解体工事は500万円未満でも登録が必要!建設業許可との違いと登録方法

解体工事を請け負う際、500万円未満なら建設業許可はいらないと考えていませんか。実は、解体工事には請負金額にかかわらず「解体工事業登録」が必要です。一方、500万円以上の工事には「建設業許可」が求められます。
二つの制度は似ているようで、内容も取得要件も異なるものです。本記事では、電気工事や土木工事にも通じる建設業許可制度との違いや、解体工事業登録の取得方法、無登録で工事を行った場合の罰則まで詳しく解説します。
最後まで読むことで、自社に必要なのは建設業許可か解体工事業登録かが判断できるでしょう。
解体工事は500万円未満でも登録が必要
解体工事とは、住宅やビルなどの建築物、またはそれ以外の工作物(ダム、トンネルなど)を取り壊す工事を指します。請負金額が500万円以上の解体工事を請け負う場合、解体工事業の建設業許可が必要です。
500万円未満の工事だけを請け負う場合は、建設業許可は不要ですが、解体工事業登録が必要な点に注意が必要です。ここでは、建設業許可と解体工事業登録がどのような場合に必要か整理しましょう。
500万円以上の工事では建設業許可が必要
建設業でよく耳にする「500万円の壁」とは、建設業許可が必要な工事と、許可が不要な「軽微な工事」を分ける基準となる工事の請負金額のことです。500万円は税込価格で、材料費や人件費など工事全体にかかる費用が含まれます。
解体工事で500万円以上となる可能性が高いのは、延床面積が100坪を超えるような大規模な住宅や鉄筋コンクリート造(RC造)の建物、ビルの解体です。一方、一般的な木造住宅や軽量鉄骨造の住宅の解体は500万円未満に収まるケースが多いでしょう。
実際には、解体作業の難易度、現場周辺の道路状況などによって価格が変動します。付随する廃棄物運搬や処理費用も含めて計算すべき場合もあるため、正確な計算と契約内容の精査が重要です。
500万円未満の工事でも解体工事業登録は必須
解体工事業を営む場合、工事の規模にかかわらず解体工事業登録が必須です。これは、産業廃棄物の適正処理や資源の有効活用、そして解体工事の品質・安全性を確保するために法律で定められています。
登録にあたっては、技術管理者の資格や実務経験が求められ、登録有効期間は5年間です。無登録での施工は罰則対象となり、業務停止や罰金のリスクがあります。規模の大小にかかわらず、法令遵守を前提とした事業運営が求められる点を軽視してはいけません。
解体工事業登録と建設業許可の違い
解体工事業登録と建設業許可は、いずれも解体工事をおこなう事業者が適正に業務を遂行できるように設けられた制度です。ただし、両者は根拠法令や対象となる工事の規模、取得に必要な要件が異なります。自社の工事規模や将来の事業展開を踏まえて、どちらを取得すべきか判断することが重要です。
項目 | 解体工事業登録 | 建設業許可(解体工事業) |
根拠法令 | 建設リサイクル法 | 建設業法 |
目的 | 廃棄物の適正処理やリサイクル促進、小規模解体工事業者を含めた施工体制の整備と適正化 | 大規模工事を受注する業者の施工能力・財務基盤の担保 |
請負可能金額 | 500万円未満 | 500万円以上 |
主な要件 | 技術管理者の選任 | 経営業務管理責任者等・営業所技術者・財産的基礎・社会保険加入など |
難易度 | 比較的容易 | 要件が多く審査も厳格 |
主な違いについて、以下で詳しく解説します。
根拠となる法律と目的
解体工事業登録は建設リサイクル法に基づいており、廃棄物の適正処理やリサイクル促進を目的としています。
一方、建設業許可は建設業法に基づき、施工能力や財務基盤をもつ業者に対してのみ大規模な工事を請け負う許可を与える制度です。
請負可能な工事金額
両制度の大きな違いは、請け負える工事金額の範囲です。解体工事業の建設業許可を取得すると、500万円以上の解体工事を請け負えるようになります。
一方、解体工事業登録に請負金額の上限を引き上げる効力はありません。解体工事業登録をしているが、解体工事業の建設業許可を取得していない事業者が請け負えるのは、500万円未満の工事のみです。
取得の難易度と要件
解体工事業登録は、技術管理者の資格や実務経験を備えていれば比較的容易に取得可能です。必要書類も限定的で、審査も建設業許可に比べて簡便です。
一方、建設業許可は経営業務管理責任者等の設置、営業所技術者の配置、500万円以上の資産など財産的基礎など複数の要件があるため、取得の難易度が高くなります。

解体工事業登録の手続き
解体工事業登録は、500万円未満の解体工事を請け負うために必要となる制度であり、事業者として適正に業務をおこなうための前提条件です。
技術管理者の資格や実務経験の証明に不備があると登録が認められないこともあります。ここでは申請手続きの流れや必要な書類、要件を具体的に解説します。
申請先は解体工事業を営む都道府県
解体工事業登録は、工事を施工する都道府県ごとに申請が必要です。建設業許可は、工事を施工する場所ではなく営業所がある場所が基準となることと混同しないように注意しましょう。
申請窓口は建設業課や土木事務所など各都道府県により異なります。最新の申請方法や必要書類は各自治体のWebサイトで確認し、不明点は電話で問い合わせるのが確実です。
申請に必要な書類
解体工事業登録申請の主な必要書類は以下のとおりです。
- 解体工事業登録申請書
- 欠格要件に該当しないことの誓約書
- 技術管理者の証明書類(資格証、実務経験証明書、卒業証明書など)
- 登録申請者の調書
- 登記事項証明書(法人の場合)、住民票の写し(個人事業の場合)
- 役員等の住民票の写し(法人の場合)
- 技術管理者の住民票の写し
書類は原本と副本の2部を提出するケースが多く、不備があると受理されません。特に実務経験の証明は契約書や請求書、現場写真など複数の資料が必要になるため、早めに準備しましょう。
不備なく申請が受理された場合、登録完了までの目安は1ヵ月前後です。
申請費用
解体工事業登録は、申請時に手数料がかかります。金額は都道府県ごとに異なりますが、一般的には登録申請で約3万〜5万円です。
納付方法は収入証紙の貼付や現金納付など地域によって異なり、オンライン申請を導入している自治体では電子納付が可能な場合もあります。必ず事前に要綱を確認し、納付の準備をして申請しましょう。
要件1:欠格要件に該当しないこと
申請者が下記の欠格要件(建築リサイクル法第24条第1項)に該当しないことが登録の前提です。
- 解体工事業の登録を取り消された日から2年を経過していない者
- 登録を取り消された法人において、その処分日の前30日以内に役員であり、かつその処分日から2年を経過していない者
- 解体工事業の業務停止を命ぜられ、その停止期間が経過していない者
- 建設リサイクル法に違反して罰金以上の刑に処せられ、その執行後2年を経過していない者
- 暴力団員、または暴力団員でなくなった日から5年を経過していない者
- 未成年者が登録しようとする場合、その法定代理人が上記のいずれかに該当する者
- 法人でその役員の中に上記いずれかに該当する者がいる場合
- 技術管理者を選任していない者
- 暴力団員等が事業活動を支配している者
法人の場合は代表者や役員全員が要件を満たしている必要がある点に注意が必要です。欠格要件に1つでも該当すると登録申請は受理されず、虚偽申請が発覚すれば刑事罰や営業停止のリスクもあります。申請前に役員の経歴や法令遵守状況を確認し、リスクがある場合は専門家へ相談することが望ましいです。
要件2:技術管理者を設置すること
解体工事業登録には、解体工事を適正に管理できる技術管理者の配置が義務付けられています。技術管理者の要件は学歴と実務経験の組み合わせ、実務経験のみ、資格の3種類あり、詳細は以下のとおりです。
- 学歴+実務経験
- 大学または高専の土木工学科等を卒業+2年以上の解体工事業の実務経験
- 高校または中等教育学校の土木工学科等+4年以上の解体工事業の実務経験
- 実務経験のみ
- 8年以上の解体工事業の実務経験
- 資格
- 1級・2級建設機械施工技士(2級は種別「第1種」または「第2種」)
- 1級・2級土木施工管理技士(2級は種別「土木」)
- 1級・2級建築施工管理技士(2級は種別「建築」または「躯体」)
- 1級・2級建築士
- 1級のとび・土工の技能検定に合格した者
- 2級のとびあるいはとび工の技能検定に合格したあと、解体工事に関し1年以上の実務経験を有する者
- 技術士(2次試験のうち建設部門に合格した者に限る)
- 解体工事施工技士試験に合格した者
全国解体工事業団体連合会などが実施する「解体工事施工技術講習」を受講した者は、実務要件が1年短縮されます。たとえば、大学の土木工学科を卒業した方が講習を受講した場合、1年の実務経験で要件を満たします。実務経験については、工事契約書や請求書、施工写真などで経験を立証しなければなりません。
技術管理者は常勤でなければならず、他社との兼務は認められません。技術管理者がいなければ登録そのものが不可能となるため、資格取得の計画や経験証明の整理を早期に進める必要があります。
有効期間は5年間
解体工事業登録の有効期限は5年間で、更新手続きが必要です。有効期限を過ぎると自動的に登録は失効し、期限後に請け負った工事は無登録施工のため違法です。違反が発覚すれば行政処分の対象となり、罰金や業務停止に加え、発注者から損害賠償請求を受ける可能性もあります。
更新申請は満了日の30日前までにおこなう必要がありますが、書類不備があると期限に間に合わず空白期間が生じるおそれがあるため、数ヵ月前から準備を始めましょう。更新の際も、新規申請と同程度の手数料がかかります。
無登録・無許可で工事を請け負うとどうなる?
解体工事業登録や建設業許可を取得せずに工事を請け負うことは、建設業法および建設リサイクル法により明確に禁止されています。法令を守ることは、法令遵守だけでなく企業の信頼性を確保するための最低条件です。ここでは、無登録・無許可で工事を請け負った場合の罰則や事業への影響を解説します。
無許可で500万円以上の工事を請け負った場合の罰則
建設業法では、請負代金が500万円(建築一式工事では1,500万円)以上の工事を無許可で請け負った場合、3年以下の懲役または300万円以下の罰金、あるいはその両方が科される可能性があります。また、法人が違反した場合は代表者個人だけでなく法人自体にも罰金刑が科される「両罰規定」が適用されます。
罰則とは別に、行政処分として営業停止命令や指示処分を受け、公表されることで業界内での信用を大きく失います。請負契約を締結した時点で違法となるため、契約内容をよく確認しましょう。

無登録で解体工事を請け負った場合の罰則
解体工事業登録をせずに解体工事を請け負った場合、建設リサイクル法に基づき1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられます。法人の場合は前述と同じく両罰規定が適用され、法人と代表者双方が処罰対象です。
登録を怠ったまま施工を続けると、工事停止命令や営業停止命令が出されることもあります。さらに、工事中に事故や建設副産物処理に関する違反が発覚すると、環境関係法令違反として追加の処罰を受けるリスクもあります。無登録状態での施工は「軽微な違反」とは見なされず、経営全体に致命的な打撃を与える可能性が高い行為です。
罰則が事業に与える深刻な影響
行政処分が公表されると、自治体の入札資格は停止され、民間の元請け業者からも取引を停止されるケースが多いでしょう。違反が発覚してから許可や登録をしようとしても、過去に違反歴があると欠格事由に該当し、新規の許可・登録申請が難しくなってしまうのが実際のところです。法令違反により事業の継続自体が困難になるリスクがあるため、必ず許可・登録を適切に取得し、コンプライアンスを徹底しましょう。
よくある質問(Q&A)
解体工事業登録に関するよくある質問に専門家の視点から回答します。
自社の登録状況を確認する方法は?
A. 各都道府県の建設業許可・解体工事業登録に関する公式Webサイトでは、登録事業者の一覧や検索ページが公開されています。会社名や登録番号で検索できるため、自社の登録状況を簡単に確認できます。最新の登録情報は定期的に更新されるため、年に数回は確認しておくと安心です。
技術管理者は複数の現場を兼任できる?
A. はい、できます。 解体工事業登録における技術管理者は、その営業所に常勤し、専ら技術上の管理をおこなう必要があります。そのため、他社の技術管理者と兼任はできません。一方、同じ営業所が管轄する同一の都道府県内の複数の現場であれば、技術管理者が管理できる範囲内で兼任が可能です。
解体工事と産業廃棄物処理の関係は?
A. 解体工事をおこなう事業者は、工事で発生した産業廃棄物の分別・運搬・処分についても責任を負います。 解体工事業登録は「建設リサイクル法」に基づき、適正な分別解体を義務付けるものですが、廃棄物を自社で運搬する場合は別途「産業廃棄物収集運搬業の許可」が必要となります。これは解体工事業登録や建設業許可とは別の制度であるため、どちらもないと法令違反となる可能性があります。
自分で手続きする場合の注意点は?
A. 特に注意が必要なのは、技術管理者の実務経験証明書の作成です。経験年数や担当工事内容を証明するため、工事請負契約書、請求書、現場写真などの証拠書類をそろえる必要があります。不備があると申請が受理されず、再提出で時間がかかります。また、各書類は発行元や日付の整合性もチェックされるため、事前確認を徹底しましょう。
まとめ
解体工事は請負金額が500万円以上の場合は建設業許可が必要ですが、500万円未満でも解体工事業登録が必須です。無登録・無許可での施工は罰則や行政処分の対象となるだけでなく、事業継続に深刻な影響を及ぼします。
適正に事業を営むためには、自社に必要な許可や登録を把握することが先決です。要件を満たすかわからない場合や、必要な書類がそろわない場合など、自社での対応が難しい場合は早めに行政書士に相談するのがおすすめです。
当事務所(行政書士佐藤秀樹事務所)では、解体工事業登録や建設業許可についてのご相談を受け付けています。小さなことでもお気軽にご相談ください。法令遵守し、安定した事業運営を目指しましょう。