相続の相談はどこにする?相談先ごとの特徴やできることを解説!

相続が発生したとき、どこに相談すればいいのかわからずに悩む方は多いのではないでしょうか。実際、相続の相談ができる場所は公的機関や金融機関、税理士・司法書士・弁護士・行政書士などの専門家とさまざまです。
本記事では、相続の主な相談先が取り扱っている業務や相談できる内容について解説します。あなたの状況に合った相談先を選び、相続の手続きをスムーズに進めましょう。
そもそも相続に相談は必要?
「実家や親の貯金を受け継ぐだけなら、どこかへ相談する必要はないのでは?」「我が家はそれほど財産が多いわけでもないし…」と思う方もいるかもしれませんが、実際に手を着けてみると、相続の手続きはかなり煩雑です。
相続人が誰か、相続財産は何がいくらあるのか明らかになっていますか?相続人どうしが話し合いによって遺産を分けたら、遺産分割協議書の作成が必要です。場合によっては不動産や車などの名義変更、相続税の申告などもおこないます。相続は一生に何度もあることではありませんので、いつまでに何の手続きが必要かをご自身で把握してきちんと進めていける方は稀です。
きちんと手順を踏んで手続きを行わないと、遺産分割の話し合いが一からやり直しになったり、延滞税などのペナルティを受けたりするリスクもあります。相続の手続きに少しでも不安があれば、気軽に相談することをおすすめします。
相続の相談先はどこが正解?
相続の相談先として、行政機関や金融機関、専門家などがありますが、どこが一番よいとは一概には言えません。相続と一口に言っても、遺言、相続人、相続財産など相続を取り巻く状況はそれぞれ違います。相談先はあなたの状況に合わせて選びましょう。
たとえば、相続財産が高額で相続税申告が必要になりそうな場合は、税務署や税理士などに相談します。不動産がある場合は、法務局や司法書士に相続登記(名義変更)の相談ができます。あなたの必要な手続きができる場所や、あなたの悩みを解決してくれるところを相談先として選ぶことが重要です。
公的機関に相談する
市町村役場、税務署、法務局など、相続の手続きをする公的機関では、必要な手続きの内容や準備する書類を確認できます。なるべく自分で手続きをおこないたい場合や、とりあえず何をしなければならないのか知りたい場合は、まずは各機関で情報収集すると必要な手続きの全体像が見えてくるかもしれません。
市区町村役場(自治体)|保険・年金や税金の手続き
市区町村役場は、親族が亡くなったら一度は訪れる場所です。死亡届の提出、火葬許可申請などの亡くなった直後におこなう手続きのほか、国民健康保険や国民年金、固定資産税などの手続きも自治体でおこないます。自治体でおこなう手続きは窓口で書類を書いて提出するだけで終わるケースも多いため、あまり心配せず早めに手続きに行きましょう。
自治体によっては「おくやみ窓口」を設置し、親族が亡くなった際に自治体でおこなう手続きをひととおり案内してくれる場合もあります。ただし、個別の遺産分割についての相談や提出書類の作成はしてもらえませんので注意しましょう。
税務署|相続税申告や準確定申告
税務署では、準確定申告や相続税申告の相談ができます。自営業や大家さんなど生前に所得があった方が亡くなった場合、4ヵ月以内に亡くなった年の分の準確定申告をします。また、相続財産の評価額が基礎控除額を超えると相続税の申告も必要です。
税務署では申告書の書き方や、各種特例の適用条件について一般的な説明を受けられるほか、個別のケースの申告相談もできます。相続税は相続財産の評価額や相続人の数などによって申告が必要かどうかが変わるため、早めに確認するのがよいでしょう。
ただし税務署はあくまでも公平公正な課税のために相談を受け付けているので、申告書の作成や、節税アドバイスは行っていません。サポートが必要な場合は税理士へ依頼しましょう。
法務局|相続登記
法務局では登記申請の相談ができます。相続財産に土地や建物がある場合、相続登記(名義変更)が必要です。2024年4月に相続登記が義務化されたため、誰が引き継ぐかが決まったら速やかに手続きをしましょう。
法務局では提出書類の書き方やそろえるべき書類の確認ができます。相続登記は戸籍謄本や固定資産課税明細書など添付書類が多いため、事前に必要書類を確認して集めることで手続きがスムーズに進みます。ただし、戸籍の収集や遺産分割協議がうまく進まない場合のサポートは法務局ではできません。必要に応じて弁護士や司法書士への依頼も検討しましょう。
商工会議所|事業承継についての相談
商工会議所は、商工業者が加入できる会員制の公共経済団体で、経営者向けのセミナーなどさまざまなサービスを行っています。被相続人が事業を営んでいる場合、相続や事業承継に関する相談会で企業や店舗の承継について相談可能です。ただし、商工会議所の会員でないと相談ができないケースもあるため注意しましょう。
個人事業主や中小企業経営者の相続は、単に資産を分配するだけでなく、事業の継続性も考慮する必要があります。特に、家族が経営を引き継ぐ場合や、従業員に事業を譲渡するケースでは、慎重な計画が求められます。
商工会議所では、事業承継に関する基本的なアドバイスを提供するほか、専門家への相談窓口を紹介してくれることもあります。また、事業承継のための補助金や支援制度に関する情報を得られる場合もあるため、活用する価値は大きいです。
法テラス|弁護士や司法書士への無料相談
法テラス(日本司法支援センター)は、国が設立した法的トラブル解決のための総合案内所です。経済的に困っている方を対象に、弁護士や司法書士との無料相談も行っています。同じ相談内容について1回30分間の相談を3回まで利用できます。相談だけで解決せず、弁護士や司法書士に依頼する場合は、一定の条件を満たせば費用の立替えが可能です。
相続人どうしのトラブルが発生した場合や、遺産分割協議の進め方、相続放棄の手続きについてわからないことがある場合には、直接専門家に相談するのではなく、まずは法テラスに相談する方法もあります。特に弁護士は相談料が高い傾向にあるため、金銭的に余裕がない中で法的トラブルの相談をしたい方にとっては、法テラスは強い味方です。
公的機関に相談するメリット
公的機関は行政サービスの一環として相談窓口を設けているため、相談は基本的に無料です。何から手を付けていいかわからない方は、まず公的機関で情報を得て進め方の指針を得るとよいでしょう。自分で手続きをおこなうのが難しいと感じたら、必要に応じて税理士・司法書士・行政書士などの専門家に依頼すれば、コストを抑えつつスムーズに手続きを進められます。営利目的のサービスと違い、中立的な立場で情報提供してもらえるので、特定の専門家や企業に誘導される心配がないこともメリットです。
公的機関に相談するデメリット
公的機関では相続に関する基本的な情報提供やアドバイスはおこないますが、実際の手続きはやってもらえません。たとえば、市区町村役場では、固定資産税の名義変更手続きは自治体では不要で、法務局での相続登記が必要だと教えてくれます。法務局に行くと、登記申請のための書類の書き方や必要書類を教えてくれます。しかし、実際に書類を書いたり集めたりするのは相談者自身です。
公的機関では相談はできても手続きの手間は減りません。戸籍などの書類収集や、書類の作成・提出も誰かに任せたいと思った場合には、自分で税理士・司法書士・弁護士・行政書士などの専門家に依頼する必要があります。
また、基本的に相談時間は平日の日中に限られ、より詳しい相談をおこなう場合は対面での相談となるケースが多いです。忙しい中で平日に時間を作って相談に行かなければならないのはデメリットと言えます。
金融機関に相談する
亡くなった方の預貯金の管理や遺産の運用に関する相談は、銀行や信託銀行を通じておこなうことができます。金融機関だけで全ての相続手続きが完結するわけではないため、必要に応じて税理士・弁護士・司法書士などの専門家と上手に連携することが大切です。
銀行|口座の名義変更
亡くなった方が銀行に口座をもっていた場合、銀行は死亡の事実を知ると口座を凍結します。親族からの連絡がなくても、新聞のおくやみ欄などの情報から口座を凍結するケースもあります。凍結された口座は取引ができなくなり、相続人が正式な手続きを行わない限り、預貯金を受けとることはできません。
相続人どうしで遺産分割の話し合いが終わり預貯金の配分が確定したあと、被相続人の口座を解約するか、相続人の名義に変更する手続きをおこないます。口座を解約する場合、遺産分割協議の内容に基づき、指定の相続人に資産が振り込まれます。特定の相続人が継続的に口座を管理する場合、名義変更が必要です。銀行によって対応が異なるため、早めに相談し、必要書類を確認しておくことが大切です。
信託銀行|資産運用や遺産整理サービス
信託銀行は、通常の銀行とは異なり、相続に関するコンサルティングや、遺産の管理・運用サービスを提供しています。特に、資産が多い場合や、不動産・株式などの管理が必要な場合に、信託銀行を活用するとスムーズに相続の手続きを進められることがあります。
信託銀行の遺産整理サービスは、相続人や相続財産の確認、財産の評価、遺産分割協議、名義変更、財産の運用・管理などの一連の業務を依頼できるのが特徴です。税理士や司法書士などの専門家と提携しており、煩雑な手続きを一括で進めることができるため、相続財産が多い場合に適しています。
遺言信託のサービスでは、被相続人が生前に信託銀行に遺言書を預け、亡くなったあとに信託銀行が遺言執行者となり、遺言の内容に基づいて相続手続きをおこなうしくみです。遺言書の紛失や改ざんを防ぎ、亡くなった後の手続きもスムーズです。
金融機関に相談するメリット
信託銀行では、資産運用や税務の知識をもつ専門家が対応してくれるため、相続財産の適切な管理や分配についてアドバイスを受けることが可能です。特に遺産が多い場合や、相続税対策を検討している場合に役立ちます。
信託銀行を活用すれば、遺産を単に相続するだけでなく、投資信託や不動産運用など、資産を増やすための選択肢を得ることができます。相続財産を将来に向けて有効活用するためのプランニングができる点は、ほかの相談先にはない強みです。
金融機関に相談するデメリット
銀行や信託銀行は、金融資産に関する手続きには対応できますが、相続全体の手続きを全ておこなえるわけではありません。信託銀行の遺産整理サービスを利用すれば手続きを一括で依頼できるケースもありますが、司法書士や税理士などの専門家への報酬のほかに信託銀行への手数料が発生するため、コストが割高になる傾向があります。
専門家に相談する
税理士・弁護士・司法書士・行政書士などの専門家にも相続についての相談ができます。専門家ごとに担当する業務が異なるため、相談内容に応じて適切な相談先を選ぶことが重要です。ここでは、相続に関わる代表的な専門家の業務内容と、具体的にどのような相談ができるのかを詳しく解説します。
税理士|相続税申告や節税
税理士は税金の専門家で、相続税の申告や節税について相談できます。相続税は亡くなってから10ヵ月以内に申告と納税が必要です。申告が遅れたり誤っていたりすると、あとから思わぬペナルティを受ける可能性があります。
相続税の基礎控除額である「3,000万円 +(600万円 × 法定相続人数)」を超える財産を相続する場合や、不動産や株式などの評価が難しい資産を相続する場合は、早めに税理士に相談すると安心です。相続を専門としていない税理士もいるため、依頼する際はホームページなどで実績や対応業務を確認しましょう。
税理士に相談するべきケース
- 相続税が発生するかわからないので計算してほしい
- 相続税をできるだけ減らすために、どのような方法があるのか知りたい
- 複数の不動産を相続する予定だが、どのように分ければ税負担を抑えられるか
- 亡くなった方の所得税について準確定申告が必要と言われたが、申告のしかたがわからない
弁護士|相続トラブル対応
弁護士は主に相続トラブルに対応します。たとえば、相続人どうしの争いが発生した際に本人に代わって交渉したり、調停や訴訟に対応したりできるのは弁護士だけです。当事者同士での話し合いでの解決が難しい場合は、弁護士に相談するのがよいでしょう。
具体的な相談内容
- 兄弟と遺産の分け方でもめているので、法的な解決策を知りたい
- 親が生前に特定の相続人だけに財産を渡していたが、不公平ではないか
- 亡くなった親の遺言に納得がいかないが、どう対応すればよいのか
- ほかの相続人と話し合いができず、遺産分割協議が進まない
司法書士|相続放棄、不動産の名義変更
司法書士は登記の専門家です。相続財産に不動産がある場合は相続登記(名義変更)を司法書士に依頼するのが一般的です。多くの司法書士が、相続登記の際に必要な遺産分割協議書などの書類作成も一貫して行っています。そのほかに、相続放棄の書類作成や家庭裁判所への提出も代行してもらえます。
具体的な相談内容
- 親の家を相続したので、自分の名義に変更したい
- 亡くなった親に借金があるので、相続放棄の手続きをしたい
- 不動産を売却する前に相続登記が必要だが、手続きがわからない
行政書士|遺産分割協議書作成、相続人調査
行政書士は、相続人と相続財産を調査のうえ、遺産分割協議書や相続関係図などの相続手続きに必要な書類を作成できます。銀行や官公庁に提出する申請書など、ほかの士業が専門とする業務以外の幅広い書類作成や提出を代行できるのが特徴です。行政書士は特定の業務を専門分野としているケースが多いので、相続を得意としている行政書士を探して依頼するのがよいでしょう。
具体的な相談内容
- 遺産分割協議書を作りたいが、どう書けばいいかわからない
- 戸籍を収集して相続人を調べてほしい
- 行政機関や銀行の手続きが複雑なので、書類作成を依頼したい
- 車の名義変更を依頼したい
専門家に依頼するメリット
専門家に依頼するメリットのひとつは、手続きを正確におこなえることです。専門家は相続に関する豊富な知識と経験をもっており、複雑な手続きを伴う場面でもミスのリスクがほとんどありません。手続きを正確におこなうことで、後々のトラブルや無駄な費用を避けられます。
また、全ての手続きを相続人が自分たちでおこなうには、手続きについて調べ、必要書類を収集したり記入したりする手間がかかります。特に、忙しい方や遠方に住んでいる方にとっては骨の折れる作業です。専門家に一任することで、相続人の手間が抑えられ、精神的な負担も減ります。
専門家に依頼するデメリット
専門家に依頼する際には報酬が発生します。特に、相続財産の評価額が高額な場合や複雑な手続きが必要な場合は、報酬が高額になりやすいので、事前に費用を確認しておくことが大切です。
依頼するのに費用はかかるものの、前述のようにメリットが大きいため、多くの方が専門家に手続きを依頼しています。一気通貫で何もかも依頼すると予算オーバーの場合は、書類の取得など手続きの一部を自分でおこなうことで費用を抑えられるケースもあります。
専門家の無料相談を活用する方法
税理士や司法書士などの専門家は、初回相談を無料で実施している場合があります。相続について疑問点や不安なことがある方は、まずは専門家の無料相談を利用するのもひとつの方法です。無料相談の限られた時間を有効活用するためには、事前準備にコツがあります。
相談したい内容を整理する
まずは自分が相談したい内容を整理しましょう。自分が相続のどの部分で不安や疑問を抱えているのかを明確にすることによって、より適切な相談先を選ぶことができます。ほかの相続人と話ができる関係であれば、専門家に相談しようと思っていることを事前に伝えておき、相談内容の擦り合わせをするとよいでしょう。
無料相談は一般的に30分〜1時間程度と時間が限られているので、事前に聞きたいことをリストアップしておくと効率よく相談でき、専門家も状況に即したアドバイスがしやすくなります。専門用語がわからなくても、「相続税の申告が必要かわからない」「親の財産を兄弟で平等に分けなくてもいいのか」など、疑問に思ったことのリストで十分です。
相談先を決める
専門家によって対応している業務が異なるので、あなたの相談内容にもっとも適した専門家を選ぶことが大切です。複数の相談事項があるときは、もっとも相談したいことに合わせて相談先を決めるのがよいでしょう。
専門家どうしで提携している場合や、複数業種の専門家がひとつの事務所に在籍している場合もあり、実際には一ヵ所の事務所に相談すれば必要な手続きが全て終えられるケースも多いです。相談先を選ぶときには、専門家の評判や実績を調べ、相続に強い専門家を選びましょう。事務所のWebサイトやSNSのほか、口コミやレビューも参考になります。
相談の際の資料を用意する
相続の相談の際は、相続人や相続財産の内容など情報が多いほど具体的なアドバイスがしやすくなります。相談先の専門家に必要な資料や情報を事前に確認し、できる限り準備をして相談に臨みましょう。遺言書がある場合はその旨を伝えておくと相談がスムーズに進みます。ただし、自宅などで遺言書を発見した場合は、開封せずに専門家の指示を仰ぎましょう。
必要な情報の例
- 被相続人の情報
- 相続人の情報
- 遺言書の有無
- 被相続人の親族関係
- 金融資産や不動産の内容
信頼できるかを見極める
無料相談では、単にわからないことを教えてもらうだけではなく、手続きを安心して任せられるかを見極める場でもあります。信頼できる専門家であれば、親身になって相談に乗り、納得のいく説明をしてくれるはずです。
実績が豊富で良い口コミがたくさん書かれていても、あなたが依頼したいと感じるとは限りません。説明がわかりやすいか、状況に合った提案をしてくれるか、手続きの流れや費用は明確かなどの観点から、専門家が信頼に値するかを確認しましょう。
書類作成や手続きは依頼できないため注意
無料相談は、あくまで相談の範囲にとどまる場合がほとんどです。書類作成や実際の手続きを依頼する場合は、別途費用が発生します。そのため、無料相談だけで全ての問題が解決するわけではないことを理解しておくことが重要です。
無料相談をうまく活用すると、自分が今後どのような手続きが必要なのかを理解し、実際の依頼に進むための準備ができます。限られた相談時間の中で無理に全てを解決しようとせず、まずはアドバイスを受けて、次にどのようなステップを踏むべきかを専門家と一緒に検討しましょう。
まとめ
相続の手続きが必要なタイミングは突然やってきます。相続人の方それぞれが忙しい中で手続きを進めるのは、実はかなりたいへんです。最初は自分たちで何とかしようと思ったけれど、やることが多くて途方に暮れてしまった……という方も少なくありません。
自分で全てを解決しようとせず、わからないことや不安なことがある場合は手続きをおこなう機関や専門家に相談するのも選択肢のひとつです。手続きの手間や精神的ストレスを少しでも軽減し、スムーズに相続の手続きを進めましょう。
当事務所(行政書士佐藤秀樹事務所)では、弁護士、税理士、司法書士と提携しており、相続に関するお悩みにワンストップで対応いたします。初回のご相談は無料ですので、小さなことでもお気軽にご相談ください。