割協議に参加し、自身の相続分について主張したり、他の相続人と話し合いながら具体的な分配方法を決定することが可能です。

財産を一切相続したくない場合は、相続についての権利義務を放棄する選択肢もあります。相続財産に借金が多い場合や、親族間のトラブルに巻き込まれたくない場合などは、相続開始を知ってから3ヵ月以内に家庭裁判所に申し立てることで、相続を放棄できます。ほかの相続人に「放棄する」と伝えるだけでは相続放棄の効果は発生しない点に注意しましょう。

代襲相続人がすべきこと:必要書類の準備、手続きの流れ

代襲相続人だからといって特別な手続きや書類は必要ありません。まずはほかの相続人と同じように、自身が間違いなく代襲相続人であることを確認しましょう。相続手続きのはじめの一歩は、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍をたどり、相続人を確定させることです。

最初に、亡くなった方の死亡時の本籍地の市区町村役場で戸籍謄本を取得します。その戸籍謄本に記載されているひとつ前の本籍地の市区町村役場からさらに戸籍謄本を取り寄せることを繰り返し、出生まで遡ります。書類を全てそろえる作業には時間がかかることもあるため、早めに着手するのがポイントです。

代襲相続で起こりやすいトラブルと対策

代襲相続は相続人の関係が複雑になりやすく、対応が難しくなりがちです。ここでは、相続放棄や遺贈、特別受益などと代襲相続の関係を見ていきましょう。

相続放棄では代襲相続が生じない

法定相続人が相続放棄した場合には代襲相続は生じません。この点を誤解していると、トラブルの原因になります。たとえば、被相続人の子であるAが相続放棄した場合、Aの子であるB(被相続人の孫)には代襲相続権は発生しません。放棄は法定相続人であるA本人の意思に基づくものであり、血筋が続いていても引き継がれないのです。

一方で、Aが被相続人よりも前に亡くなっていた場合は、Bに代襲相続が認められます。自分は相続放棄をして子どもに譲るつもりだった場合や、子どもが代わりに何とかしてくれると思っていた場合は、思っていたのとはまったく違う結果となってしまいます。相続放棄を考えている場合は、手続きや効果をしっかり理解してから行いましょう。

代襲相続と遺贈:遺言書がある場合の相続

被相続人が遺言書を残していた場合、遺贈に注意が必要です。たとえば「長男Aに実家の土地と建物を相続させる」と書かれた遺言書があり、長男Aが被相続人より先に亡くなっているケースで考えてみましょう。

この場合、長男Aの子は、遺贈によって実家の土地と建物を受け取ることができません。「遺贈は、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは、その効力を生じない」とする民法第994条の定めが根拠となります。今回の遺言は、長男Aが死亡した時点で失効していることになります。ただし、「もし長男Aが死亡している場合は、代わりに孫Bに遺贈する」といった記載があれば、孫Bは遺贈により実家の土地と建物を受け取ることが可能です。

長男Aが先に亡くなっていた場合にどうするかが遺言書に記載されていなければ、実家の土地と建物については相続人全員の遺産分割協議で分け方を決めることになります。協議によって長男Aの子が受け取ることもできます。

代襲相続と特別受益:生前贈与の影響

特別受益とは、被相続人から結婚のための費用や住宅資金の援助などによって受けた利益を指します。簡単に言うと、ほかの相続人よりも被相続人から特別な利益を受けていたということです。相続の際は、特別受益の分を差し引いて相続する財産が公平になるように調整するのが一般的です。

特別受益者が被相続人よりも先に亡くなった場合、特別受益は代襲相続人に引き継がれます。たとえば、被相続人の子Aが生前に多額の住宅資金援助を受けていた場合、Aの子Bが代襲相続人になったとしても、Bの相続分は、Aの受けた援助を差し引いて調整されるのです。

遺言書によって、特別受益を相続財産に含めて相続分を決めることを免除することも可能です。これを特別受益の持ち戻し免除と言います。ただし、特別受益の金額が大きく、ほかの相続人の遺留分を侵害する場合には遺留分侵害額請求の対象となる可能性は残ります。

代襲相続と寄与分:貢献度による相続分の調整

寄与分とは、被相続人の財産の維持・増加に特別な貢献をした相続人に対して、その貢献度を考慮して相続分を増やす仕組みです。寄与分が認められるのは以下のような場合があります。

  • 被相続人の家業や事業を無償またはそれに近い形で手伝い、事業の維持や発展に大きく貢献した場合
  • 長期間にわたり献身的な介護や看護を無償で行い、医療費や介護費による財産の減少を不正が場合
  • 被相続人の不動産の維持管理を無償で行い、価値の減少を防いだり、修繕費用を負担したりした場合
  • 被相続人の生活費や医療費のために多額の資金援助を行った場合

特別な貢献をして寄与分を受け取れるはずの相続人が、被相続人より先に亡くなってしまった場合、代襲相続人は代わりに寄与分を主張できるというのが通説です。まずはほかの相続人と寄与分の評価や配分について話し合いましょう。折り合いがつかなければ、家庭裁判所に調停や審判を申し立てることもできます。ただし、その場合は特別な貢献をしたことを示す客観的な証拠が必要です。

代襲相続と家族信託:新たな相続対策

近年注目されている家族信託は、財産の管理や承継方法を柔軟に設計できる制度です。信頼できる家族に財産管理を託すことで、認知症や相続トラブルに備えることができます。家族信託の特徴は、民法で定められた相続のルールとは別に、信託契約に基づいて「誰に・いつ・どのように」財産を渡すかをあらかじめ指定できる点です。

典型的なケースでは、高齢や認知症などで財産管理が難しくなった場合に備えて、自分の財産を信頼できる子に財産の管理・処分を託し、自身の生活費などに充てます。自身が亡くなった後は、残った財産を子(または孫など)が最終的な受益者として承継します。

  • 委託者兼当初受益者: 親
  • 受託者: 子
  • 受益者(二次受益者): 子・孫など

親の自宅、預貯金、有価証券などの信託財産は相続財産とは区別され、誰が相続するかという問題は発生しません。親が亡くなったら、信託契約に定められたとおりに財産を承継すればよいのです。

もし受託者である子が先に亡くなった場合は、契約で後任者が定められていれば、指定された方が後任の受託者となります。契約で後任受託者が定められていない場合は、受託者の合意によって新たな受託者を選任します。あくまでも契約上の財産管理のため、代襲相続人が自動的に受託者の地位を引き継ぐことはありません。

代襲相続と遺留分:遺留分がない場合も

遺留分とは、法定相続人である配偶者・直系卑属(子・孫など)・直系尊属(親)に保証されている最低限の相続割合です。兄弟姉妹には遺留分がありません。代襲相続人は、本来の相続人の遺留分を引き継ぎます。被相続人に代わって相続する孫には遺留分があります。一方、被相続人の兄弟姉妹に代わって相続する甥姪には遺留分がありません。

遺留分は、法定相続分の半分です。たとえば、被相続人の子Aが2分の1、先に亡くなっている子Bの子(被相続人の孫)Cが2分の1の割合で相続する場合、AとBの遺留分はそれぞれ4分の1です。遺言書に「子Aに全財産を相続させる」と書いてあった場合、遺言の通りにするとCは財産をまったく受け取れません。しかし、Cには相続財産の4分の1の遺留分が認められているので、財産を多く受け取ったAに対して遺留分侵害額請求によって、遺留分に相当する金額の金銭の支払いを求めることができます。

代襲相続の手続きと注意点

代襲相続の場合も基本的な手続きは通常の相続と同様ですが、代襲相続人がいる場合に、特に注意するべきポイントを解説します。

戸籍を収集して相続人を確認する

まずは戸籍を収集して、被相続人(亡くなった方)の相続関係を明らかにしましょう。代襲相続では、被相続人の子どもや兄弟姉妹がすでに亡くなっているケースが多く、その子ども(被相続人の孫や甥・姪)が代襲相続人になります。つまり、通常よりも多段階にわたる戸籍の収集が必要です。

具体的には以下の戸籍が必要になります。

  • 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本
  • 代襲されるべき本来の相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
  • 代襲相続人自身の戸籍謄本

これらは、市区町村役場の戸籍窓口や郵送請求、マイナポータルなどで取得できます。ただし、戸籍は時代によって様式が異なり、読み方が難しい場合もあるため、不安がある場合は専門家に依頼するのが確実です。

遺産分割協議は相続人全員で

相続財産をどのように分けるかを話し合う遺産分割協議は、相続人全員が参加します。これは、代襲相続人がいる場合も同様で、代襲相続人も正当な相続人として協議に参加する権利があります。話し合いがまとまったら、遺産分割協議書を作成して、相続人全員が署名押印します。

遺産分割協議書は、不動産の名義変更や預貯金の解約などの相続手続きの際に必要です。相続人同士の折り合いがつかない場合は、家庭裁判所の調停や審判で第三者が間に入って合意を目指します。代襲相続人が複数いると意見の食い違いが起きやすいため、丁寧なコミュニケーションが重要です。

未成年は代理人が必要

代襲相続が発生した場合、未成年者が代襲相続人となるケースも珍しくありません。未成年者は契約などの法律行為を行う能力がないとされているため、本人が遺産分割協議に参加することはできません。代わりに親権者などの法定代理人が協議に参加します。

親権者も共同相続人となる場合、親権者は子の代理人にはなれません。親が遺産を多くもらえば子の不利益となり、子が遺産を多くもらえば親の不利益となる、利益相反の関係にあるからです。親権者が代理人となれない場合は、家庭裁判所に申し立てて特別代理人を選任してもらいます。特別代理人となるのに特別な資格は必要ありませんが、司法書士や行政書士などの専門家が選任されることが多いです。

相続放棄、相続税申告の期限に注意

代襲相続が発生すると相続の手続きに時間がかかりがちですが、期限の定めがある手続きには注意が必要です。特に注意したいのが、相続放棄と相続税申告・納税です。

相続放棄の期限は「自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヵ月以内」、相続税申告・納税の期限は「相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヵ月以内」です。

通常は、相続の開始があったことを知った日は、被相続人が亡くなった日です。しかし、代襲相続人の場合は相続の発生を知るのが遅れるケースがあります。たとえば、自分の親がすでに亡くなっていて、その祖父母が亡くなったことで自分が代襲相続人になったことを後から知った場合などです。このような場合は、自分が相続人であると知った日が起算点になります。

期限を過ぎると、放棄が認められず借金まで相続するリスクや、申告・納税が遅れたことに対するペナルティを受けるリスクがあります。自分が相続人であるとわかったら、すぐに行動しましょう。

まとめ

代襲相続は、本来の相続人が亡くなっていたり、相続権を失っていたりする場合に、その子どもなどが代わりに相続する制度です。亡くなった方からの関係が遠い方が相続人となったり、相続人の数が増えたりすることで、戸籍の収集や遺産分割協議などの手続きが煩雑になり、なかなか進展しないこともあります。

子どもが先に亡くなっているなど、将来的に代襲相続が発生する可能性が高い場合は、事前に家族で誰が相続人になるかを確認し、遺産分割について話し合っておくことが望ましいでしょう。将来の代襲相続に備えたい場合や、今まさに代襲相続が発生して困っている場合は、専門家に相談しましょう。

当事務所(行政書士佐藤秀樹事務所)では、相続に関する豊富な知見に基づき、お客様の円満な相続をサポートいたします。必要に応じて、当事務所を窓口として弁護士、税理士、司法書士などの専門家にも相談や手続きの依頼ができます。相談先に悩まず、まずは当事務所へお気軽にご相談ください。

編集者

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