建設業許可の取得条件とは?法人・個人や一般・特定別に解説!

建設業許可には法人・個人を問わず共通する基本条件があり、さらに一般建設業と特定建設業では求められる基準に大きな違いがあります。

経営業務の管理責任者や専任技術者の配置、財産的基盤の確保、誠実性や欠格要件の確認など、複数の要件を満たすことが不可欠です。

本記事では、建設業許可を取得するための条件を、法人・個人別、一般・特定別にわかりやすく解説します。これを読めば、申請前に整えるべき体制や準備すべきポイントが明確になり、許可取得への第一歩を踏み出せるはずです。

目次

【取得条件確認の前に】建設業許可についておさらい

建設業許可の取得条件を確認する前に、まずは建設業許可についておさらいしていきましょう。

建設業許可とは?

建設業許可とは、一定規模以上の工事を請け負う際に必要となる国や都道府県の認可制度を指します。

具体的には、建築一式工事で1,500万円以上、または延べ面積150㎡以上の木造住宅工事、その他の工事で500万円以上の請負契約を結ぶ場合には必ず許可が求められます。

この制度は、事業者の経営基盤や技術力、法令遵守体制を審査し、健全な建設業の発展と発注者の保護を目的としています。許可を得ることで公共工事への参入や金融機関からの信用力向上にもつながり、建設業を継続的かつ安定的に営むための重要な基盤となるでしょう。

建設業許可の種類は大きく2つ

建設業許可は「一般建設業」と「特定建設業」の2種類に大別されます。

区分特徴主な対象工事下請契約に関する基準
一般建設業下請契約の金額が一定規模未満の工事を元請として請け負う場合に必要住宅工事や改修工事など中小規模の案件下請契約1件あたり4,000万円未満(建築一式工事は6,000万円未満
特定建設業大規模工事を元請として行い、下請契約が一定額を超える場合に必要高層ビル建設、橋梁・道路・ダムなどの公共インフラ工事下請契約1件あたり4,000万円以上(建築一式工事は6,000万円以上

自社の工事規模や受注形態に応じて、適切な許可を選ぶことが重要です。

建設業の業種は全部で29種類

建設業許可は、請け負える工事の種類によって29業種に分けられています。大きく分けると「一式工事業(2業種)」と「専門工事業(27業種)」の2カテゴリーです。

【一式工事業】

  • 建築一式工事
  • 土木一式工事
    → 大規模な建物や道路、橋など、総合的に工事を取りまとめる業種。

【専門工事業(27業種)】
以下は一式工事に含まれる部分的な工事を担う業種です。

区分業種名主な工事例
木工系大工工事木造建築の構造工事
鉄骨・基礎とび・土工・コンクリート工事足場、基礎、コンクリ打設
屋根・外装石工事、屋根工事、タイル・れんが・ブロック工事、鋼構造物工事、鉄筋工事、板金工事、防水工事、塗装工事、内装仕上工事外壁、屋根、塗装、防水、内装仕上げなど
設備系電気工事、管工事、機械器具設置工事、消防施設工事、水道施設工事、清掃施設工事、電気通信工事給排水、空調、電気配線、通信設備
外構・造園舗装工事、しゅんせつ工事、造園工事、ガラス工事、熱絶縁工事道路舗装、庭園整備、断熱工事

合計で「一式工事業2業種+専門工事業27業種=29業種」です。

建設業許可の有効期限と更新手続き

建設業許可の有効期限は5年間です。更新には有効期限の満了日の30日前までに手続きをおこなう必要があり、期限を過ぎると許可は失効します。更新では新規取得時と同様に、経管・専任技術者の要件や財産要件を再度確認されます。

【更新の流れ】

  1. 必要書類の準備(決算書、経管・技術者の証明書など)
  2. 更新申請の提出
  3. 審査・確認
  4. 新しい許可通知の交付

許可の継続は取引先の信用維持に直結するため、更新期限を把握し余裕をもって手続きしましょう。

建設業許可の取得条件①経営業務の管理責任者(経管)がいること

建設業許可を得るためには、工事の遂行だけでなく会社全体の経営を適切に管理できる人物の存在が不可欠です。

その役割を担うのが「経営業務の管理責任者」であり、経験や実績によって要件が定められています。 詳しい内容を次から見ていきましょう。

経営業務の管理責任者(経管)とは?

建設業許可を取得するうえで必須となるのが「経営業務の管理責任者」、通称「経管」です。

経管とは、建設業を適切に運営するために必要な経営経験や管理能力を持ち、事業全体を統括できる人物のことです。

建設業許可の取得には必ず経管の設置が求められ、法人では役員、個人事業主では本人や支配人として通算5年以上の建設業経営経験を有していることが原則条件です。

経管の存在は、建設業が高額かつ社会的影響の大きい事業であることを踏まえ、国や都道府県が許可を与える際の重要な判断基準となっています。

経管の要件

経営業務の管理責任者になるためには、一定以上の経営経験が必須条件です。一般建設業許可の場合は「建設業の経営に関し5年以上の経験」が必要で、特定建設業許可では「建設業の経営に関し7年以上の経験」が求められます。

ここでいう「経営経験」とは、取締役や代表、個人事業主として実際に経営業務を担った期間を指し、単なる従業員や現場監督の経験は含まれません。

また、経験年数だけでなく、経営上の意思決定や資金調達、取引管理などに携わっていたことも重要です。

許可申請の際には、登記事項証明書や確定申告書、工事契約書などを提出し、経験を裏付ける必要があります。要件を満たす経管が不在だと、許可申請は受理されず、事業拡大や大規模工事の受注に支障が生じるため、早めの人材確保が欠かせません。 

法人・個人での違い

経営業務の管理責任者に求められる条件は、法人か個人事業主かによって異なります。

法人の場合は、取締役や執行役員、あるいはこれに準ずる地位にある者が経管となる必要があります。たとえば建設会社の役員として経営判断を担ってきた人物が該当し、形式的に名前だけ載せている役員では認められません。

一方、個人事業主が建設業許可を取得する際は、申請者本人が経管となることが原則です。つまり、他人に任せるのではなく、みずからが経営経験を積んでいることが必須です。

ただし、法人・個人いずれの場合でも、要件を満たす経管を置けなければ許可は下りません。実務では、法人化を検討する際に経管候補者を確保しておくケースも多く、事業規模や将来の展開に応じて、法人・個人それぞれの立場に適した経管の要件を確認しておくことが重要です。

建設業許可の取得条件②専任技術者が営業所ごとにいること

経営面の責任者に加え、技術的な面で工事を管理できる体制を整えることも重要です。

その中心となるのが「専任技術者」です。具体的な内容と専任技術者として認められるための要件について見ていきましょう。

専任技術者とは?

建設業許可を取得する条件のひとつが「営業所ごとに専任技術者を配置すること」です。

専任技術者とは、建設工事の技術的な部分に責任を持ち、適正に施工を管理する役割を担う人物のことです。また営業所とは単なる事務所ではなく、契約締結や工事管理をおこなう拠点を指します。

そのため、形式上の配置ではなく、実際に常勤して日常的に指導・監督をおこなえる必要があります。

専任技術者は建設業の品質確保や安全性の要であり、発注者に対しても「工事を技術的に遂行できる体制が整っている」といった信頼を示す存在です。

専任技術者がいないと、建設業許可を受けられないだけでなく、工事を適切におこなう能力が疑われ、取引先や金融機関からの信用にも影響します。まさに建設業の根幹を支える重要なポジションと言えるでしょう。

専任技術者に認められる資格・経験とは?

専任技術者になるには、一定の資格または実務経験が必要です。

一般建設業の場合、建設業法で指定された国家資格(例:1級・2級施工管理技士、建築士など)を保有しているか、あるいは学歴や経歴に応じた年数の建設業実務経験(例:指定学科卒業者は3〜5年、学歴不問の場合は10年以上)が必要です。

特定建設業では、より高度な技術力が求められるため、原則として1級施工管理技士や建築士など上位資格の保有者が要件です。

いずれの場合も、営業所に常勤し実際に施工の指導・監督をおこなえることが必須であり、資格取得の計画や人材確保を早めに進めることが重要です。

法人・個人での違い

専任技術者の配置要件は、法人か個人事業主かによって若干異なります。

法人の場合は、営業所ごとに1名以上の専任技術者を置く必要があり、その者は役員や社員として常勤していなければなりません。形式的に名義だけを借りての配置は認められず、実態として営業所に勤務していることが必須です。

個人事業主の場合は、申請者本人が資格や経験を満たしていれば専任技術者となれます。ただし営業所が複数ある場合は、それぞれに専任技術者を配置する必要があります。

いずれの場合も、専任技術者が不在になると許可要件を欠くため、代替要員の確保や資格取得支援を通じた体制整備が不可欠です。

建設業許可の取得条件③財産的基盤(財産要件)を有すること

工事を安定的に進めるには、十分な資金力や財務の健全性が欠かせません。

そのため建設業許可では「財産的基盤」の有無が審査されます。

資本金や自己資本の水準など具体的な基準が設けられていますが、まずは財産的基盤とは何かを確認しましょう。 

財産的基盤とは?

建設業許可を取得する際に求められる「財産的基盤」とは、会社や個人事業主が安定的に経営を継続できるだけの資金力や財務体質を指します。

建設業は高額な工事を請け負うことが多く、資金不足により途中で工事が中断すると、発注者や取引先に甚大な損害を与えかねません。

そのため、許可権者である国や都道府県は、経営の安定性を確認する目的で財務要件を課しています。

自己資本や資産状況、債務超過の有無などが審査対象となり、健全な経営を維持できるかどうかが許可の可否を左右します。

つまり財産的基盤とは、単なる資金の多寡ではなく、工事を責任もって遂行するための経済的な信頼性を示す基準です。

財産的基盤を有することの要件

建設業許可における「財産的基盤」とは、工事を安定的に遂行するための資金力や健全な財務体質を指します。

一般建設業では、「①自己資本(純資産額)が500万円以上、②500万円以上の資金調達能力がある、③直近5年間に許可を受けて継続して営業していた実績がある」内のいずれかを満たす必要があります。

一方、特定建設業では要件が厳格で、資本金2,000万円以上、自己資本4,000万円以上に加え、欠損の額が資本金の20%を超えていないこと、さらに流動比率が75%以上であることが条件です。

条件を満たさない場合には許可が下りないため、増資や資本注入、財務内容の改善により基盤を整備するのが大切です。

法人・個人での違い

法人と個人事業主では、財産的基盤(財産要件)の証明方法や評価のされ方に違いがあります。

法人個人での違い
  • 法人の場合
    申請直近の決算書や貸借対照表をもとに、純資産(自己資本)額や負債構成、欠損比率、流動比率などが審査されます。特に、特定建設業を申請する場合には、資本金・純資産水準の要件(資本金2,000万円以上、自己資本4,000万円以上など)や欠損比率・流動比率要件を満たすことが求められます。
  • 個人事業主の場合
    法人のような企業決算書はありませんが、確定申告書および附属の貸借対照表(または試算表)、事業主借・貸勘定の記録、預金残高証明書などを併用して、「自己資本」として計算可能な金額を導き出して審査します。500万円を目安とする金額規模がよく言われますが、単に預金残高だけでなく事業主勘定との関連や負債の影響も含めて判断されます。

両者に共通して言えるのは、債務超過状態あるいは負債過多の状態では審査に耐えられない可能性が高いといった点です。

そのため、申請直前に増資や資本注入、内部留保の見直しなどによって財務基盤を整えておくことが実務上重要です。

建設業許可の取得条件④誠実性があること

建設業は公共性の高い事業であるため、誠実に契約を履行できるかどうかも審査対象です。

虚偽申請や不正行為の可能性があれば許可は下りません。では、建設業法における「誠実性」とは具体的にどう定義されているのでしょうか。次から見ていきましょう。

「誠実性があること」とは?

   建設業許可において「誠実性」とは、請負契約の締結やその履行に際して不正や不誠実な行為をおこなうおそれがないことを意味します。

建設業法第7条第3号では、この点を満たさない場合には許可を与えないと定めており、単に社会的な道徳心といった抽象的な概念ではなく、法令や契約を遵守する確実な姿勢が求められています。

どのような場合に「誠実性なし」とされる?

 建設業許可における誠実性とは、請負契約の締結や履行において不正や不誠実な行為をおこなうおそれがないことを指します。

虚偽の書類を提出して許可を得ようとしたり、談合や不正入札に関与したり、下請代金を不当に支払わなかったりする行為は典型的に誠実性を欠くと判断されます。

また、手抜き工事や安全管理の不備によって事故を招いた場合や、経理処理において粉飾などの不正が認められた場合も、業務を誠実に遂行する姿勢が欠けているとみなされます。

許可権者は申請書類や登記事項証明書、過去の行政処分歴を精査し、申請者が信頼を損なうおそれのない事業者かどうかを確認します。  

過去の処分歴がある場合はどうすればいい?

過去に行政処分を受けたとしても、それによって建設業許可が永久に取れなくなるわけではありません。

違反の内容が軽微であれば、一定期間の経過後に再申請が認められる場合があります。

ただし、処分が重い場合には数年間は許可を受けられないこともあり、特に許可取消処分を受けたときは原則5年間は申請できません。

重要なのは、処分理由を正確に理解し、再発防止策を講じていることを示すことです。

法令遵守体制の整備や社内規定の見直し、外部専門家の関与などの改善を進めれば、誠実性を回復する姿勢として評価されます。

また、申請時には過去の処分歴を必ず正直に記載する必要であり、虚偽報告をすれば再び「誠実性なし」と判断されてしまうため、透明性をもった対応が欠かせません。

建設業許可の取得条件⑤欠格要件に該当しないこと

建設業許可では、社会的に不適格とされる人物や法人を排除するための規定が設けられています。これが「欠格要件」です。

申請者や役員が該当すると許可は得られません。

では、その欠格要件にはどのような内容があるのでしょうか。次から見ていきましょう。

欠格要件とは?

建設業許可の取得にあたっては、申請者やその役員などが欠格要件に該当しない必要があります。

欠格要件とは、法律違反や社会秩序を乱す行為をした者を排除し、建設業の健全性を守るための基準のこと。この規定は、公共性の高い建設業において不適切な事業者を排除し、発注者や下請業者の信頼を守る役割を果たしています。

主な欠格要件一覧

主な欠格要件に該当する方として、破産して復権を得ていない者、禁錮以上の刑を受けて執行終了から5年を経過していない者、暴力団など反社会的勢力と密接な関係を有する者、建設業許可を取り消されてから5年を経過していない者、虚偽の申請を行った者などが挙げられます。

これらは個人事業主だけでなく法人の役員や使用人にも適用され、組織の一部でも該当すれば許可が下りません。

過去に該当していた場合どうすればいい?

過去に欠格要件に該当していた場合でも、一定の期間が経過すれば再び許可申請が可能となることがあります。

たとえば、禁錮以上の刑を受けた場合は刑の執行終了から5年を経過すれば、破産した場合は復権を得れば申請の道が開かれます。

また、建設業許可を取り消された場合も、取消日から5年間を経過すれば再申請が可能です。

ただし、過去の処分歴を隠すことは絶対に避けるべきであり、虚偽報告をすれば再び欠格要件に該当して許可が取り消されるだけでなく、将来の申請も制限されます。

再申請を検討する際には、処分理由を正しく理解し、再発防止策や改善策を講じていることを示すことが重要です。

建設業許可の取得条件を証明するために必要な書類

これまで紹介した条件は、実際に証明できなければ許可は認められません。

そのため、経管や専任技術者、財務状況などを裏付ける書類の提出が求められます。

では、各条件を具体的に証明するための書類にはどのようなものがあるのでしょうか。次から見ていきましょう。

経営業務の管理責任者(経管)を証明する書類

経営業務の管理責任者を証明するには、過去に経営に携わっていたことを裏付ける書類を提出する必要があります。

単なる勤務実績では足りず、経営業務に実際に関与していた事実を示すことが求められます。

法人の場合は商業登記簿謄本で役員歴を確認し、会社の決算書や工事契約書・請負契約台帳などを併せて提出します。

個人事業主の場合は確定申告書や事業税の納税証明書などが有効です。在職証明書や議事録は補足的に用いられることもありますが、主要な証明資料には含まれません。

審査では経営経験年数を満たしているかが重視されるため、必要な期間をカバーできる書類を漏れなく収集しておくことが重要です。

専任技術者を証明する書類

専任技術者は、国家資格をもつか、または一定年数以上の実務経験を有することで認められます。

その証明には、施工管理技士や建築士などの資格証明書の写し、あるいは実務経験証明書とともに工事契約書や注文書などを添えて経験を裏付けることが必要です。

さらに、専任性を確認するために雇用契約書や給与台帳、社会保険加入記録、住民票などを提出し、営業所に常勤していることを示さなければなりません。

特に特定建設業では1級施工管理技士などの上位資格が求められるため、資格だけでなく勤務実態もあわせて証明するのが重要です。

財産的基盤(財産要件)を証明する書類

財産的基盤を証明するには、自己資本や資産状況を示す書類が必要です。

法人は直近の決算書や貸借対照表・損益計算書を提出し、個人事業主は確定申告書を用います。

新設法人や資金調達能力を示す場合には、預金残高証明書も有効です。

さらに、社会保険料や税金の納付証明を添えて健全な経営状況を示すことが望まれます。

これらの資料により、債務超過でないこと、自己資本が一定額以上あること、短期的な支払い能力があることを確認します。

一般建設業では自己資本500万円以上、特定建設業では資本金2,000万円以上かつ自己資本4,000万円以上などの基準があるため、申請前に財務内容を整理しておくことが重要です。

誠実性を証明する書類

誠実性は直接的に証明する書類が存在しないため、申請者が不正や不誠実な行為をしていないことを形式的に確認する資料が用いられます。

代表的なものは、不正行為がない旨を記載した申し立て書です。加えて、行政庁側が過去の行政処分歴や違反歴を独自に照会し、虚偽申請や契約違反などがないかを確認します。

つまり、誠実性の確認は主に申し立て書と行政側の調査で行われるものであり、虚偽の記載があればただちに「誠実性なし」と判断される可能性があります。

正直に開示する姿勢そのものが、審査を通過するうえで不可欠です。

欠格要件に該当しないことを証明する書類

欠格要件の確認では、役員や主要な使用人が法定の欠格事由に当たらないことを証明する書類を提出する必要があります。

具体的には、本籍地の市区町村が発行する身分証明書(破産して復権していないことや成年被後見人でないことの証明)、法務局発行の「登記されていないことの証明書」、役員全員分の住民票、さらに国税や地方税に未納がないことを示す納税証明書が挙げられます。

これらは法人の場合、役員全員について揃えなければならず、一人でも欠格要件に該当すれば許可は下りません。したがって、申請前に役員全員の状況を確認し、必要書類を確実に準備するのが重要です。

営業所の存在を証明する書類

営業所の存在を証明するには、単なる住所や名義ではなく、実際に建設業の経営をおこなう拠点であることを示さなければなりません。

そのため、賃貸借契約書や建物登記簿による所在地と使用権限の証明、営業所内部を撮影した写真、電話やインターネットの契約書などが必要です。

さらに、社員の勤務表や給与台帳、専任技術者の常勤性を示す書類などを用いて、日常的に契約や施工管理をおこなえる体制があることを示します。

形式的な「名義貸し」では許可は下りないため、実態の裏付けを準備するのが重要です。

建設業許可の取得条件が整わなかったときの対策

要件を満たせない場合でも、すぐに諦める必要はありません。

人材確保や財務改善、コンプライアンス体制の強化など、状況に応じた対策をとることで将来的に許可取得が可能です。

では、具体的にどのような対策が考えられるのでしょうか。 次から見ていきましょう。

経営業務の管理責任者(経管)がいない場合の対策

経営業務の管理責任者が不在の場合、許可を取得するには経営経験をもつ人材を確保する必要があります。

具体的には、新たに役員を迎え入れる、あるいは経験豊富な親族を経営に参画させるといった方法があります。

また令和2年の建設業法改正以降は、取締役などの経営者でなくても、支店長や工事部長として経営業務を補佐した経験があれば要件を満たせる場合があります。

なお、現在では「会社として経営業務を適切におこなえる体制が整っていること」を示すことも求められており、必ずしも一人の経管に依存するしくみではなくなっています。

いずれの場合も形式だけでは認められず、実際に経営に関与していることが必要です。早めに候補者を確保し、登記や職務内容を整備するのが許可取得の近道です。

専任技術者が確保できない場合の対策

専任技術者が確保できない場合の主な対策は、資格取得の支援と人材の確保です。

社内の従業員が施工管理技士や建築士などの国家資格を取得できるように講習や受験を支援するのもよいですが、資格取得には時間がかかるため、短期的には資格保有者を中途採用する方法も取られています。

また、資格がなくても、工事に関する一定年数の実務経験を裏付ける書類を整えることで認定される場合があります。

専任技術者は営業所ごとに配置が必要であり、特定建設業では1級資格が必須となるため注意が必要です。

退職や異動で要件を失うリスクもあるため、複数人を候補として育成し、継続的に体制を維持できるよう備えることが重要です。

財産的基盤が不足している場合の対策

財産的基盤が不足している場合には、資本増強や財務改善に取り組むことが不可欠です。

法人の場合は増資によって資本金や自己資本を増やすことが有効であり、役員や親族からの出資を受ける方法もあります。

金融機関からの借入は自己資本には算入されませんが、資金調達能力の証明として利用できるため、返済計画を立てて健全な財務内容を維持するのが大切です。

個人事業主の場合は、銀行の残高証明書や定期預金を提示して資金力を示すことが可能です。

一般建設業では自己資本500万円以上または同額の資金調達能力、特定建設業では資本金2,000万円以上かつ自己資本4,000万円以上などの要件を満たさなければなりません。

財産要件は許可取得の大きな壁ですが、決算内容の改善や余剰資金の積み増しを続けることでクリアでき、安定した財務体質を築くことが事業継続にも直結します。

誠実性・欠格要件に該当してしまった場合の対策

誠実性を欠く行為や欠格要件に該当した場合、ただちに建設業許可の取得はできません。

ただし、一定期間が経過すれば再申請が可能となる場合があります。

たとえば、禁錮以上の刑を受けた場合は刑の執行終了から5年を経過すれば、破産した場合は復権後に申請できます。

許可取消処分を受けた場合も、取消日から5年間は再申請できません。

重要なのは、再発防止策を講じて誠実な体制を整えたことを示すことです。社内コンプライアンスの強化や外部顧問の導入、再発防止マニュアルの策定といった取り組みが必要でしょう。

また、申請時には過去の違反歴を正直に開示する必要があり、虚偽の報告は再び不許可につながります。透明性をもって改善に取り組む姿勢を示すことで、将来的な許可取得の可能性が開けます。

専門家に早期相談するのが効果的

建設業許可の要件を満たせない場合、自社だけで解決しようとすると時間とコストがかかりがちです。

そのため、行政書士や中小企業診断士などの専門家に早期相談するのがおすすめです。

専門家は最新の法令や実務に精通しており、どの要件をどのように補うか、許可取得までの具体的なロードマップを提示してくれます。

また、必要な証明書類の整備や、財務改善、資格取得計画なども的確にアドバイスしてもらえます。

さらに、許可取得後の維持管理や更新手続きまでサポートを受けられることが多く、長期的に安心して事業を継続できます。早期に相談すれば、余裕をもって対策を進められ、許可取得の可能性を大きく高めることができます。

建設業許可の取得条件を満たしていても許可されないケースは?

条件を揃えていても、申請手続きや実態に問題があれば許可は下りません。

書類の不備や虚偽、営業所の実態不足などが典型例です。こうした不許可リスクを避けるために、どのようなケースが想定されるのかを確認していきましょう。

書類に虚偽記載・不備・不整合がある

建設業許可の申請では、経営事項審査や財務状況、役員情報など多くの書類を提出します。

ここに虚偽の記載があったり、添付資料が不足していたり、数値や日付に不整合があると、たとえ実質的に要件を満たしていても許可は下りません。

行政は「誠実性」を重視しているため、虚偽申請は重大な不正行為とみなされ、再申請にも大きな支障が出ます。

軽微なミスでも審査が長引いたり、補正指示が繰り返されて不許可となる可能性があります。

したがって、申請前に書類を入念に確認し、専門家のチェックを受けることが確実な許可取得につながります。   

「名義貸し」など建設業法違反の疑いがある

建設業界で禁止されている代表的な行為が「名義貸し」です。

これは実際には工事を行わない業者が、許可だけを他者に貸し出す行為で、発注者や下請に深刻な不利益をもたらします。

申請段階で、実態とかけ離れた契約書や登記情報が確認された場合、名義貸しの疑いがあるとして不許可となってしまいます。

また、過去に同様の行為を行っていた事実が判明すれば、許可取消や今後の申請制限にもつながります。建設業法違反は社会的信用を大きく損なうため、行政も厳格に監視しており、名義貸しが疑われる体制では許可を受けることはできません。

営業所の実態がない

建設業許可を申請する際には、営業所ごとに経管や専任技術者を配置する必要があります。

形式的に住所だけを登記し、実際には人が常駐していない場合や、電話・机・設備がないなど実態が伴わない場合は不許可となってしまいます。

行政は立入調査や写真提出を通じて営業所の実態を確認するため、形式的な「ペーパーカンパニー」では申請がとおりません。

営業所は契約や施工管理をおこなう実務拠点であることが必須であり、単なる住所利用では認められません。したがって、申請に先立って常勤体制や業務環境を整えることが必要です。

反社会的勢力との関与が疑われる場合

建設業は公共工事や地域インフラに直結するため、反社会的勢力との関与が疑われる事業者は一切排除されます。

経営者や役員、主要な従業員が暴力団関係者である場合はもちろん、取引関係や資金の流れから関与が疑われる場合も不許可となってしまいます。

許可権者は警察や関係機関と連携し、反社会的勢力との関わりがないか徹底的に調査を行っています。

仮に直接の関与がなくても、過去の交際歴や不透明な資金取引が確認されれば疑義が生じ、許可が見送られる可能性があります。

健全な事業運営を続けるためには、取引先の選定やコンプライアンス体制の徹底が不可欠です。   

納税義務を履行していない

建設業許可の審査では、税務面の状況も重要なチェックポイントです。

法人税や消費税、社会保険料などの納付を怠っていると、法令遵守意識に欠けると判断され、不許可となる可能性があります。

特に未納状態が長期間続いている場合や、差押えを受けている場合は重大な問題とみなされます。

申請時には納税証明書の提出が求められ、滞納の有無が確認されます。

たとえ資金繰りの一時的な事情であっても、納税義務を果たしていないと「誠実性なし」と判断されるため、必ず整理してから申請に臨むことが重要です。   

審査中の応対・説明に不備や矛盾がある

建設業許可の審査は、提出書類だけでなく申請者の説明や応対も重視されます。

面談や補正指示に対して説明が曖昧だったり、過去の申請内容と食い違う発言をした場合、誠実性が疑われ、不許可につながることがあります。

たとえば、経営業務の管理責任者や専任技術者の職務内容について具体的に説明できない場合や、財産状況に関する説明が不自然な場合です。

行政は不正防止の観点から厳しくチェックしており、申請者の態度も評価対象です。正確で一貫した説明を行い、疑問点には資料をもって回答できる体制を整えることが重要です。

まとめ

建設業許可の取得には、経営業務の管理責任者や専任技術者の配置、財産的基盤の確保、誠実性の保持、欠格要件に該当しないことなど、複数の条件を満たす必要があります。

さらに、営業所の実態や必要書類の整備も不可欠であり、ひとつでも欠ければ許可は下りません。

条件を満たせない場合でも、増資や資格取得、人材確保、体制整備などの対策を講じることで将来的に許可取得の可能性は広がります。

専門家に早期相談すれば効率的かつ確実に要件を満たせるため、長期的に信頼される体制をつくれるでしょう。

編集者

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次