生前贈与と相続どちらがお得?名義変更のベストタイミングと手続きの違いを徹底解説

生前贈与と相続どちらがお得?名義変更のベストタイミングと手続きの違いを徹底解説
この記事の監修者

佐藤 秀樹

行政書士佐藤秀樹事務所 代表。
行政書士として30年以上の経験を持ち、法人設立、相続、建設業許可などの分野に精通。
お客様の未来を、「誠意」と「情熱」でサポートします。

「生前贈与と相続どちらがお得?名義変更のベストタイミングとは?」

そろそろ遺産の名義変更について考えなければならないけれど、できるだけ税金や手続きの負担を減らしたいと思っている方は多いのではないでしょうか。

ご遺族に遺産を残すには、相続以外にも生前贈与という方法があります。

しかし相続と生前贈与では、税金や控除額、手続き方法などに大きな違いがあります。

そこで本記事では「生前贈与と相続の違いについて」や「名義変更はどちらのタイミングでするべきなのか」を詳しく解説していきます。ぜひ参考にしてください。

目次

【生前贈与と相続】名義変更のタイミングによる違いを比較

まずは生前贈与と相続それぞれの名義変更のタイミングによる違いを以下の項目ごとに比較していきましょう。

  • 税金面の違い
  • 手続きの複雑さの違い
  • 所有権移転のタイミングの違い

税金面の違い

生前贈与と相続では、かかる税金や控除の適用が大きく異なります。

以下に主な違いをまとめました。

税目相続生前贈与
贈与税なし・暦年贈与(基礎控除110万円超で課税)
・相続時精算課税制(2,500万円まで非課税※相続時に財産加算)
相続税基礎控除あり
(3,000万円+600万円×法定相続人の数)
なし
登録免許税固定資産税評価額×0.4%固定資産税評価額×2.0%
不動産取得税非課税固定資産税評価額×3%(住宅)/4%(事業用)

生前贈与は贈与税や不動産取得税が高くなるため、税負担を抑えたい場合は相続のほうが有利です。

ただし、110万円以下の暦年贈与などを活用し、生前贈与でも節税の工夫ができます。

財産の種類や相続人の状況に応じて、どちらを選択するか慎重に検討しましょう。

手続きの複雑さの違い

生前贈与と相続では、手続きの複雑さも異なります。

以下に主な違いをまとめました。

比較項目生前贈与相続
手続きの必要書類贈与契約書の作成が必要戸籍収集や遺産分割協議書の作成が必要
税金の申告贈与税の申告が必要(110万円超)基礎控除額を超える場合に相続税の申告が必要
不動産の手続き登記変更が必要(登録免許税が高め)相続登記が必要(2024年から義務化)
トラブルの可能性相続人同士のトラブルは少ないが、税務調査の対象になりやすい相続人同士のトラブルが発生しやすい(遺産分割協議など)

手続きの煩雑さで比較すると、生前贈与は税務手続きが面倒になりがちですが、相続は相続人同士の調整が難しくなる可能性があります。

相続税の発生有無や資産の種類、相続人の関係性などにあわせて、どちらを選ぶべきか検討しましょう。

所有権移転のタイミングの違い

相続と生前贈与では、所有権が移転するタイミングに大きな違いがあります。

生前贈与の場合、所有権は贈与契約が成立し、必要な手続きを完了した時点で移転します。

不動産などの財産を生前に贈与する場合は、贈与契約を交わし、登記変更をおこなうことで正式に受贈者の所有とみなされます。

そのため、贈与者の意思によって計画的に財産を移転できる反面、贈与税の申告や登記手続きが必要となる点に注意が必要です。

一方、相続の場合は、被相続人が亡くなった時点で自動的に相続人に所有権が移転します。

相続登記などの手続きは別途必要ですが、法律上は死亡と同時に相続が発生するため、契約などの手続きなしに財産の移転が行われます。

ただし、遺産分割協議が必要な場合は、相続人同士での話し合いや名義変更の手続きが発生するということも覚えておきましょう。

生前贈与でおこなう名義変更とは

ここでは生前贈与でおこなう名義変更について解説していきます。

生前贈与による名義変更の基本

生前贈与とは、生きている間に自分の財産を家族や第三者に無償で譲ること。名義変更とは、財産の所有者の名義を変更する手続きのことです。

生前贈与をおこなう際に名義変更が必要となる主な財産には、不動産、預貯金、自動車、株式などがあります。

まず、不動産(家や土地)を贈与する場合は、登記簿の名義変更、すなわち所有権移転登記をおこなう必要があります。

次に、預貯金の名義変更は原則として認められておらず、贈与を受けた方(受贈者)が新たに口座を開設し、資金を移す形で対応するのが一般的です。

また、自動車を贈与する場合は、新所有者の住所を管轄する運輸支局で名義変更の手続きをおこなう必要があります。さらに、株式を贈与する際は、証券会社を通じて名義変更の手続きを進める必要があります。

これらの財産の名義変更には、それぞれ特定の手続きや書類が必要となるため、事前に準備を整え、適切な対応をしましょう。

かかる税金と控除

生前贈与でおこなう名義変更にかかる主な税金は、「贈与税」「登録免許税」「不動産取得税」です。

次から詳しく見ていきましょう。

贈与税

贈与税は、個人が財産を無償で受け取った際にかかる税金です。1年間(1月1日~12月31日)の間に110万円を超える贈与を受けた場合、申告・納税が必要です。

通常の贈与(暦年贈与)は、基礎控除として110万円まで非課税で、それを超えた部分に対して下記の税率が適用されます。

課税価格(贈与額-110万円)税率控除額
200万円以下10%なし
300万円以下15%10万円
400万円以下20%25万円
600万円以下30%65万円
1,000万円以下40%125万円
1,500万円以下45%175万円
3,000万円以下50%250万円
3,000万円超55%400万円

また生前贈与には、贈与税を一定額控除できる”相続時精算課税制度”という特例制度もあります。

相続時精算課税制度とは、60歳以上の親や祖父母から、18歳以上の子や孫への贈与に適用できる制度で、累計2,500万円まで非課税で、それを超える部分に一律20%の税率が適用されます。

ただし、相続時精算課税制度を使った贈与分は、将来の相続時に相続財産として合算されるため、相続税との関係を考慮して利用しましょう。

登録免許税(不動産の名義変更時)

不動産を贈与により取得した場合、名義変更(所有権移転登記)の際に登録免許税が発生します。

贈与により発生する登録免許税の計算方法は、以下のとおりです。

固定資産税評価額×2.0%

たとえば、固定資産税評価額が2,000万円の不動産を贈与した場合の登録免許税は、40万円(2000万円×2.0%)です。

不動産取得税

不動産を贈与により取得した場合、不動産取得税が課税されます。

贈与により発生する不動産取得税の計算方法は、以下のとおりです。

【土地・住宅】固定資産税評価額×3%
【住宅以外(例:事業用不動産)】固定資産税評価額×4%

たとえば、固定資産税評価額2,000万円の住宅を贈与する場合、不動産取得税は60万円(2,000万円×3%)発生します。

主なメリット

生前贈与による名義変更をおこなうひとつ目のメリットは、相続税の負担を軽減できる可能性があることです。

特に、毎年110万円以下の暦年贈与をおこなうことで、贈与税が発生せずに計画的に財産を移転できます。

また、相続開始後の財産分割をスムーズに進めるため、事前に財産の名義を変更することで、相続時のトラブルを回避できる点もメリットのひとつと言えるでしょう。

贈与する側も生前に意思を明確に示せるため、財産の分配をみずから決定できます。

注意すべきデメリット

生前贈与による名義変更をおこなうデメリットとして、贈与税の負担が挙げられます。

たとえば、暦年贈与で110万円を超えてしまうと、高い贈与税率が適用されるため、相続時よりも税負担が大きくなる可能性があります。

もし相続時精算課税制度を利用して、贈与税が2,500万円非課税になっても、相続時には贈与した財産を含めて相続税が計算されるため、結果的に納税額が高くなるケースがあることも覚えておきましょう。

また、不動産を贈与する場合は、相続の場合よりも高額な登録免許税や不動産取得税が発生してしまうので注意が必要です。

加えて、一度名義変更をおこなうと、あとから取り消すことができず、贈与した財産は原則として取り戻せないため、慎重に判断する必要があります。

手続きの流れと必要書類

生前贈与による名義変更の一般的な手続きの流れは、以下のとおりです。

①贈与契約の締結

生前贈与は、口約束ではなく、書面(贈与契約書)を作成するのが望ましいです。特に、不動産や高額な財産の贈与では、後々のトラブルを防ぐために契約書の作成が推奨されます。

②必要書類の準備

名義変更をおこなうために、財産の種類ごとに必要な書類を準備します。(下記参照)

財産の種類必要書類
不動産贈与契約書,登記申請書,登記事項証明書,固定資産評価証明書,贈与者・受贈者の印鑑証明書,贈与者の登記識別情報(権利証),受贈者の住民票
預貯金贈与契約書,贈与者・受贈者の本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカードなど),金融機関の届出印
自動車贈与契約書,車検証,贈与者・受贈者の印鑑証明書,譲渡証明書,自動車税の申告書,自動車取得税の申告書(場合によって必要),ナンバープレート(変更が必要な場合)
株式贈与契約書,株式の発行会社の株主名簿の記録,贈与者・受贈者の本人確認書類(運転免許証など),株式譲渡申請書(証券会社の指定用紙)

③名義変更の手続き

財産の種類ごとに、所定の機関(法務局、銀行、運輸支局、証券会社など)で名義変更を行います。

④贈与税の申告・納付

基礎控除(年間110万円)を超える場合は、翌年3月15日までに贈与税の申告・納付が必要です。

相続でおこなう名義変更とは

相続による名義変更の基本

相続による名義変更とは、被相続人(亡くなった方)が所有していた財産の名義を、法定相続人や遺言で指定された相続人に変更する手続きのことです。

相続が発生すると、財産は自動的に相続人に承継されますが、名義変更の手続きを行わないと、相続人が正式に財産を管理・処分できません。そのため、速やかに名義変更をおこなうことが重要です。

かかる税金と控除

相続による名義変更でかかる税金は「相続税」「登録免許税」です。相続の場合「不動産取得税」はかかりません。

詳しい内容を次から解説していきます。

相続税

相続税は、被相続人(亡くなった方)の財産を相続した場合にかかる税金です。ただし、一定の基礎控除があり、相続財産がこの控除額を超えなければ相続税はかかりません。

相続税の基礎控除額は、以下の計算式で算出されます。

基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数

(例)相続人がふたりの場合

3,000万円+600万円×2=4,200万円

⇒相続財産が4,200万円以下なら相続税はかかりません。

もし相続額が基礎控除額を超えた場合、オーバーした金額(課税遺産総額)に対して、以下の税率と控除額が適用されて相続税が確定します。

課税遺産総額(法定相続分ごとの取得額)税率控除額
1,000万円以下10%なし
1,000万円超~3,000万円以下15%50万円
3,000万円超~5,000万円以下20%200万円
5,000万円超~1億円以下30%700万円
1億円超~2億円以下40%1,700万円
2億円超~3億円以下45%2,700万円
3億円超~6億円以下50%4,200万円
6億円超55%7,200万円

登録免許税(不動産の名義変更時)

不動産を相続で取得する場合、法務局で所有権移転登記(名義変更)をおこな必要があり、この際に登録免許税がかかります。

相続により発生する登録免許税の計算方法は、以下のとおりです。

登録免許税=固定資産税評価額×0.4%

生前贈与の場合、登録免許税の税率は2.0%となるため、相続による名義変更のほうが税率が低く、費用面でお得です。

さらに、2024年4月からは相続登記が義務化され、3年以内に登記を行わないと過料(罰金)が科される可能性があるため、速やかに手続きを進めるようにしましょう。

不動産取得税

不動産を相続で取得した場合、不動産取得税は非課税になるため、税負担を軽減できます。

なぜなら不動産取得税は、通常「売買や贈与」によって不動産を取得した際に課税される税金だから。相続は無償での取得とみなされるため、不動産取得税の課税対象にはなりません。

ただし、生前贈与を利用した場合は、固定資産税評価額の3%または4%の不動産取得税が課されます。相続よりも税負担が大きくなる可能性があるため、贈与と相続のどちらを選択するか慎重に検討しましょう。

主なメリット

相続による名義変更には、税負担の軽減や特例の適用といったメリットがあります。

たとえば、相続時の不動産の登録免許税は0.4%と低く不動産取得税も非課税となるため、生前贈与よりもコストを抑えられます。

また、相続税には3,000万円+600万円×法定相続人の数の基礎控除があるため、一定額までは課税されません。

さらに、配偶者控除(配偶者が相続する財産のうち「1億6,000万円」または「法定相続分」のどちらか高い金額まで相続税が非課税になる制度)や小規模宅地の特例(被相続人が住んでいた自宅や事業用の土地について、一定の条件を満たせば評価額を最大80%減額できる制度)を活用すれば、大幅な節税が可能です。

加えて、相続では法定相続人が確定したあとに財産分割を決めるため、慎重に分配を検討できる点も大きなメリットと言えるでしょう。

注意すべきデメリット

相続による名義変更にはいくつかのデメリットもあります。

まず、2024年4月から相続登記が義務化され、3年以内に名義変更を行わないと過料(罰金)が科される可能性があるため、手続きを怠ることができません。

また、相続財産の分配をめぐって相続人同士で意見が対立し、トラブルが発生するリスクもあります。特に、不動産を複数の相続人で共有する場合、売却や管理の際に合意が必要となり、スムーズに運用できないケースもあるでしょう。

さらに、相続財産が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えると、相続税の負担が発生します。

特に、不動産の評価額が高い場合は税額が大きくなり、納税のために不動産を売却しなければならないケースもあります。

また、相続登記や金融機関の名義変更には多くの書類が必要で、手続きが煩雑で時間がかかることも課題です。相続税の申告期限は相続開始から10ヵ月以内と決められているため、期限内に必要な準備を終えなければならず、手続きの負担が大きくなる可能性があります。

手続きの流れと必要書類

相続による名義変更の一般的な手続きの流れは、以下のとおりです。

①相続人の確定

相続が発生したら、まず相続人を確定させる必要があります。被相続人(亡くなった方)の戸籍謄本を取り寄せ、法定相続人を確認します。遺言書がある場合は、その内容を確認し、必要に応じて家庭裁判所で検認の手続きを行います。

②必要書類の準備

名義変更をおこなうために、財産の種類ごとに必要な書類を準備します。(下記参照)

財産の種類必要書類
不動産被相続人の戸籍謄本,住民票除票,相続人の戸籍謄本,遺産分割協議書(必要な場合),登記申請書,固定資産評価証明書,相続人の住民票,相続人の印鑑証明書
預貯金被相続人の戸籍謄本,住民票除票,相続人の戸籍謄本,遺産分割協議書(必要な場合),各金融機関指定の書類,相続人の本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカードなど)
自動車被相続人の戸籍謄本,車検証,相続人の戸籍謄本,遺産分割協議書(必要な場合),相続人の印鑑証明書,自動車税の申告書,陸運局指定の書類
株式・証券被相続人の戸籍謄本,相続人の戸籍謄本,遺産分割協議書(必要な場合),証券会社指定の名義変更書類,相続人の本人確認書類

③名義変更の手続き

財産の種類ごとに、所定の機関(法務局、銀行、運輸支局、証券会社など)で名義変更を行います。不動産の場合は法務局で所有権移転登記を申請し、預貯金や株式の場合は金融機関や証券会社で手続きを進めます。自動車の名義変更は運輸支局で行います。

④相続税の申告・納付(必要な場合)

相続財産の合計が基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合は、相続税の申告が必要です。申告期限は相続開始から10ヵ月以内であり、期限を過ぎると延滞税や加算税が発生するため、早めに手続きを進めることが重要です。

【ケース別解説】あなたの状況に最適な名義変更のタイミングは?

ここでは以下のケースごとに最適な名義変更のタイミングをアドバイスしていきます。

  • ケース1:親が高齢で認知症のリスクがある
  • ケース2:相続税が発生するほどの財産がある
  • ケース3:不動産の住宅ローンが残っている
  • ケース4:複数の相続人がいる

ケース1:親が高齢で認知症のリスクがある

【結論】
親が高齢で認知症のリスクがある場合、生前贈与のほうがよいケースが多い

親が高齢で認知症のリスクがある場合は、生前贈与を検討するのが賢明です。

なぜなら、認知症を発症すると判断能力が低下し、不動産の名義変更ができなくなる可能性があるからです。

成年後見制度(判断能力が低下した方に代わり、財産管理や契約手続きをおこなう方を家庭裁判所が選任する制度)を利用する方法もありますが、手続きが煩雑で資産の自由な運用が難しくなるため、事前に名義変更を済ませておくほうがスムーズです。

また、生前贈与を活用すれば、相続時の遺産分割協議によるトラブルを避けることができます。

特に、計画的に贈与をおこなえば贈与税の基礎控除を利用でき、相続時精算課税制度を活用すれば2,500万円まで贈与税が非課税となるため、税負担を抑えることも可能です。ただし、不動産取得税や登記費用などの負担が発生する点には注意が必要です。

ケース2:相続税が発生するほどの財産がある

【結論】
基本的には相続による名義変更のほうが有利になるケースが多いが、税負担や手続きの観点から慎重に検討する必要がある

相続税が発生するほどの財産がある場合、名義変更は生前贈与よりも相続のほうが有利なケースが多いです。

生前贈与は、贈与者の意思を反映しやすいメリットがありますが、贈与税の負担が大きく、特に高額な財産を贈与すると税率が高い傾向にあります。また、相続時精算課税制度を活用すれば一定額まで贈与税が非課税ですが、最終的に相続財産として計算されるため注意が必要です。

一方、相続は基礎控除額が大きく、相続税の税率も贈与税より低いため、税負担を抑えやすいです。

(例)
5,000万円の財産を子どもひとりが取得する場合
全額生前贈与する場合⇒約2,289万円の贈与税がかかる
相続する場合⇒相続税は約160万円

もちろん生前贈与で毎年110万円以下の金額を数十年にわたって贈与すれば、その分、相続税を減らすことができますが、令和6年(2024年)以降、相続税の計算において「相続開始前7年以内の贈与」が相続財産に加算されるようになったことも頭に入れておきましょう。

ケース3:不動産の住宅ローンが残っている

【結論】
住宅ローンが残っている不動産の名義変更は、相続のほうが有利な場合が多い

住宅ローンが残っている不動産の名義変更は、相続のほうが有利な場合が多いです。

なぜなら、ほとんどの場合相続時には、団体信用生命保険(住宅ローン契約者が死亡・高度障害になった際に、残りのローンを完済する生命保険)によりローンが完済されるため、相続人は負担なく不動産を取得できます。また、相続税には基礎控除が適用されるため、税負担も抑えられます。

一方、生前贈与を選択すると、ローンの一括返済を求められる可能性があり、さらに贈与税が高額になるため、大きな負担になってしまいます。

したがって、特別な事情がない限り、相続による名義変更を選ぶほうがおすすめです。

ケース4:複数の相続人がいる

【結論】
複数の相続人がいる場合、名義変更は相続のほうが有利なケースが多い

複数の相続人がいる場合、名義変更は相続のほうが有利なケースが多いです。

相続では、遺産分割協議によって各相続人の権利を調整できるため、公平な分配が可能です。また、相続税の基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)が適用されるため、税負担を軽減できるメリットがあります。

一方で、生前贈与をすると、一部の相続人だけに財産を移転することになり、不公平感が生じる可能性があります。また、高額な贈与税が発生するため、相続よりも税負担が大きくなるケースが多いです。

ただし、あらかじめ相続トラブルを避ける目的で、生前に遺言書を作成したり、少額の暦年贈与を活用したりする方法は有効でしょう。

よくある質問(FAQ)

ここでは生前贈与と相続の名義変更についてよくある質問に回答していきます。

Q1.名義変更しないとどうなる?リスクは?

名義変更をしないまま放置すると、不動産の売却や活用ができず、自由に取引を行えません。

特に相続の場合、長期間手続きをしないと、相続人が増えたり、遺産分割の調整が困難になり、トラブルの原因となることがあります。

また、税務面でもリスクがあり、適切な申告をしないと税務調査の対象となる可能性があります。

さらに、2024年から相続登記が義務化され、正当な理由なく手続きを怠ると罰則が科されることもあるため、早めの対応が必要です。

Q2.生前贈与と相続、どちらが税金面でお得?

税金面では、一般的に相続のほうが有利になる傾向があります。

生前贈与では、年間110万円までは非課税ですが、それを超えると贈与税が発生し、税率も累進課税のため高くなりがちです。

一方、相続では基礎控除が「3,000万円+600万円×法定相続人の数」と設定されており、相続税が発生するケースは比較的少ないです。

また、相続には配偶者控除や小規模宅地等の特例などの優遇措置があるため、高額な財産を受け継ぐ場合でも、相続のほうが節税効果が大きくなることが多いです。

そのため、単純に税金面だけを考えた場合、相続を選択したほうが負担を抑えられる可能性が高いと言えます。

Q3.名義変更の費用はいくらかかる?

名義変更の費用は、財産の種類によって異なります。

不動産の名義変更においては、登録免許税がかかり、相続の場合は固定資産評価額の0.4%、生前贈与の場合は2%の税率が適用されます。

車の名義変更については、運輸支局での手続きに1万円程度の費用がかかる場合があります。

Q4.相続時精算課税制度とは?メリットは?

相続時精算課税制度とは、生前贈与の際に一定額まで贈与税をかけず、相続時にまとめて精算する制度のことです。

相続時精算課税制度は、60歳以上の親や祖父母が18歳以上の子や孫に贈与する場合に適用され、累計2,500万円まで非課税で財産を移転できるしくみです。

贈与時点では贈与税が発生しないため、高額な資産を早期に受け継ぐことが可能です。ただし、相続時には贈与分を含めて相続税を計算する必要があり、場合によっては相続税の負担が増える可能性もあるため注意しましょう。

Q5.名義変更の期限はある?

名義変更の期限は、以下のように手続きの種類によって異なります。

◆不動産の相続登記
相続を知った日から3年以内に登記が必要
※違反すると10万円以下の過料(罰則)
◆銀行口座の名義変更
法的な期限はないが、長期間放置すると手続きが煩雑になりやすい
◆車の名義変更
相続後15日以内に変更手続きが必要(自動車運輸局へ届け出)

特に不動産については、法改正による影響も考慮し、早めに名義変更の手続きをおこなうことが重要です。

まとめ

生前贈与と相続には、それぞれ異なる税金や手続きの違いがあり、どちらが有利かは状況によって異なります。

一般的に、税金負担を抑えたい場合は相続が有利であり、早めに財産を移転したい場合は生前贈与が有効と言えるでしょう。

ただし生前贈与と相続はどちらがよいか一概に決められるものではなく、財産の種類や相続人の状況、税金対策を考慮しながら最適な方法を選択しましょう。

もしご自身でどちらがよいか判断できない場合は、専門家へ相談し、負担の少ない方法を見極めましょう。

編集者

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